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姉御ロザニアのパートナー探し
姉御ロザニアのパートナー探し1
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※ロザニア…サイドストーリー『侯爵子息ラドルフと女騎士イリス』で登場したイリスの友人。本編の時系列的には、「79.準備をこなすエミリアの巻」~「80.独身貴族と騎士のつどい」あたり。
テドロ公爵邸での『蛇のねぐらの間の死闘』から1年と少し。
まさか、あの鬼教官みたいだったクロリラ先輩が、昔、恋仲だった人とよりを戻したというだけで、あんなに優しくなって、仕事もプライベートも充実して幸せな日々を送るカリスマ的ミセスになるとは思わなかった。
『ロザニア、結婚だけが全てじゃないのよ。仕事も恋愛も色々経験して、あなたは、あなたらしく生きればいいんだからね』
これは、私がノートに書き溜めている『クロリラ先輩語録集』の中の一文だ。
先輩はたまにお茶に誘ってくれて、いろんな相談に乗ってくれたりしている。
イリスが早々に結婚して、他の子たちも彼氏ができたりして焦ってた私に向けて言ってくれた助言だ。
テドロ家で一緒に働いてた時は、こんな関係になるとは思ってもみなかったけど、女騎士としても、人生の先輩としても、彼女は本当に尊敬できる存在となった。
だけど……だけど……やっぱり私は結婚したい!!
正式に籍は入れなくても、先輩みたいな事実婚でもいい!
大きい貴族家の騎士になれば将来はずっと安泰だって事で、両親も学校の先生も喜んでたから、テドロ家に就職した。
だけど正直、あんなにガチガチのしきたりに縛られた中にいたら、恋愛もできないし、一生結婚できなくても仕方ないなって、諦めてた。
でも今は、違う。
自由な時間だってたくさん出来た。
この時間を自分のために使って、クロリラ先輩みたいに、お互いを尊重し合える、強くて優しい、最高のパートナーに巡り合いたい!!!
そういう思いを抱えてるのは、私だけではなかった。
大貴族のコルバルト侯爵家にいたルイーゼ、サルーシェ伯爵家に入ったウィーナも、同様だった。
私たちは所属してる女騎士・派遣事務所の方針に従って、持ち回りで数人のご令嬢の護衛を担当するようになっていたが、何とか休みを合わせて、ある会合を定期的に開いていた。
「ど、どうもっス。エスニョーラ騎士団所属で邸宅警護歴6年目のジャックって言いまっス。趣味は重量上げと、砲丸投げでっス。ろ、ロザニアさんのご趣味は?」
女騎士の働き方が変わってから、すぐの頃は、イリスに頼んで、知り合いの他貴族家の騎士団の騎士を集めてもらって、いわゆる合コンってやつをセッティングしていた。
イリスは結構、知り合いが多くて、就職先のエスニョーラ騎士団はもちろんだけど、学校時代の女友達が一般騎士として就職した他家門の騎士も紹介してくれたりした。
「ええっと、そうだなぁ……やっぱり基礎練習が1番かな。剣の素振りだったら、1日5,000回くらいは軽くできるし」
「おお! いいご趣味っスね! 自分も騎士団の朝練で毎日やってまっスけど、何回やっても無駄にはならないっスから、今度一緒にやりましょうっス!」
そんな風に誘ってくれる騎士がほとんどで、帝都の空き地とか、草むらとかで一緒にやるんだけど……
「イチ! ニ! サン! シ……」
特に何の会話もない、掛け声だけが延々と続いていく。
「はぁ はぁ、もう夕暮れっスね。いい汗かいったス! じゃあ、また訓練しましょうっス、ロザニアさん!」
もうデートじゃなくて、訓練って言っちゃってるし。
違う! 違うんだって! 私が求めてるのは。
これじゃあ騎士学校とか、派遣事務所でもやってる腕が衰えないための皆でやる鍛錬と何ら変わりないし……
もっと、
『違うよロザニア、持ち方はこうした方が扱いやすくなるんだよ』
とか言って、後ろから優しく腕を包み込んで、手に触れながら直接指導してくれるとか、
『真剣な君の横顔……素敵だ』
とか! なんかそういう、ちょっとした会話が私はしたいのぉ!!
だけど、それが騎士の本分なのか、そういうふうに教育されてしまったのか、訓練に入ると集中してしまうから、私も相手に話し掛けるなんて余裕は無くなってしまう。
いろんな騎士達と合コンやらデートという名の訓練を重ねてるうちに、彼らの中に相性がいい相手はいないんじゃないか、って思うようになっていた。
そんな中、騎士は騎士でもちょっと違う方々とお近づきになる機会があった。
ルイーゼとウィーナと訪れたのは、皇城の中にある、アトリエを思わせる一軒家だった。
ウィーナが以前お仕えしていたサルーシェ伯爵家のお嬢様からの情報で、彼女が企画してるワークショップに参加させてもらうことになった。
その一軒家の中に入ると、大きな丸テーブルが置いてあって、その上には色んな草や、野花が溢れるように置いてあった。
そして、その前にはガッチリとして大きい体なんだけど、腕まくりしている手も、顔も首も真っ白な肌をしていて、白に近い胸まで伸びた金髪を後ろで結わいた男性が3人。
見たことないくらい綺麗な顔立ちをした、三つ子みたいなその人達は、テーブルの上の植物を整えたり、水の入った洗面台を運んだり、すり鉢など容器をセッティングしたりしている。
「女騎士様たち、ようこそいらっしゃいましたわ。ワークショップのお時間まで少しありますから、本日使う資料をお読みになりながら、席でお待ちいただけるかしら」
今日の進行を務めるというサルーシェ伯爵家のお嬢様に促されて、私たちは丸テーブルの席に座った。
渡された資料には、
『ナディクス国の白騎士によるスキンケアワークショップ第1弾! 家庭でも手軽に綺麗になれる、万能ナチュラルウォーターの作り方』
と書かれている。
そう、これが私たち女騎士3人の新たな出会いだった。
*******************
つづく
テドロ公爵邸での『蛇のねぐらの間の死闘』から1年と少し。
まさか、あの鬼教官みたいだったクロリラ先輩が、昔、恋仲だった人とよりを戻したというだけで、あんなに優しくなって、仕事もプライベートも充実して幸せな日々を送るカリスマ的ミセスになるとは思わなかった。
『ロザニア、結婚だけが全てじゃないのよ。仕事も恋愛も色々経験して、あなたは、あなたらしく生きればいいんだからね』
これは、私がノートに書き溜めている『クロリラ先輩語録集』の中の一文だ。
先輩はたまにお茶に誘ってくれて、いろんな相談に乗ってくれたりしている。
イリスが早々に結婚して、他の子たちも彼氏ができたりして焦ってた私に向けて言ってくれた助言だ。
テドロ家で一緒に働いてた時は、こんな関係になるとは思ってもみなかったけど、女騎士としても、人生の先輩としても、彼女は本当に尊敬できる存在となった。
だけど……だけど……やっぱり私は結婚したい!!
正式に籍は入れなくても、先輩みたいな事実婚でもいい!
大きい貴族家の騎士になれば将来はずっと安泰だって事で、両親も学校の先生も喜んでたから、テドロ家に就職した。
だけど正直、あんなにガチガチのしきたりに縛られた中にいたら、恋愛もできないし、一生結婚できなくても仕方ないなって、諦めてた。
でも今は、違う。
自由な時間だってたくさん出来た。
この時間を自分のために使って、クロリラ先輩みたいに、お互いを尊重し合える、強くて優しい、最高のパートナーに巡り合いたい!!!
そういう思いを抱えてるのは、私だけではなかった。
大貴族のコルバルト侯爵家にいたルイーゼ、サルーシェ伯爵家に入ったウィーナも、同様だった。
私たちは所属してる女騎士・派遣事務所の方針に従って、持ち回りで数人のご令嬢の護衛を担当するようになっていたが、何とか休みを合わせて、ある会合を定期的に開いていた。
「ど、どうもっス。エスニョーラ騎士団所属で邸宅警護歴6年目のジャックって言いまっス。趣味は重量上げと、砲丸投げでっス。ろ、ロザニアさんのご趣味は?」
女騎士の働き方が変わってから、すぐの頃は、イリスに頼んで、知り合いの他貴族家の騎士団の騎士を集めてもらって、いわゆる合コンってやつをセッティングしていた。
イリスは結構、知り合いが多くて、就職先のエスニョーラ騎士団はもちろんだけど、学校時代の女友達が一般騎士として就職した他家門の騎士も紹介してくれたりした。
「ええっと、そうだなぁ……やっぱり基礎練習が1番かな。剣の素振りだったら、1日5,000回くらいは軽くできるし」
「おお! いいご趣味っスね! 自分も騎士団の朝練で毎日やってまっスけど、何回やっても無駄にはならないっスから、今度一緒にやりましょうっス!」
そんな風に誘ってくれる騎士がほとんどで、帝都の空き地とか、草むらとかで一緒にやるんだけど……
「イチ! ニ! サン! シ……」
特に何の会話もない、掛け声だけが延々と続いていく。
「はぁ はぁ、もう夕暮れっスね。いい汗かいったス! じゃあ、また訓練しましょうっス、ロザニアさん!」
もうデートじゃなくて、訓練って言っちゃってるし。
違う! 違うんだって! 私が求めてるのは。
これじゃあ騎士学校とか、派遣事務所でもやってる腕が衰えないための皆でやる鍛錬と何ら変わりないし……
もっと、
『違うよロザニア、持ち方はこうした方が扱いやすくなるんだよ』
とか言って、後ろから優しく腕を包み込んで、手に触れながら直接指導してくれるとか、
『真剣な君の横顔……素敵だ』
とか! なんかそういう、ちょっとした会話が私はしたいのぉ!!
だけど、それが騎士の本分なのか、そういうふうに教育されてしまったのか、訓練に入ると集中してしまうから、私も相手に話し掛けるなんて余裕は無くなってしまう。
いろんな騎士達と合コンやらデートという名の訓練を重ねてるうちに、彼らの中に相性がいい相手はいないんじゃないか、って思うようになっていた。
そんな中、騎士は騎士でもちょっと違う方々とお近づきになる機会があった。
ルイーゼとウィーナと訪れたのは、皇城の中にある、アトリエを思わせる一軒家だった。
ウィーナが以前お仕えしていたサルーシェ伯爵家のお嬢様からの情報で、彼女が企画してるワークショップに参加させてもらうことになった。
その一軒家の中に入ると、大きな丸テーブルが置いてあって、その上には色んな草や、野花が溢れるように置いてあった。
そして、その前にはガッチリとして大きい体なんだけど、腕まくりしている手も、顔も首も真っ白な肌をしていて、白に近い胸まで伸びた金髪を後ろで結わいた男性が3人。
見たことないくらい綺麗な顔立ちをした、三つ子みたいなその人達は、テーブルの上の植物を整えたり、水の入った洗面台を運んだり、すり鉢など容器をセッティングしたりしている。
「女騎士様たち、ようこそいらっしゃいましたわ。ワークショップのお時間まで少しありますから、本日使う資料をお読みになりながら、席でお待ちいただけるかしら」
今日の進行を務めるというサルーシェ伯爵家のお嬢様に促されて、私たちは丸テーブルの席に座った。
渡された資料には、
『ナディクス国の白騎士によるスキンケアワークショップ第1弾! 家庭でも手軽に綺麗になれる、万能ナチュラルウォーターの作り方』
と書かれている。
そう、これが私たち女騎士3人の新たな出会いだった。
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つづく
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