霊感度MAXなボクでも普通の恋愛をしてみたい!

安芸 瑞葉

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4 良き先輩

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 そっ、と手を差し伸べる彼女に気づけばボクは、そのてのひらつかんでいた。
 とううございます、と思わず出る謝意の言葉。
 手を取ると彼女こと、歌崎うたざきまゆは薄ら微笑びしょうを浮かべていた。
 途端、ボクの背後に居たような気がする陽菜瀬の”気”もすっ、と身を隠したような跫然きょうぜん感取かんしゅする。

 ボクをすくい取った繭さんは間髪入かんぱついれずにボクへと問う。

「何だか少し急いでいたみたいだけど、平気? 間に合いそう?」

 繭さんにはそう見られていたらしい。
 現状、顔見知りの中では一番背丈が高いと思う女子だ。
 少しばかり腰を屈めてボクのかおを覗き込む。
 濡羽色ぬればいろの、前髪へ水色のヘアピンを留めたショートカットが悠然ゆうぜん靡然びぜんする。

 本当に背が高い。
 そこは流石、時期バスケ部部長とささやかれる事はある。
 繭さんは美貌びぼうのみならず、その腕も抜群ばつぐんに桁違いだ。
 シュートの度に何処か、芸術品をも彷彿ほうふつさせるうるわしさがある。
 ちなみに繭さんはボクよりも一つ上の先輩だったりもする。
 だから良く時折、相談に乗ってもらう事も屡々しばしばあって、先輩にはとても頭が上がらない。

 今の先輩は丁度、体操服の姿。
 そうすると次の授業は体育だったりするのだろうか?
 それとも体育が今し方終えたばかりだろうか?
 どっちにしろ多忙たぼうな先輩へ迷惑をかけるワケにはいかない。
 咄嗟とっさにボクはきびすを反して言う。

「だ、大丈夫です。すみません、お手数をおかけしました!」
「あ、ああ達者でな。余り無理はするなよ」
「は、はい! ご忠告有難うございます、それでは!」

 と言ってボクは只管ひたすらに来た道を帰ってゆく。
 息をも無かった。
 来た道を右折すればそこには雄偉ゆういと陽菜瀬の姿が。

 陽菜瀬は言う。

「浮かれてるでしょ? 尚君。今も、ついさっきも」
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