皇女様の女騎士に志願したところ彼女を想って死ぬはずだった公爵子息に溺愛されました

ねむりまき

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第2部 彼を救うための仕込み

49.2人の近況報告

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アルフリードは、ウチの居間のソファに腰掛けて、さっき取ったメモを見返している。

「アルフリード、私、あなたのおウチもヒュッゲな感じになると、とっても素敵だと思うんだけど、今日お父様から話を聞いてどうだった?」

さりげなく彼の考えの変化を確かめないと。

「うん、素晴らしいよ。僕の父上のセンスもいいと思うし、迷ってしまうね……」

え……ええ!! これは、まずい。

そう思って、なんとか次の手を考えていると。

隣に座っている彼の顔がすぐ近くで覗き込んでいた。

「ふふ、なーんてね。本当は父上の趣味が、あんまり好きじゃないんでしょ」

含み笑いをしているような、ニヤリとした表情でアルフリードは私を見つめていた。

!! 

か、か、カマかけてたのか~~!

いつから、分かってたんだろ……

まあ、まあ、どうやら今日学んだ美的センスの方向に彼も動いてくれるようなので、とりあえず一安心しよう。

チラリと横目で見ると、腕組みして座る彼も顔を赤くして俯いている私を楽しむように横目で見ていた。

そうしてるうちに、夕飯の準備が整ったとメイドが知らせてくれて、私たちはダイニングへ向かった。


食卓には、家族が全員集合していた。
テーブルのお誕生日席にはお父様。

左側にはお母様がいて、右側にはお兄様とイリスが座っている。

私とアルフリードは、お母様の隣りの席に座った。

「侯爵様、とても美味びみな料理ですね。特に野菜の味が新鮮だ」

アルフリードは優雅に食器を扱いながら、爽やかに食べている。

「さすがよく気づいてくれた。ウチの料理で使用している野菜は全てキャルン産のオーガニックだからな。やはり体に入るものは、良いものを取り入れないといけない」

そうそう、お父様は健康志向も強くて、このオーガニック野菜のジュースも朝食では欠かさず家族みんなで飲むんだよね。

そんな、ほのぼのとした会話をしつつ、デザートメニューも終わってあったかい紅茶を飲んでいたとき。


前に座っていたお兄様とイリスが急に立ち上がり始めた。

いつもだったら食事が終わってダイニングを出ていくときは、“お先に失礼します”と言ってから立つのに。

立ってる2人以外は、急にどしたん? という感じで視線を向けている。

お兄様はエスコートするようにイリスの腰を支えている。

半年前、初めて2人が婚約者同士として参加した私とアルフリードの婚約披露会では、腕を5mm浮かして触れないでいるという超不自然なエスコート姿だったのに、この数ヶ月はそんな時期がウソみたいに、誰がどう見ても最高にお似合いのカップルになっていた。


「えー、皆さんに私たちから近況のご報告があります」

お兄様が声を発した。

はっ……これは……!
ついに、ついに来たのね!

私、知ってるんだもんね。舞踏会でダンスしてる時に2人がチューしたり、イチャイチャしてるっていうの、令嬢のお友達から聞いてるんだから。

それにお兄様、前は四半期に1度の貴族家マニュアルの見直しに合わせて私の問題集も最新版をくれたのに、私の方から言わないと忘れちゃうくらい、イリスに夢中なんだよね。

それにそれに……2人の指に光ってるシルバーリング!!!

昨日までは無かったじゃん!!

ここにいる全員、多分、勘のいいアルフリードも分かってるって。

おめでとう。本当におめでとう。
婚約関係が終わって、次のステップに進むんだね。


そうして私が内心ニヤニヤしていると、お兄様とイリスはお互い見つめあって、小さく頷いた。

そして私たちの方に顔を戻すと2人声をそろえて、


「「私たち家族になるので、結婚することにしました」」


へっへ~ん、分かってましたよ。“結婚”の2文字っ!

……あれ? ちょっと待って、その前に不思議な言い回ししなかった?

喜ばしいことの筈なのに、誰も何も言わないという変なができている。

「あなた達、もう少し分かりやすい言い方をしないと、伝わらないわよ」

すると、お母様がちょっと苦笑気味で言った。

お兄様はイリスの腰を支えながら、さらに近くへ寄り添って、


「イリスのお腹に子どもがいます。新しい家族ができたので、結婚することにしました」


と言った。


……。


「えーーーーーー!!!?」

「なにーーーーーー!!!?」


私とお父様は同時に立ち上がって絶叫した。

「ほらね、早く結婚の日取りを決めておきましょうと言っておいたのに」

口に手を当ててニコニコしているお母様は、2人から相談を受けてたのか、もう知ってたみたい。

ま、ま、まじか。

あのお兄様が、できちゃっ……じゃなくて、授かり婚!!


私はダイニングテーブルに両手をついた状態で、アゴが外れたみたいになってしまってる。

そうしたら、パチパチパチという手を叩く音がしてきて、

「兄上、イリス殿、それは喜ばしい。おめでとうございます!」

座ったままでいるアルフリードが、拍手をして朗らかに笑っている。

その姿を見ていたら少し落ち着いてきて、私も、お父様も自然と笑みがこぼれてきて、拍手した。

そのまま席に座ると、

「ね、お2人が婚約式に来た時、僕がよくお似合いですって言ったのは本当だったでしょ」

隣のアルフリードが、私の耳元に顔を寄せてヒソヒソ声で喋った。

確かに、あの時は誰が見ても無理矢理くっつけさせられたとしか思えなかったけど……

すげぇなアルフリード。

予知能力あるんじゃない?


ビックリしたけど、移り変わる季節みたいに、我が家にも春がきたのだった。




********************
最悪の相性の2人が、最高の相性に変わる過程は
別作品『侯爵子息ラドルフと女騎士イリスの近況報告』をご覧ください^^
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