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Ⅰ.最悪の相性の2人
14.勝負の行方
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イリス
ーーーー
今日の夜会のお屋敷はちょっと分かりにくい場所にあって、馬車の御者が迷ったりなんかして、ダンスタイムももう始まってだいぶたった頃の到着だった。
また貴重な皆んなとの時間がこんな形で奪われるなんて……最悪。
『ラドルフ・エスニョーラ様とお連れ様のご到着ーー!』
お屋敷によって形式が色々あるみたいだけど、ここのお宅はゲストが到着するといちいち名前を読み上げるらしい。
だいぶ、遅刻もしてきてるのに恥ずかしいこと極まりない!!
皆さんの大注目を浴びながら、ヤツと腕を組んで歩くことになるなんて……
なんだか、見られてることは見られてるけど、そんなに驚いた顔しなくてもいいと思うんだけど。
でもダンスフロアまで、皆さん体を避けて道を作ってもらえるのは案外気持ちがいいものだったりする。
こうして1曲踊り終えて、女騎士仲間の皆どこかなーと思って探していると、いたいた!
しかも、皆こっち見てくれてるし。
さあ、今日こそは。
残りのダンスタイムは、この間と同じくらいしか残ってないけど、少しでも聞き出すからね。
と思ったのに、
「イリス……ホントにあんた愛されてるよ。このドレスだって急遽こしらえてくれたものなんでしょ? 時間がもったいないから、戻りなさい!」
結局、結局、今日のダンスタイムはずっとこいつと踊ってるハメになった。
しかも、どうしてこのドレスの事を知ってんの??
早く、たくさん舞踏会をこなせばいいと思ってたけど、そういう訳でもないのね……
ヤツがここまで見栄えにこだわるとは思わなかったけど、またギリギリになってこんな事をされたんじゃ、私の望みが叶わなくって損してしまう。
次はもう少し期間を空けてもらって、万全な準備をしてから出るようにしよう……
ラドルフ
ーーーーー
予期せぬトラブルはあったとはいえ、こんだけほぼ完璧に整えた状態で3曲踊れたんだ。
まあ上出来じゃないだろうか。
「ラドルフさん、今日はどうもお越しいただきまして。もう間に合われないと思いましたが、お噂のパートナー殿とどうしても踊りたかったんでしょうな。いやあ、本当にお綺麗な方で惚れ惚れしましたよ」
今回の夜会の主催者だ。
ふふん、俺の思惑通り、順調に物事が動いてるな。
これで、あの顔のキツい令嬢も文句を言えまい。
しかしなぁ、1度着せたモンは2度と着せられそうにもないな。
まとめていくつか作らせておくか。
むしろ、エミリアと同じように、アイツの衣装部屋も必要かもしれないな。
ついでだから、宝石類ももっと手配しておくか。
主催者との会話に区切りがついた時だった。
「ラドルフ様、お見事ですわ。わたくし感服いたしました」
声の方を見ると、あの令嬢だった。
だがキツい表情は失せて、なんだか毒気が無くなったような気がする。
「まさか帝都中の職人を集めて最高級の装いを与えるだなんて、こんなに愛されている女人を目のあたりにしたのも、話に聞き及んだのも初めてのことですわ。わたくしも真実の愛を探そうと思います。それでは、ごきげんよう」
スカートの端を持ってちょこんとお辞儀すると、手を前に揃えて首を項垂れ、女騎士を引き連れて去っていった。
なんだか、気味が悪いな。
勝負には勝ったという事のようだが……
ムキになってこんな事しちまったのが、なんだかよろしく無かったような気がしてきた。
そうして、ここに到着するまでのドタバタとは打って変わって、その後は平穏に時が過ぎていった。
イリス
ーーーー
ヤツも私と同じことを思っていたのか、しばらくの間、舞踏会の予定は入らなかった。
その代わりほぼ毎日のように、この間、無理矢理ドレスを作らされたブティックのご亭主が何人かの助手を連れて、これから作る服の打ち合わせにやってきた。
ヤツは仕事でいないから、私と奥様で相手をしていた訳だけど、よく分からないからお店にお任せていると、ある日大量に服が搬入されてきた。
エミリアお嬢様の衣装&アクセサリー部屋の隣の、最近お嬢様の騎士訓練用に作ったトレーニングルームの隣の、空いている客間に私の衣装部屋が作られることになった。
さらに、宝石がついたアクセサリー類も後日大量に届いて、その部屋も用意することになってしまった。
「2人とも、こんなにお洋服にお飾りもあっていいわねぇ。私も旦那様におねだりしてみようかしら……」
もしかして……この隣に奥様の衣装部屋が作られる日も近いかも。
客間って一体いくつあんの?
そんなこんなで舞踏会がいつ、どれだけあっても大丈夫! な状態になると、ヤツは次々に予定を入れてくるようになった。
相変わらず、女騎士友達は私とヤツをどうしても踊らせようとして、ダンスタイムの時間が削がれてばかりだったけど、次第に皆からのインタビュー記録もたまっていって、そろそろ皇城に提出しても良さそうな量になってきた。
だけど……前から危惧はしてたんだけど、ここで問題発生。
私の文才のなさ……皇城に提出する用の書式例を取り寄せてみたものの、項目が多過ぎて全くまとめられる気がしない。
うう、どうしよう……イリスよ、ここでドロップアウトするのか?
ーーーー
今日の夜会のお屋敷はちょっと分かりにくい場所にあって、馬車の御者が迷ったりなんかして、ダンスタイムももう始まってだいぶたった頃の到着だった。
また貴重な皆んなとの時間がこんな形で奪われるなんて……最悪。
『ラドルフ・エスニョーラ様とお連れ様のご到着ーー!』
お屋敷によって形式が色々あるみたいだけど、ここのお宅はゲストが到着するといちいち名前を読み上げるらしい。
だいぶ、遅刻もしてきてるのに恥ずかしいこと極まりない!!
皆さんの大注目を浴びながら、ヤツと腕を組んで歩くことになるなんて……
なんだか、見られてることは見られてるけど、そんなに驚いた顔しなくてもいいと思うんだけど。
でもダンスフロアまで、皆さん体を避けて道を作ってもらえるのは案外気持ちがいいものだったりする。
こうして1曲踊り終えて、女騎士仲間の皆どこかなーと思って探していると、いたいた!
しかも、皆こっち見てくれてるし。
さあ、今日こそは。
残りのダンスタイムは、この間と同じくらいしか残ってないけど、少しでも聞き出すからね。
と思ったのに、
「イリス……ホントにあんた愛されてるよ。このドレスだって急遽こしらえてくれたものなんでしょ? 時間がもったいないから、戻りなさい!」
結局、結局、今日のダンスタイムはずっとこいつと踊ってるハメになった。
しかも、どうしてこのドレスの事を知ってんの??
早く、たくさん舞踏会をこなせばいいと思ってたけど、そういう訳でもないのね……
ヤツがここまで見栄えにこだわるとは思わなかったけど、またギリギリになってこんな事をされたんじゃ、私の望みが叶わなくって損してしまう。
次はもう少し期間を空けてもらって、万全な準備をしてから出るようにしよう……
ラドルフ
ーーーーー
予期せぬトラブルはあったとはいえ、こんだけほぼ完璧に整えた状態で3曲踊れたんだ。
まあ上出来じゃないだろうか。
「ラドルフさん、今日はどうもお越しいただきまして。もう間に合われないと思いましたが、お噂のパートナー殿とどうしても踊りたかったんでしょうな。いやあ、本当にお綺麗な方で惚れ惚れしましたよ」
今回の夜会の主催者だ。
ふふん、俺の思惑通り、順調に物事が動いてるな。
これで、あの顔のキツい令嬢も文句を言えまい。
しかしなぁ、1度着せたモンは2度と着せられそうにもないな。
まとめていくつか作らせておくか。
むしろ、エミリアと同じように、アイツの衣装部屋も必要かもしれないな。
ついでだから、宝石類ももっと手配しておくか。
主催者との会話に区切りがついた時だった。
「ラドルフ様、お見事ですわ。わたくし感服いたしました」
声の方を見ると、あの令嬢だった。
だがキツい表情は失せて、なんだか毒気が無くなったような気がする。
「まさか帝都中の職人を集めて最高級の装いを与えるだなんて、こんなに愛されている女人を目のあたりにしたのも、話に聞き及んだのも初めてのことですわ。わたくしも真実の愛を探そうと思います。それでは、ごきげんよう」
スカートの端を持ってちょこんとお辞儀すると、手を前に揃えて首を項垂れ、女騎士を引き連れて去っていった。
なんだか、気味が悪いな。
勝負には勝ったという事のようだが……
ムキになってこんな事しちまったのが、なんだかよろしく無かったような気がしてきた。
そうして、ここに到着するまでのドタバタとは打って変わって、その後は平穏に時が過ぎていった。
イリス
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ヤツも私と同じことを思っていたのか、しばらくの間、舞踏会の予定は入らなかった。
その代わりほぼ毎日のように、この間、無理矢理ドレスを作らされたブティックのご亭主が何人かの助手を連れて、これから作る服の打ち合わせにやってきた。
ヤツは仕事でいないから、私と奥様で相手をしていた訳だけど、よく分からないからお店にお任せていると、ある日大量に服が搬入されてきた。
エミリアお嬢様の衣装&アクセサリー部屋の隣の、最近お嬢様の騎士訓練用に作ったトレーニングルームの隣の、空いている客間に私の衣装部屋が作られることになった。
さらに、宝石がついたアクセサリー類も後日大量に届いて、その部屋も用意することになってしまった。
「2人とも、こんなにお洋服にお飾りもあっていいわねぇ。私も旦那様におねだりしてみようかしら……」
もしかして……この隣に奥様の衣装部屋が作られる日も近いかも。
客間って一体いくつあんの?
そんなこんなで舞踏会がいつ、どれだけあっても大丈夫! な状態になると、ヤツは次々に予定を入れてくるようになった。
相変わらず、女騎士友達は私とヤツをどうしても踊らせようとして、ダンスタイムの時間が削がれてばかりだったけど、次第に皆からのインタビュー記録もたまっていって、そろそろ皇城に提出しても良さそうな量になってきた。
だけど……前から危惧はしてたんだけど、ここで問題発生。
私の文才のなさ……皇城に提出する用の書式例を取り寄せてみたものの、項目が多過ぎて全くまとめられる気がしない。
うう、どうしよう……イリスよ、ここでドロップアウトするのか?
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