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姫の新たな好物(81話 割愛エピソード)
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※本編「81.プリンセスのお誕生日」に入れようとしたけれど、本筋に関係ないので割愛したエピソードです。(エミリア視点)
帝都を混乱の渦に陥れていた“アレ”こと、おイモの猛威はだいぶ和らいできて、皇城をはじめ、各家庭でも食卓のお料理に占める割合は減ってきていた。
だけど私は、姫と一緒にいるだけで相当なストレスに晒されているので、ヘイゼル邸でもらってきたポテトのチップスを貪り食うってことが最大の癒しと化していた。
その日も、姫がお部屋のおトイレに行っている間にどうしても一口食べたくなってしまって、クローゼットの奥に隠してあるそれに手を伸ばしてしまったんだけど……
「女騎士、それはなんなの?」
思いの他、ご用を足すのが早かった姫にその姿が見つかってしまったのだ!
「あっ、いえ、あのこれは……」
もう今さら何をしても遅すぎるのだが、私はチップス達が入った袋を押し込めてクローゼットの扉を閉めた。
姫はツカツカとこちらに寄ってきて、私を片手でクローゼットの前からどかすと、扉を勢いよく開けて、すぐさま大きい袋を引っ張り出してきた。
どうしよう……職務中におやつを貪ってたのに加えて、姫の大嫌いなおイモをお部屋に隠してたなんて知れたら、どんな罰が下ってしまうか……
私は女騎士としての契約なんか放棄しちゃうくらいの覚悟で、すぐに部屋の出入り口から逃げ出す体制を整えた。
そしてついに、閉じていた袋をバッと姫は開けたのだった。
絶対に、いつもの甲高い声で怒り狂った言葉を発すると思ったのに、姫は黙ったままなんと……
その袋の中に手を伸ばしたのだ!
パリッ ザクッ ザクッ……
チップスが食される音が部屋に響いている。
「……女騎士、これはなんて食べ物なの?」
そう言って、姫は袋に伸ばす手をしばらくの間、止めることができなくなってしまったのだった。
一般庶民の食べ物であるポテトのチップスを、高貴な身分の姫はこれまで見たこともなかったので、彼女はすっかりその美味しさの虜になってしまったらしい。
しかも、その正体が大嫌いなおイモだということにも気づいていない。
私の大好物でもあるこのおやつは、姫の部屋に常備されることになり、こんなに美味しいものを知らせた褒美として、私も好きな時に食べても良いっていうお許しを頂いたのだった。
帝都を混乱の渦に陥れていた“アレ”こと、おイモの猛威はだいぶ和らいできて、皇城をはじめ、各家庭でも食卓のお料理に占める割合は減ってきていた。
だけど私は、姫と一緒にいるだけで相当なストレスに晒されているので、ヘイゼル邸でもらってきたポテトのチップスを貪り食うってことが最大の癒しと化していた。
その日も、姫がお部屋のおトイレに行っている間にどうしても一口食べたくなってしまって、クローゼットの奥に隠してあるそれに手を伸ばしてしまったんだけど……
「女騎士、それはなんなの?」
思いの他、ご用を足すのが早かった姫にその姿が見つかってしまったのだ!
「あっ、いえ、あのこれは……」
もう今さら何をしても遅すぎるのだが、私はチップス達が入った袋を押し込めてクローゼットの扉を閉めた。
姫はツカツカとこちらに寄ってきて、私を片手でクローゼットの前からどかすと、扉を勢いよく開けて、すぐさま大きい袋を引っ張り出してきた。
どうしよう……職務中におやつを貪ってたのに加えて、姫の大嫌いなおイモをお部屋に隠してたなんて知れたら、どんな罰が下ってしまうか……
私は女騎士としての契約なんか放棄しちゃうくらいの覚悟で、すぐに部屋の出入り口から逃げ出す体制を整えた。
そしてついに、閉じていた袋をバッと姫は開けたのだった。
絶対に、いつもの甲高い声で怒り狂った言葉を発すると思ったのに、姫は黙ったままなんと……
その袋の中に手を伸ばしたのだ!
パリッ ザクッ ザクッ……
チップスが食される音が部屋に響いている。
「……女騎士、これはなんて食べ物なの?」
そう言って、姫は袋に伸ばす手をしばらくの間、止めることができなくなってしまったのだった。
一般庶民の食べ物であるポテトのチップスを、高貴な身分の姫はこれまで見たこともなかったので、彼女はすっかりその美味しさの虜になってしまったらしい。
しかも、その正体が大嫌いなおイモだということにも気づいていない。
私の大好物でもあるこのおやつは、姫の部屋に常備されることになり、こんなに美味しいものを知らせた褒美として、私も好きな時に食べても良いっていうお許しを頂いたのだった。
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