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第2部 彼を救うための仕込み
55.リベンジ パフューム
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花びらの入った木箱は、暗く死んだような目をしたヘイゼル邸の男性使用人さん3名ほどが運ぶのをお手伝いしてくれて、まず本館の厨房にお邪魔した。
ここは主人である公爵様とアルフリードの食事を作るところで、何日も煮込むような手の込んだ料理も作られたりするため、いつもシェフさん達は忙しそうにしている。
昨年、私とアルフリードの婚約披露会で振る舞われた彼らの料理は、アルフリードの乳母様が絶賛していた通りこの世界に来てから口にしたものの中でも格別の美味しさを放っていた。
香水作りで必要な花びらを煮出すのに必要な火がくべってある釜戸は、シェフさん達によって完全に占領されているのだが、そんな事は構わずに広々とした厨房を奥へ奥へと進んでいく。
食器なんかが沢山入っている大きな棚のところにくると、その裏に狭っこい通路が隠されていて、私と木箱を持った使用人さんは、ヨイショヨイショとその中を通り抜けた。
「うああ! 開放されたー!」
すると、そこにもまた厨房が現れたんだけど、さっき通って来たのは使用人の館に通じる隠し通路だったので、こっちの厨房はもう、悪の経典ならぬ“ヘイゼル公爵邸 使用人経典”でがんじがらめにされた使用人さんたちの呪縛の届かないエリアだった。
死んだ目をしていた使用人さん達は、瞬時に素の人格を取り戻し、生き生きとした表情と声を発して、持っていた木箱を厨房の床のところに重ねて置いていってくれた。
「次期若奥様、また何かあればいつでもお呼び立て下さいまし!」
ロージーちゃんと普通におしゃべりできるようになってから4ヶ月あまり。多くのここの住人は私の事をそんな風に呼んでいた……
また彼らが経典の及ぶエリアへ旅立っていくのを見送りながら、
えっと、ここからどうすればいいんだっけ?
と思って、昨年のワークショップで王子様がくれた香水作りのプリントをポケットから取り出して読んでると、
「救世主様、何かお手伝いすることはございませんか?」
声がする方を見ると、厨房の入り口のところに3人くらいのメイドちゃんがひょっこりと顔を覗かせていた。
またある住人達は、朽ち果てるのを黙って見ているしかできなかった世界に突如として現れた救いの主と、私のことを呼んだ。
「あ、ありがとう! じゃあ大きめの鍋を用意してもらってもいいですか?」
お手伝いしてくれるメイドちゃんとともに、大量の花びらを鍋にバシバシ移し入れ、フタをして蒸留水が中に溜まるまでの長い時間を待つことになった。
チクチク チクチク
「ロージーちゃん、どれくらい進んだの?」
「んー、袖を縫い付ければ上は完成しそうです」
ここは使用人さん達のくつろぎスペース。
癒されるような水色の壁紙に、私とロージーちゃんが向かい合わせに座っているクリーム色した花柄のソファは、汚れひとつないとっても綺麗なもの。
それは本館と同じような恐ろしい状態にならないように、ここの管理を任されてる使用人さん達が、充てられてる予算を惜しみなく有効活用してる証拠だった。
シンプルな木のテーブルの上に並んでる可愛いティーセットのお茶を飲んでると、ロージーちゃんは縫ってたエスニョーラ家の紋章が入ってる布を両手で持ち上げた。
それはあの、XSサイズの騎士服……のレプリカだった。
「なんで今まで思い付かなかったんだろ! 自分で同じのを作っちゃえば良かったんですよね」
ロージーちゃんは縫い縫いしていたレプリカを持ったまま、横に置いてある本物の極小サイズの服を見やった。
フィットしてる騎士服じゃないとヤエリゼ君が困ってしまう事実を知った衝撃から、彼女は空き時間中ずっと、このレプリカ作りに没頭していた。
チラッと置き時計を見てみると、そろそろ良さそうな時間なのでお鍋の様子を見に行くと、厨房はアエモギの香りでいっぱいに満たされていた。
そして鍋の中央には、昨年の100倍くらいの量はありそうな蒸留水がたんまりと溜まっていた。
「その瓶! 奥様のお部屋にあったものですね」
香水そのものである、蒸留水の上澄みの油を小瓶に入れようとしてると、一緒に付いてきたロージーちゃんが声をあげた。
そういえば、彼女はこの香りに包まれていたアルフリードのお母様の部屋着を持ってきてくれた張本人。
新品の部屋着をすぐさま持ってきてくれたくらいだから、クロウディア様のお部屋の中の事もよくご存知なはず。
「そうなの、タンスの奥の方にしまってあったのを見つけ出してきたの」
瓶に香水を注ぎ入れながら私が答えると、
「私のママがよく奥様のお話をしてくれたんです。だから、奥様のお部屋のことは私、他のメイド仲間より詳しいんです」
ロージーちゃんは、ちょっと懐かしそうな感じで私の作業の様子を見てた。
ん? 彼女のママの話が出てきた?
「ロージーちゃんのママと、アルフリードのママは仲が良かったの?」
ロージーちゃんは、軽く頭を横に振って、
「ママは奥様がここに来てからずっと専属メイドをしてたんです。奥様が亡くなられてからは私が一人前になるまでは一緒にいたんですけど、おばあちゃんの引退に合わせて面倒みるのに一緒にパパの所に帰っちゃったんです」
そっかぁ、主従関係でもってあの経典に束縛されてるメイドさんじゃ、ご主人様と仲良くとはいかないよね……
彼女のおばあちゃんも引退したってことは、このお屋敷で働いてたって意味だよね?
ロージーちゃんも代々、ヘイゼル邸に仕える家柄の娘ちゃんだったんだ。
「エミリア様、おばあちゃんに会ったの覚えてますよね? 坊ちゃまがメロメロな様子を見て、孫の顔を見るまではあの世には行けないって言ってました!」
はい? ま、孫……? なぜアルフリードの子が、ロージーちゃんの、おばあちゃんの孫みたいな事になるの?
だけど、これまでに会ったことのある、おばあちゃんと言ったら……
「もしかして、おばあちゃまって、アルフリードの乳母様のことですか?」
私は香水を瓶にたんまりと入れ終わってフタをしてる所だったんだけど、ロージーちゃんは鍋を片付けてる所だった。
「そうそう! ステアおばあちゃんは、坊っちゃま付きでしたからね。あ、お小さいご主人様の乳母には経典の掟が効かないっていう掟があるんですよ。おっとりしてるおばあちゃんに育てられたから、坊ちゃまもおっとりしてるんですよねー」
経典を作った人も、主人の子どもが死んでるような使用人みたいになるのはマズイと思って、そんな都合のいい例外、作ったんかな?
そんな私の心の声を知ってるのか知らないのか、ロージーちゃんはこんな事を言った。
「おばあちゃんは、ずっとここのお屋敷にいただけあって、ヘイゼル家のことも、あの経典のことも詳しいみたいなんですよね。お屋敷を変貌させたお嬢様なら、経典の掟すら変えられちゃいそうな気がするから、是非またおばあちゃんに会って欲しいな……」
それでもって、私はロージーちゃんの次の休暇予定の来年に、ステア乳母様のところへ行く約束をした。
その日は、皇女様のお兄様、ジョナスン皇太子様が帰国する予定日の数日前だった。
「うわぁ、今回は沢山できて良かったじゃない。エミリアちゃん!」
私は香水作り大成功の報告も兼ねて、クロウディア様の瓶に詰めたアエモギの香水を皇女様の執務室に持って行った。
「うん、この香り。アルフリードの母上が付けていた香りだよ」
瓶のフタを開けて、上品に王子様は手で仰いで匂いを嗅いでいる。
皇太子様が帰国する前に、何かが起こってしまうかもしれない王子様……
その時が刻一刻と近づいてきてるかもしれないのを思うと、不安になってしまうけど、それが伝わらないように、私はニコニコしてその姿を見ていた。
「とてもいい香りだな。私も、これをもらっていいのか?」
皇女様の手には、10mlくらいの量が入る小瓶がある。
香水はクロウディア様の瓶に入るよりかなり多めにできてしまったので、いくつか小さな瓶に分けて、皇女様に王子様、その他いろいろな人にお裾分けしていた。
「このキレイな瓶に入ってるのは、エミリアちゃんが持ってるの?」
王子様はクロウディア様の瓶のフタを閉めながら、尋ねてきた。
「そのこれは……公爵様にお渡ししようと思うんです。フタをしていれば匂わないけど、いつでも奥様のことを思い出したい時に、そばに置いておいてもらいたいと思って……」
昨年、この香りによって奥様へのツラい想いを思い出して涙してしまった公爵様。
そんな公爵様とアルフリードとお散歩に訪れたのは皇城の庭園の一角。
こじんまりした池と、小さな橋が架かってるその場所で、私は公爵様にその小瓶をお渡しした。
公爵様は、お仕事が忙しくてずっと皇城に泊まってたのでヘイゼル邸でお渡しすることは出来なかった。
「おお、これは。クロウディア愛用のパフュームボトルではないか。なんと、中が満たされておる」
公爵様に昨年みたいなツラそうな表情は見られず、むしろ中身が満タンになっていて嬉しそうだった。
またすぐにお仕事で先に陛下の所へ戻って行った公爵様を見届けていると、サワサワと髪の毛が揺れる気配があった。
見ると、アルフリードが私の顔の横から垂れてる長いウェーブがかった髪を手ですくっていた。
「父上が母上のことであんなに喜んでるのは初めて見たよ。エミリアは……君は本当にすごい人だ」
なぜだか切なそうな表情をしているアルフリードは、すくっていた私の髪を持ち上げると、それにそっと口づけをした。
私はただただその様子を、ドキドキしながら、顔を赤らめながら見つめているしか出来なかった。
ここは主人である公爵様とアルフリードの食事を作るところで、何日も煮込むような手の込んだ料理も作られたりするため、いつもシェフさん達は忙しそうにしている。
昨年、私とアルフリードの婚約披露会で振る舞われた彼らの料理は、アルフリードの乳母様が絶賛していた通りこの世界に来てから口にしたものの中でも格別の美味しさを放っていた。
香水作りで必要な花びらを煮出すのに必要な火がくべってある釜戸は、シェフさん達によって完全に占領されているのだが、そんな事は構わずに広々とした厨房を奥へ奥へと進んでいく。
食器なんかが沢山入っている大きな棚のところにくると、その裏に狭っこい通路が隠されていて、私と木箱を持った使用人さんは、ヨイショヨイショとその中を通り抜けた。
「うああ! 開放されたー!」
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死んだ目をしていた使用人さん達は、瞬時に素の人格を取り戻し、生き生きとした表情と声を発して、持っていた木箱を厨房の床のところに重ねて置いていってくれた。
「次期若奥様、また何かあればいつでもお呼び立て下さいまし!」
ロージーちゃんと普通におしゃべりできるようになってから4ヶ月あまり。多くのここの住人は私の事をそんな風に呼んでいた……
また彼らが経典の及ぶエリアへ旅立っていくのを見送りながら、
えっと、ここからどうすればいいんだっけ?
と思って、昨年のワークショップで王子様がくれた香水作りのプリントをポケットから取り出して読んでると、
「救世主様、何かお手伝いすることはございませんか?」
声がする方を見ると、厨房の入り口のところに3人くらいのメイドちゃんがひょっこりと顔を覗かせていた。
またある住人達は、朽ち果てるのを黙って見ているしかできなかった世界に突如として現れた救いの主と、私のことを呼んだ。
「あ、ありがとう! じゃあ大きめの鍋を用意してもらってもいいですか?」
お手伝いしてくれるメイドちゃんとともに、大量の花びらを鍋にバシバシ移し入れ、フタをして蒸留水が中に溜まるまでの長い時間を待つことになった。
チクチク チクチク
「ロージーちゃん、どれくらい進んだの?」
「んー、袖を縫い付ければ上は完成しそうです」
ここは使用人さん達のくつろぎスペース。
癒されるような水色の壁紙に、私とロージーちゃんが向かい合わせに座っているクリーム色した花柄のソファは、汚れひとつないとっても綺麗なもの。
それは本館と同じような恐ろしい状態にならないように、ここの管理を任されてる使用人さん達が、充てられてる予算を惜しみなく有効活用してる証拠だった。
シンプルな木のテーブルの上に並んでる可愛いティーセットのお茶を飲んでると、ロージーちゃんは縫ってたエスニョーラ家の紋章が入ってる布を両手で持ち上げた。
それはあの、XSサイズの騎士服……のレプリカだった。
「なんで今まで思い付かなかったんだろ! 自分で同じのを作っちゃえば良かったんですよね」
ロージーちゃんは縫い縫いしていたレプリカを持ったまま、横に置いてある本物の極小サイズの服を見やった。
フィットしてる騎士服じゃないとヤエリゼ君が困ってしまう事実を知った衝撃から、彼女は空き時間中ずっと、このレプリカ作りに没頭していた。
チラッと置き時計を見てみると、そろそろ良さそうな時間なのでお鍋の様子を見に行くと、厨房はアエモギの香りでいっぱいに満たされていた。
そして鍋の中央には、昨年の100倍くらいの量はありそうな蒸留水がたんまりと溜まっていた。
「その瓶! 奥様のお部屋にあったものですね」
香水そのものである、蒸留水の上澄みの油を小瓶に入れようとしてると、一緒に付いてきたロージーちゃんが声をあげた。
そういえば、彼女はこの香りに包まれていたアルフリードのお母様の部屋着を持ってきてくれた張本人。
新品の部屋着をすぐさま持ってきてくれたくらいだから、クロウディア様のお部屋の中の事もよくご存知なはず。
「そうなの、タンスの奥の方にしまってあったのを見つけ出してきたの」
瓶に香水を注ぎ入れながら私が答えると、
「私のママがよく奥様のお話をしてくれたんです。だから、奥様のお部屋のことは私、他のメイド仲間より詳しいんです」
ロージーちゃんは、ちょっと懐かしそうな感じで私の作業の様子を見てた。
ん? 彼女のママの話が出てきた?
「ロージーちゃんのママと、アルフリードのママは仲が良かったの?」
ロージーちゃんは、軽く頭を横に振って、
「ママは奥様がここに来てからずっと専属メイドをしてたんです。奥様が亡くなられてからは私が一人前になるまでは一緒にいたんですけど、おばあちゃんの引退に合わせて面倒みるのに一緒にパパの所に帰っちゃったんです」
そっかぁ、主従関係でもってあの経典に束縛されてるメイドさんじゃ、ご主人様と仲良くとはいかないよね……
彼女のおばあちゃんも引退したってことは、このお屋敷で働いてたって意味だよね?
ロージーちゃんも代々、ヘイゼル邸に仕える家柄の娘ちゃんだったんだ。
「エミリア様、おばあちゃんに会ったの覚えてますよね? 坊ちゃまがメロメロな様子を見て、孫の顔を見るまではあの世には行けないって言ってました!」
はい? ま、孫……? なぜアルフリードの子が、ロージーちゃんの、おばあちゃんの孫みたいな事になるの?
だけど、これまでに会ったことのある、おばあちゃんと言ったら……
「もしかして、おばあちゃまって、アルフリードの乳母様のことですか?」
私は香水を瓶にたんまりと入れ終わってフタをしてる所だったんだけど、ロージーちゃんは鍋を片付けてる所だった。
「そうそう! ステアおばあちゃんは、坊っちゃま付きでしたからね。あ、お小さいご主人様の乳母には経典の掟が効かないっていう掟があるんですよ。おっとりしてるおばあちゃんに育てられたから、坊ちゃまもおっとりしてるんですよねー」
経典を作った人も、主人の子どもが死んでるような使用人みたいになるのはマズイと思って、そんな都合のいい例外、作ったんかな?
そんな私の心の声を知ってるのか知らないのか、ロージーちゃんはこんな事を言った。
「おばあちゃんは、ずっとここのお屋敷にいただけあって、ヘイゼル家のことも、あの経典のことも詳しいみたいなんですよね。お屋敷を変貌させたお嬢様なら、経典の掟すら変えられちゃいそうな気がするから、是非またおばあちゃんに会って欲しいな……」
それでもって、私はロージーちゃんの次の休暇予定の来年に、ステア乳母様のところへ行く約束をした。
その日は、皇女様のお兄様、ジョナスン皇太子様が帰国する予定日の数日前だった。
「うわぁ、今回は沢山できて良かったじゃない。エミリアちゃん!」
私は香水作り大成功の報告も兼ねて、クロウディア様の瓶に詰めたアエモギの香水を皇女様の執務室に持って行った。
「うん、この香り。アルフリードの母上が付けていた香りだよ」
瓶のフタを開けて、上品に王子様は手で仰いで匂いを嗅いでいる。
皇太子様が帰国する前に、何かが起こってしまうかもしれない王子様……
その時が刻一刻と近づいてきてるかもしれないのを思うと、不安になってしまうけど、それが伝わらないように、私はニコニコしてその姿を見ていた。
「とてもいい香りだな。私も、これをもらっていいのか?」
皇女様の手には、10mlくらいの量が入る小瓶がある。
香水はクロウディア様の瓶に入るよりかなり多めにできてしまったので、いくつか小さな瓶に分けて、皇女様に王子様、その他いろいろな人にお裾分けしていた。
「このキレイな瓶に入ってるのは、エミリアちゃんが持ってるの?」
王子様はクロウディア様の瓶のフタを閉めながら、尋ねてきた。
「そのこれは……公爵様にお渡ししようと思うんです。フタをしていれば匂わないけど、いつでも奥様のことを思い出したい時に、そばに置いておいてもらいたいと思って……」
昨年、この香りによって奥様へのツラい想いを思い出して涙してしまった公爵様。
そんな公爵様とアルフリードとお散歩に訪れたのは皇城の庭園の一角。
こじんまりした池と、小さな橋が架かってるその場所で、私は公爵様にその小瓶をお渡しした。
公爵様は、お仕事が忙しくてずっと皇城に泊まってたのでヘイゼル邸でお渡しすることは出来なかった。
「おお、これは。クロウディア愛用のパフュームボトルではないか。なんと、中が満たされておる」
公爵様に昨年みたいなツラそうな表情は見られず、むしろ中身が満タンになっていて嬉しそうだった。
またすぐにお仕事で先に陛下の所へ戻って行った公爵様を見届けていると、サワサワと髪の毛が揺れる気配があった。
見ると、アルフリードが私の顔の横から垂れてる長いウェーブがかった髪を手ですくっていた。
「父上が母上のことであんなに喜んでるのは初めて見たよ。エミリアは……君は本当にすごい人だ」
なぜだか切なそうな表情をしているアルフリードは、すくっていた私の髪を持ち上げると、それにそっと口づけをした。
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