皇女様の女騎士に志願したところ彼女を想って死ぬはずだった公爵子息に溺愛されました

ねむりまき

文字の大きさ
上 下
50 / 169
第2部 彼を救うための仕込み

49.2人の近況報告

しおりを挟む
アルフリードは、ウチの居間のソファに腰掛けて、さっき取ったメモを見返している。

「アルフリード、私、あなたのおウチもヒュッゲな感じになると、とっても素敵だと思うんだけど、今日お父様から話を聞いてどうだった?」

さりげなく彼の考えの変化を確かめないと。

「うん、素晴らしいよ。僕の父上のセンスもいいと思うし、迷ってしまうね……」

え……ええ!! これは、まずい。

そう思って、なんとか次の手を考えていると。

隣に座っている彼の顔がすぐ近くで覗き込んでいた。

「ふふ、なーんてね。本当は父上の趣味が、あんまり好きじゃないんでしょ」

含み笑いをしているような、ニヤリとした表情でアルフリードは私を見つめていた。

!! 

か、か、カマかけてたのか~~!

いつから、分かってたんだろ……

まあ、まあ、どうやら今日学んだ美的センスの方向に彼も動いてくれるようなので、とりあえず一安心しよう。

チラリと横目で見ると、腕組みして座る彼も顔を赤くして俯いている私を楽しむように横目で見ていた。

そうしてるうちに、夕飯の準備が整ったとメイドが知らせてくれて、私たちはダイニングへ向かった。


食卓には、家族が全員集合していた。
テーブルのお誕生日席にはお父様。

左側にはお母様がいて、右側にはお兄様とイリスが座っている。

私とアルフリードは、お母様の隣りの席に座った。

「侯爵様、とても美味びみな料理ですね。特に野菜の味が新鮮だ」

アルフリードは優雅に食器を扱いながら、爽やかに食べている。

「さすがよく気づいてくれた。ウチの料理で使用している野菜は全てキャルン産のオーガニックだからな。やはり体に入るものは、良いものを取り入れないといけない」

そうそう、お父様は健康志向も強くて、このオーガニック野菜のジュースも朝食では欠かさず家族みんなで飲むんだよね。

そんな、ほのぼのとした会話をしつつ、デザートメニューも終わってあったかい紅茶を飲んでいたとき。


前に座っていたお兄様とイリスが急に立ち上がり始めた。

いつもだったら食事が終わってダイニングを出ていくときは、“お先に失礼します”と言ってから立つのに。

立ってる2人以外は、急にどしたん? という感じで視線を向けている。

お兄様はエスコートするようにイリスの腰を支えている。

半年前、初めて2人が婚約者同士として参加した私とアルフリードの婚約披露会では、腕を5mm浮かして触れないでいるという超不自然なエスコート姿だったのに、この数ヶ月はそんな時期がウソみたいに、誰がどう見ても最高にお似合いのカップルになっていた。


「えー、皆さんに私たちから近況のご報告があります」

お兄様が声を発した。

はっ……これは……!
ついに、ついに来たのね!

私、知ってるんだもんね。舞踏会でダンスしてる時に2人がチューしたり、イチャイチャしてるっていうの、令嬢のお友達から聞いてるんだから。

それにお兄様、前は四半期に1度の貴族家マニュアルの見直しに合わせて私の問題集も最新版をくれたのに、私の方から言わないと忘れちゃうくらい、イリスに夢中なんだよね。

それにそれに……2人の指に光ってるシルバーリング!!!

昨日までは無かったじゃん!!

ここにいる全員、多分、勘のいいアルフリードも分かってるって。

おめでとう。本当におめでとう。
婚約関係が終わって、次のステップに進むんだね。


そうして私が内心ニヤニヤしていると、お兄様とイリスはお互い見つめあって、小さく頷いた。

そして私たちの方に顔を戻すと2人声をそろえて、


「「私たち家族になるので、結婚することにしました」」


へっへ~ん、分かってましたよ。“結婚”の2文字っ!

……あれ? ちょっと待って、その前に不思議な言い回ししなかった?

喜ばしいことの筈なのに、誰も何も言わないという変なができている。

「あなた達、もう少し分かりやすい言い方をしないと、伝わらないわよ」

すると、お母様がちょっと苦笑気味で言った。

お兄様はイリスの腰を支えながら、さらに近くへ寄り添って、


「イリスのお腹に子どもがいます。新しい家族ができたので、結婚することにしました」


と言った。


……。


「えーーーーーー!!!?」

「なにーーーーーー!!!?」


私とお父様は同時に立ち上がって絶叫した。

「ほらね、早く結婚の日取りを決めておきましょうと言っておいたのに」

口に手を当ててニコニコしているお母様は、2人から相談を受けてたのか、もう知ってたみたい。

ま、ま、まじか。

あのお兄様が、できちゃっ……じゃなくて、授かり婚!!


私はダイニングテーブルに両手をついた状態で、アゴが外れたみたいになってしまってる。

そうしたら、パチパチパチという手を叩く音がしてきて、

「兄上、イリス殿、それは喜ばしい。おめでとうございます!」

座ったままでいるアルフリードが、拍手をして朗らかに笑っている。

その姿を見ていたら少し落ち着いてきて、私も、お父様も自然と笑みがこぼれてきて、拍手した。

そのまま席に座ると、

「ね、お2人が婚約式に来た時、僕がよくお似合いですって言ったのは本当だったでしょ」

隣のアルフリードが、私の耳元に顔を寄せてヒソヒソ声で喋った。

確かに、あの時は誰が見ても無理矢理くっつけさせられたとしか思えなかったけど……

すげぇなアルフリード。

予知能力あるんじゃない?


ビックリしたけど、移り変わる季節みたいに、我が家にも春がきたのだった。




********************
最悪の相性の2人が、最高の相性に変わる過程は
別作品『侯爵子息ラドルフと女騎士イリスの近況報告』をご覧ください^^
しおりを挟む
【Twitterで作品イメージの投稿始めました】
#皇女様の女騎士イメージ

↑クリックでイメージ投稿のみ表示されます
感想 15

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

処理中です...