皇女様の女騎士に志願したところ彼女を想って死ぬはずだった公爵子息に溺愛されました

ねむりまき

文字の大きさ
上 下
98 / 169
第3部 君は僕を捨てないよね

96.アルフリードの回想 後編

しおりを挟む
 ――結婚から約一年後。


 理仁と結婚しても日常生活に特に変わりのない真彩はいつも通り家事に勤しんでいた。

 悠真は小学校へと通い出してから周りの友達の影響もあって朔太郎や真彩にベッタリという事も減りつつあり、最近では強くなりたいと言って空手を習い始めていたりする。

「姉さん、そろそろ買い物行きますか?」
「あ、うん、そうだね。今日は悠真の習い事の日だし、帰ったらすぐおやつを食べられるように準備しなきゃだから今のうちに行こうか」

 今日は買い出しに行く日とあって、悠真が帰宅する時間までに済ませてしまおうと買い出しの付き添い担当でもある朔太郎が真彩に声を掛けていざ出掛けようというその時、

「うっ……」
「姉さん?」
「ご、ごめん、ちょっと気分が……」

 急な吐き気に襲われた真彩は心配する朔太郎の横を通り過ぎると急いでトイレに駆け込んだ。

 実は数日前から度々吐き気に襲われていた真彩。

 初めは季節の変わり目で体調を崩したのかもと思ったりしていたものの、熱や風邪の症状がない事、ふと思えば月のものが暫く来ていない事に気付く。

「……これって、やっぱり……」

 悠真を身篭った時にも同じような事があり、恐らく妊娠しているのではと直感した。

「……とりあえず、調べてみないとね」

 悠真の時は初めての事で戸惑いや不安しか無かったものの、二度目ともなると慌てたりはしない。

 トイレから出て部屋に戻った真彩は心配する朔太郎に笑顔を向け、

「ごめんね、もう大丈夫だから行こうか」
「姉さん、具合が悪いなら俺一人で行きますから、姉さんは休んでてください」

 そう声を掛けるけれど、具合が悪いなら一人で行くと朔太郎が言う。

「ううん、本当に大丈夫。私も買いたいものがあるから一緒に行かせて?」
「……姉さんが、そこまで言うなら……」

 本来ならばお願いしたいし有難い申し出ではあるものの、流石に検査薬を買って来てと頼めるはずもない真彩。

「けど、絶対無理しないでくださいよ?」
「うん、約束するね。ありがとう」

 何とか朔太郎を説得して一緒に出掛けることになった真彩は、朔太郎の運転する車でいつものスーパーへと向かう事になった。

 その夜、

「……やっぱり」

 悠真を寝かせて落ち着いた真彩は昼間買ってきた検査薬を使ってみると、思っていた通りの結果になったのだ。

「……でも理仁さんには、きちんと病院で確かめて貰ってから伝えよう」

 実は今、理仁は仕事で毎日帰りが遅く、朝も早い。

 何でも傘下組織で問題が発生したり経営の方でも様々な問題を抱えているらしく、常に忙しそうにしていてゆっくり話す時間が取れていない状況の中、万が一間違いだったりして迷惑を掛けたくないという思いから今はまだ話せないと考える真彩。

「とりあえず早めに病院に行って、検査してもらおう……」

 そう決めた真彩は今日も遅い理仁の帰りを待ちながらソファーで眠ってしまうのだった。

 翌日、真彩が目を覚ますといつの間にかベッドで眠っていたのだけれど、理仁の姿は無い。

「やだ、理仁さんが帰って来たの気づかなかった」

 帰宅に気づけなかったどころか、ソファーで眠ってしまった自分をベッドまで運ばせてしまった事にも申し訳なく思う真彩。

 急いでリビングへと向かうもやはり理仁の姿は無く、代わりに翔太郎が真彩を待っていた。

「おはようございます、真彩さん」
「おはよう翔太郎くん。理仁さんは……」
「兄貴はもう出ました。何でも今日は九州まで行く用事があるとか。帰りは明後日になるそうです」
「そう……なんだ」

 忙しい彼を労う事すら出来ていない真彩は自分の不甲斐なさに気落ちする。

 それに気付いた翔太郎が何かを言いかけた、その時、

「姉さん!」

 いつになく慌てた表情の朔太郎が、

「悠真、熱があるみたいで、姉さんを呼んでるッス」

 一緒の部屋で寝ていた悠真の体調が悪くて呼んでいると真彩に伝えに来た。
しおりを挟む
【Twitterで作品イメージの投稿始めました】
#皇女様の女騎士イメージ

↑クリックでイメージ投稿のみ表示されます
感想 15

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。  しかも、定番の悪役令嬢。 いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。  ですから婚約者の王子様。 私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

愛を疑ってはいませんわ、でも・・・

かぜかおる
恋愛
王宮の中庭で見かけたのは、愛しい婚約者と私じゃない女との逢瀬 さらに婚約者は私の悪口を言っていた。 魅了で惑わされた婚約者への愛は消えないけれど、 惑わされる前と変わらないなんて無理なのです・・・。 ****** 2021/02/14  章の名前『後日談』→『アザーズ Side』に変更しました 読んで下さりありがとうございます。 2020/5/18 ランキング HOT 1位 恋愛 3位に入らせていただきました。 O(-人-)O アリガタヤ・・ コメントも感謝です。 とりあえず本編の方の更新を優先させていただきますので、申し訳ありませんがコメントの返答遅くなります。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

処理中です...