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···❆冒険者編❆···
薬草採取
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正門に向かうと、そこに見覚えのある人が見えた。というか、昨日会って話したばかりの人。
「ヤヨイさーん、セルンさーん!!」
向こうも気づいたらしく、こっちに向かって手を振ってくる。私も手を振り返して、彼のところに近づいて行った。
「デルディルさん、こんにちは」
「ヤヨイさん、こんにちは。昨日ぶりですね。次に会うのはもう少し先になるかと思ったんですが……」
そういえば、昨日身分証明書作ったら見せるように言われてたっけ……。
「デルディルさん。これ、冒険者カードです」
「冒険者ギルドに入られたんですね。……確認しました」
「あの……そういえば、紫と碧の分の身分証明書ってどうすれば……」
「子供は7歳までは、身分証明書がなくても大丈夫ですよ」
「7歳?何故7歳なんだ?」
「ギルドに登録できるようになるのが7歳からなんです。普通に市民証などの身分証明書の場合も、同じく7歳からの登録となるので」
そうなんだ……。じゃあ、しばらくは大丈夫そう。
「門を通ってもいいだろうか。森で薬草採取をしたいんだが……」
「そうでしたか。では、ちょうど冒険者カードも見せてもらいましたし、通っても大丈夫ですよ。夕方の6時には門が閉まるので、それまでに帰ってきて下さい。帰ってきた時も同じように冒険者カードを見せてくれれば通ることができます」
私達はデルディルさんにお礼を言って、森へと入っていった。しばらく森の中を進んで、私はふと気になってセルを見た。
「ねえ、セル。受けた依頼の薬草って何に使われるのか知ってる?」
依頼は“テントーア”と“ナイフィメ”という薬草の採取だ。
「“テントーア”は、湿布に使われる薬草だ。“ナイフィメ”は、切り傷に使われる塗り薬の材料だ。どちらも打ち身や打撲、切り傷の多い騎士団や冒険者に重宝されている」
「だから常時依頼なのね」
「“テントーア”は根本が紫色をしていて葉先が2つに分かれた、水辺に見られる薬草だ。“ナイフィメ”は葉が黄色で小さな白い花が咲いている。“メラニス”という楓のような葉をした大きな木の根に生えている」
「ねぇねぇ、その“メラニス”ってあれ?」
私はたまたま視界に入った木を指した。その木は、紅い大きな楓のような葉をしていた。と言っても、葉は普通の楓の5倍くらいの大きさをしてるけど。
「ああ。よく見つけたな。ほら、これがナイフィメだ」
セルはそう言って、メラニスの根の間から白い小さな花の植物を取った。
「ここから少し行った先に川がある。そこにテントーアはあるはずだ。ナイフィメを取ったら、そっちに向かおう」
しばらくの間、薬草を採取する私たち。紫と碧は、ご機嫌なのかずっとニコニコと笑っている。可愛い。マジで天使。
黙々と黙って作業を続けていると、気づいたときには夕方になっていた。
「セル!!」
「……ん?どうした、弥生」
「もうそろそろ帰らないと、門が閉まっちゃう」
「もうそんな時間か。なら、これで終わりにして帰るとしよう」
門番に冒険者カードを見せて、街に入ると私達はそのまま冒険者ギルドに向かった。
「依頼が完了したんだが」
「あ、セルンさんヤヨイさん!!もう終わったんですね!!」
ミレディアさんが、私達に気づいて言った。
「それでは、薬草の確認をしますので、こちらにどうぞ」
そう言って、受付から出てきて奥の部屋へと向かった。ミレディアさんは、3つあるうちの真ん中の部屋の扉を開けて、木の札を扉の裏から取って表にかけた。
付いて中に入ると、真ん中にローテーブルがあり、左に一人がけのソファーが2つ、右に二人がけのソファーが1つ、誕生席に当たるところに一人がけのソファーが1つ置いてあった。左奥には作り付けの棚がついており、上の棚には薬草や魔物についてなどの本や資料がおいてあるのが見えた。
「少しお待ちください」
ミレディアさんは、私たちが部屋に入るとそう言って部屋を出た。二人がけのソファーに座って待っていると、少ししてミレディアさんが帰ってきた。
「お待たせ致しました。こちらの上に薬草を置いてください」
一人がけのソファーに座って机の上に置いたのは、木でできたトレイだった。私たちはバックからポイポイとトレイに出す。
「結構多いですね……。では、確認しますね」
ミレディアさんはひとつひとつ手に取って確認していく。
「……ん?あれ……?え……?」
ミレディアさんの手が止まり、何か言い始めた。どうしたのかな?
「しょ、少々お待ちください!!」
そう言うと、バタバタと部屋を出て行った。……本当にどうしたんだろうか。
「ヤヨイさーん、セルンさーん!!」
向こうも気づいたらしく、こっちに向かって手を振ってくる。私も手を振り返して、彼のところに近づいて行った。
「デルディルさん、こんにちは」
「ヤヨイさん、こんにちは。昨日ぶりですね。次に会うのはもう少し先になるかと思ったんですが……」
そういえば、昨日身分証明書作ったら見せるように言われてたっけ……。
「デルディルさん。これ、冒険者カードです」
「冒険者ギルドに入られたんですね。……確認しました」
「あの……そういえば、紫と碧の分の身分証明書ってどうすれば……」
「子供は7歳までは、身分証明書がなくても大丈夫ですよ」
「7歳?何故7歳なんだ?」
「ギルドに登録できるようになるのが7歳からなんです。普通に市民証などの身分証明書の場合も、同じく7歳からの登録となるので」
そうなんだ……。じゃあ、しばらくは大丈夫そう。
「門を通ってもいいだろうか。森で薬草採取をしたいんだが……」
「そうでしたか。では、ちょうど冒険者カードも見せてもらいましたし、通っても大丈夫ですよ。夕方の6時には門が閉まるので、それまでに帰ってきて下さい。帰ってきた時も同じように冒険者カードを見せてくれれば通ることができます」
私達はデルディルさんにお礼を言って、森へと入っていった。しばらく森の中を進んで、私はふと気になってセルを見た。
「ねえ、セル。受けた依頼の薬草って何に使われるのか知ってる?」
依頼は“テントーア”と“ナイフィメ”という薬草の採取だ。
「“テントーア”は、湿布に使われる薬草だ。“ナイフィメ”は、切り傷に使われる塗り薬の材料だ。どちらも打ち身や打撲、切り傷の多い騎士団や冒険者に重宝されている」
「だから常時依頼なのね」
「“テントーア”は根本が紫色をしていて葉先が2つに分かれた、水辺に見られる薬草だ。“ナイフィメ”は葉が黄色で小さな白い花が咲いている。“メラニス”という楓のような葉をした大きな木の根に生えている」
「ねぇねぇ、その“メラニス”ってあれ?」
私はたまたま視界に入った木を指した。その木は、紅い大きな楓のような葉をしていた。と言っても、葉は普通の楓の5倍くらいの大きさをしてるけど。
「ああ。よく見つけたな。ほら、これがナイフィメだ」
セルはそう言って、メラニスの根の間から白い小さな花の植物を取った。
「ここから少し行った先に川がある。そこにテントーアはあるはずだ。ナイフィメを取ったら、そっちに向かおう」
しばらくの間、薬草を採取する私たち。紫と碧は、ご機嫌なのかずっとニコニコと笑っている。可愛い。マジで天使。
黙々と黙って作業を続けていると、気づいたときには夕方になっていた。
「セル!!」
「……ん?どうした、弥生」
「もうそろそろ帰らないと、門が閉まっちゃう」
「もうそんな時間か。なら、これで終わりにして帰るとしよう」
門番に冒険者カードを見せて、街に入ると私達はそのまま冒険者ギルドに向かった。
「依頼が完了したんだが」
「あ、セルンさんヤヨイさん!!もう終わったんですね!!」
ミレディアさんが、私達に気づいて言った。
「それでは、薬草の確認をしますので、こちらにどうぞ」
そう言って、受付から出てきて奥の部屋へと向かった。ミレディアさんは、3つあるうちの真ん中の部屋の扉を開けて、木の札を扉の裏から取って表にかけた。
付いて中に入ると、真ん中にローテーブルがあり、左に一人がけのソファーが2つ、右に二人がけのソファーが1つ、誕生席に当たるところに一人がけのソファーが1つ置いてあった。左奥には作り付けの棚がついており、上の棚には薬草や魔物についてなどの本や資料がおいてあるのが見えた。
「少しお待ちください」
ミレディアさんは、私たちが部屋に入るとそう言って部屋を出た。二人がけのソファーに座って待っていると、少ししてミレディアさんが帰ってきた。
「お待たせ致しました。こちらの上に薬草を置いてください」
一人がけのソファーに座って机の上に置いたのは、木でできたトレイだった。私たちはバックからポイポイとトレイに出す。
「結構多いですね……。では、確認しますね」
ミレディアさんはひとつひとつ手に取って確認していく。
「……ん?あれ……?え……?」
ミレディアさんの手が止まり、何か言い始めた。どうしたのかな?
「しょ、少々お待ちください!!」
そう言うと、バタバタと部屋を出て行った。……本当にどうしたんだろうか。
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