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第1部 隠された令嬢
1.序章:過保護の深窓令嬢はなぜプロポーズされた?
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「ヘイゼル公爵家の長男、アルフリードと申します。先程の騎士の誓約をみて、あなたに惹きつけられました。僕と結婚してください」
……はぁ?
いま確かにアルフリードって言ったよね?
私いま、小説の主人公、あまたの女性を虜にする生粋のプレイボーイに抱えられ、その彼から求婚をされたのでしょうか。
思わず何も言えず私はぽかんと口を開けて、切なそうにこちらを見ているその人に見入ってしまった。
「僕の妻になればソフィアナからあなたを守ることができる。ああ、こんな気持ちは初めてだ……」
アルフリードと名乗ったその人は、一層腕に力を込めると、私の首筋と肩の間に頭を埋めてきた。
なんなの、なんなの、なんなの……
なんなのこの状況はーーー!!?
**************
私は通勤帰りに小説を読んで没頭するのがストレス発散という、ごく普通のOLだった。
その日もいつものように電車のホームで携帯を取り出してネット小説を読んでいたら、足を踏み外してホームから転落、あっという間に電車にひかれて25年の生涯を終えた。
そのはずなのに、目が覚めた。
見慣れない天井がぼんやりと見えてあたりを見渡すと、全く見覚えのない洋風の広い部屋にいた。
起き上がって大きな鏡の前に立ったとき、そこにいたのは見た事もないヨーロッパ人風の少女だった。
「めちゃくちゃ可愛い」
鏡に片手をついて、スベスベの白い頬に手を添えると、ウェーブがかった亜麻色の長い髪を垂らした鏡の中の少女も、薄茶色の大きい瞳を驚いたように見開いて同じポーズをした。
まさか、まさか信じられない……これが私?
「一体なんなのーーー!?」
ドカッ
この目の前の状況に訳が分からず叫ぶと、部屋の扉が大きく開いた。
「どうしたんだエミリア!」
髪を一つに束ねた、なかなかのイケメン青年が物凄い勢いで近づいてきて両肩をつかまれた。
「エミリア大丈夫か? 昨晩、急に倒れたから寝かしていたのに、今度はどうしたんだ?」
「あ、あの…… 私は誰なんでしょう、ここはどこでしょうか……」
思ったままの疑問を口にしたら、その青年の顔からさーっと血の気が引いていくのが手に取るように分かった。
「父上、母上、一大事です!! エミリアが記憶喪失になりました!!!」
それから数日して、ようやくこの状況が飲み込めてきた。
私はどうやら事故に遭う前に読んでいた「皇女様の面影を追って」の小説の世界に入り込んでしまったらしい。
公爵アルフリードは、幼馴染だった皇女ソフィアナの不慮の事故死を受け入れられず、様々な女性と関係を持つことで心の穴を埋めようとしたが、ソフィアナ以上の女性に出会うことができず人生に絶望、彼女を追って命を絶ってしまう。
それが小説の筋書きだった。
エミリアの兄は、原作の中ではたまにしか出てこない脇役、エスニョーラ侯爵家の長男・ラドルフという皇城に勤める文官だった。
真面目で物静か、調べ物ばかりしている引きこもり気質……いわく、まさに学者気質全開のキャラだったはずなんだけど……
目の前にいるのは、ただのシスコン!
しかもエミリアをほぼ軟禁状態にしているというイカレ野郎だった。
「エミリアお前はあんな魑魅魍魎《ちみもうりょう》の潜む貴族世界なんかで苦労することはないんだ。ずっとこの屋敷で家族に守られて好きに過ごせばいいんだからな」
顔を合わせれば両親と兄は口々にこのセリフ。
現侯爵の父親が亡くなっても、兄が後を継いだらずっと私の面倒をみることが家族の間では当然の認識としてまかり通っていた。
兄ラドルフの登場シーンは原作では本当に少ない。
けれど、皇室に出入りするアルフリードとは仕事上ではそこそこ接点がある間柄という設定だ。
近辺にいる令嬢と片っ端から恋愛事情になっていたアルフリードがエミリアを知っていてもおかしくないのに、原作に彼女が登場しなかった謎も頷ける。
さて、そんな深窓の令嬢になってしまった訳だけれど、私には是が非でも成し遂げたいことがある。
それは、主人公アルフリードの非業の自死を食い止めること!!
幼い頃から父親から皇女様を守るように教え込まれていた彼は、気づかないうちに彼女を心の拠り所としていた。
そして彼女の馬車による事故死の後、彼は支えを失い自滅の道を歩んでいくのだけれど、公爵家という力を持つ家柄に加え、文武両道に長けた能力は帝国の宝でもあり、彼の力が弱まることは帝国そのものの力を弱めることにも繋がっていた。
帝国が平和なままならエミリアである私は結婚なんて面倒なこともしないで、家族の思惑通りずっとエスニョーラ家の邸宅内で悠々自適な生涯を送れるかもしれない。
しかしアルフリードを救わなければ、帝国が力を失い、エスニョーラ家も含め誰もハッピーにはなれないのだ。
そのため、まずはアルフリードの死のきっかけとなった皇女様の事故死を防がないと。
そしてそのためには、大前提として今が物語上いつの時期なのか確認しなくてはならない。
皇女様がまだ生きているのかどうか……
「あ、あのう、皇女様はお元気でしょうか?」
夕飯の席で発言してみた。
お父様がピクリ、とナイフとフォークでステーキを切る動作を止めた。
「皇女様は、すこぶるお元気だよ。なぜエミリアがそのような事を気にするのかな?」
若干、眉をぴくつかせながら笑顔を向けるお父様に聞いてはいけないことを聞いてしまった空気をビリビリ感じる。
お兄様は怪訝な目つきでこちらを伺っている。
「え、えっと、皇女様がおいくつになられたのか、気になってしまって」
「あの方はラドルフより確か1つ歳下だったから18のはずよ」
お母様ナイス! 家族の中で唯一、天然キャラを持ち合わせた癒し要素&話が通じる救世主!
皇女様まだ生きていらっしゃるのですね……アルフリードと同い年の皇女様が馬車の事故で命を落とすのが21歳。
まだ3年もある!
「お会いできたりとかは、しませんよね?」
頬をポリポリと掻きながら聞いてみたところ……
お母様の瞳孔がカッと開き、上品なお顔が一気に警戒モードにバリバリと音を立てるように切り替わった。
「エミリア、前はそんな事を言わなかったのに、どうしたというの? やっぱり倒れてから様子がおかしいわ。部屋に戻って休みましょう!」
はい、前言撤回です。
お母様はナプキンで口元を拭いて立ち上がると、私のイスを引いて手を取った。
そりゃあ以前のエミリアとは別人が中に入ってる訳だから、様子が違うのはある意味合ってはいるけど……
やっぱり、この家族おかしいよ!
全員、過保護にも度が過ぎてる。
……はぁ?
いま確かにアルフリードって言ったよね?
私いま、小説の主人公、あまたの女性を虜にする生粋のプレイボーイに抱えられ、その彼から求婚をされたのでしょうか。
思わず何も言えず私はぽかんと口を開けて、切なそうにこちらを見ているその人に見入ってしまった。
「僕の妻になればソフィアナからあなたを守ることができる。ああ、こんな気持ちは初めてだ……」
アルフリードと名乗ったその人は、一層腕に力を込めると、私の首筋と肩の間に頭を埋めてきた。
なんなの、なんなの、なんなの……
なんなのこの状況はーーー!!?
**************
私は通勤帰りに小説を読んで没頭するのがストレス発散という、ごく普通のOLだった。
その日もいつものように電車のホームで携帯を取り出してネット小説を読んでいたら、足を踏み外してホームから転落、あっという間に電車にひかれて25年の生涯を終えた。
そのはずなのに、目が覚めた。
見慣れない天井がぼんやりと見えてあたりを見渡すと、全く見覚えのない洋風の広い部屋にいた。
起き上がって大きな鏡の前に立ったとき、そこにいたのは見た事もないヨーロッパ人風の少女だった。
「めちゃくちゃ可愛い」
鏡に片手をついて、スベスベの白い頬に手を添えると、ウェーブがかった亜麻色の長い髪を垂らした鏡の中の少女も、薄茶色の大きい瞳を驚いたように見開いて同じポーズをした。
まさか、まさか信じられない……これが私?
「一体なんなのーーー!?」
ドカッ
この目の前の状況に訳が分からず叫ぶと、部屋の扉が大きく開いた。
「どうしたんだエミリア!」
髪を一つに束ねた、なかなかのイケメン青年が物凄い勢いで近づいてきて両肩をつかまれた。
「エミリア大丈夫か? 昨晩、急に倒れたから寝かしていたのに、今度はどうしたんだ?」
「あ、あの…… 私は誰なんでしょう、ここはどこでしょうか……」
思ったままの疑問を口にしたら、その青年の顔からさーっと血の気が引いていくのが手に取るように分かった。
「父上、母上、一大事です!! エミリアが記憶喪失になりました!!!」
それから数日して、ようやくこの状況が飲み込めてきた。
私はどうやら事故に遭う前に読んでいた「皇女様の面影を追って」の小説の世界に入り込んでしまったらしい。
公爵アルフリードは、幼馴染だった皇女ソフィアナの不慮の事故死を受け入れられず、様々な女性と関係を持つことで心の穴を埋めようとしたが、ソフィアナ以上の女性に出会うことができず人生に絶望、彼女を追って命を絶ってしまう。
それが小説の筋書きだった。
エミリアの兄は、原作の中ではたまにしか出てこない脇役、エスニョーラ侯爵家の長男・ラドルフという皇城に勤める文官だった。
真面目で物静か、調べ物ばかりしている引きこもり気質……いわく、まさに学者気質全開のキャラだったはずなんだけど……
目の前にいるのは、ただのシスコン!
しかもエミリアをほぼ軟禁状態にしているというイカレ野郎だった。
「エミリアお前はあんな魑魅魍魎《ちみもうりょう》の潜む貴族世界なんかで苦労することはないんだ。ずっとこの屋敷で家族に守られて好きに過ごせばいいんだからな」
顔を合わせれば両親と兄は口々にこのセリフ。
現侯爵の父親が亡くなっても、兄が後を継いだらずっと私の面倒をみることが家族の間では当然の認識としてまかり通っていた。
兄ラドルフの登場シーンは原作では本当に少ない。
けれど、皇室に出入りするアルフリードとは仕事上ではそこそこ接点がある間柄という設定だ。
近辺にいる令嬢と片っ端から恋愛事情になっていたアルフリードがエミリアを知っていてもおかしくないのに、原作に彼女が登場しなかった謎も頷ける。
さて、そんな深窓の令嬢になってしまった訳だけれど、私には是が非でも成し遂げたいことがある。
それは、主人公アルフリードの非業の自死を食い止めること!!
幼い頃から父親から皇女様を守るように教え込まれていた彼は、気づかないうちに彼女を心の拠り所としていた。
そして彼女の馬車による事故死の後、彼は支えを失い自滅の道を歩んでいくのだけれど、公爵家という力を持つ家柄に加え、文武両道に長けた能力は帝国の宝でもあり、彼の力が弱まることは帝国そのものの力を弱めることにも繋がっていた。
帝国が平和なままならエミリアである私は結婚なんて面倒なこともしないで、家族の思惑通りずっとエスニョーラ家の邸宅内で悠々自適な生涯を送れるかもしれない。
しかしアルフリードを救わなければ、帝国が力を失い、エスニョーラ家も含め誰もハッピーにはなれないのだ。
そのため、まずはアルフリードの死のきっかけとなった皇女様の事故死を防がないと。
そしてそのためには、大前提として今が物語上いつの時期なのか確認しなくてはならない。
皇女様がまだ生きているのかどうか……
「あ、あのう、皇女様はお元気でしょうか?」
夕飯の席で発言してみた。
お父様がピクリ、とナイフとフォークでステーキを切る動作を止めた。
「皇女様は、すこぶるお元気だよ。なぜエミリアがそのような事を気にするのかな?」
若干、眉をぴくつかせながら笑顔を向けるお父様に聞いてはいけないことを聞いてしまった空気をビリビリ感じる。
お兄様は怪訝な目つきでこちらを伺っている。
「え、えっと、皇女様がおいくつになられたのか、気になってしまって」
「あの方はラドルフより確か1つ歳下だったから18のはずよ」
お母様ナイス! 家族の中で唯一、天然キャラを持ち合わせた癒し要素&話が通じる救世主!
皇女様まだ生きていらっしゃるのですね……アルフリードと同い年の皇女様が馬車の事故で命を落とすのが21歳。
まだ3年もある!
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頬をポリポリと掻きながら聞いてみたところ……
お母様の瞳孔がカッと開き、上品なお顔が一気に警戒モードにバリバリと音を立てるように切り替わった。
「エミリア、前はそんな事を言わなかったのに、どうしたというの? やっぱり倒れてから様子がおかしいわ。部屋に戻って休みましょう!」
はい、前言撤回です。
お母様はナプキンで口元を拭いて立ち上がると、私のイスを引いて手を取った。
そりゃあ以前のエミリアとは別人が中に入ってる訳だから、様子が違うのはある意味合ってはいるけど……
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全員、過保護にも度が過ぎてる。
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