217 / 254
№217 幽霊の傘
しおりを挟む
――湯川さんは10年ほど前、小学校の事務員をしていた。
毎年卒業していく子供がいて、同時に何かしら置いていっていました。それは寄贈だったり忘れ物だったり、誰の物かわかっていたり、わからなかったり。
傘なんてほぼ取りに来ません。忘れているのか、いらないのかもわかりません。壊れていなければ預かっていました。それは傘を忘れたり、突然の雨に困っている子に貸し出されていました。
ある日登校中に傘が壊れた女の子が傘を借りに来ました。適当に忘れ物の傘を渡したら、その子がちょっと渋りました。どうしたのか聞くと
「赤と黄色の傘は幽霊の傘なんだよ」
と言い出したんです。当時そういう怪談が流行っていたそうなんです。詳細は知りませんが
「雨の日に赤と黄色の傘をさしている人は幽霊だからすれ違ったり、追い越してはいけない。見つけたらすぐに道を変えるべし」
と生徒の間で噂が出回っていたとのことです。
私は本気にはしませんでしたが、本人が嫌ならと他の傘を貸しました。
その後何度か傘を借りに来る子はいましたが、皆、赤と黄色の傘は嫌がりました。だからずっと放置されていたんですが、ある日先生が一人、傘がないからとその赤と黄色の傘を持って帰りました。その先生が噂を知っていたのか知らなかったのかはわかりません。子供用の傘を気にせず借りていくくらいですから、知っていても関係なかったかもしれません。
その先生は帰り道で電車にはねられて亡くなりました。遮断機が下りた踏切に侵入したのを数人が目撃していたので自殺と処理されました。
生徒はショックを受けている子も多かったんですが、同時に
「先生は胴体だけ這って家に帰った」
「踏切内で手を振っている先生の幽霊を見た」
「バラバラになって見つかっていない体の一部を先生の幽霊が探している」
と言った噂も流れました。
事件から半月ほど過ぎたころ、忘れ物の傘の中に赤と黄色の傘を見つけました。あの先生が持って帰ったはずの傘です。その傘は事務員が管理していますし、新しい物が増えたらわかります。他の事務員も気付いて顔が青くなりました。誰もいつ増えたか知らない。
もしかして似た傘かも、と私は傘を開きました。そのときポトッと傘の中から何かが落ちてきました。その場に私含め3人いましたが、誰もすぐにそれが何かわかりませんでした。そして一人が気付き「指」と叫びました。それを聞いた瞬間私ともう一人も絶叫しました。
色は変わっていましたが、それは人差し指でした。すぐに事務長に言い、校長まで話が行きました。……これでこの話は終わりです。あの指が死んだ先生の物かはわかりません。学校は隠蔽体質なんです。指は校長が捨ててしまって無かったことにされました。傘は私たちが捨てました。
――それ以来死んだ先生や傘の幽霊の怪談はパタリと聞かなくなったらしい。
毎年卒業していく子供がいて、同時に何かしら置いていっていました。それは寄贈だったり忘れ物だったり、誰の物かわかっていたり、わからなかったり。
傘なんてほぼ取りに来ません。忘れているのか、いらないのかもわかりません。壊れていなければ預かっていました。それは傘を忘れたり、突然の雨に困っている子に貸し出されていました。
ある日登校中に傘が壊れた女の子が傘を借りに来ました。適当に忘れ物の傘を渡したら、その子がちょっと渋りました。どうしたのか聞くと
「赤と黄色の傘は幽霊の傘なんだよ」
と言い出したんです。当時そういう怪談が流行っていたそうなんです。詳細は知りませんが
「雨の日に赤と黄色の傘をさしている人は幽霊だからすれ違ったり、追い越してはいけない。見つけたらすぐに道を変えるべし」
と生徒の間で噂が出回っていたとのことです。
私は本気にはしませんでしたが、本人が嫌ならと他の傘を貸しました。
その後何度か傘を借りに来る子はいましたが、皆、赤と黄色の傘は嫌がりました。だからずっと放置されていたんですが、ある日先生が一人、傘がないからとその赤と黄色の傘を持って帰りました。その先生が噂を知っていたのか知らなかったのかはわかりません。子供用の傘を気にせず借りていくくらいですから、知っていても関係なかったかもしれません。
その先生は帰り道で電車にはねられて亡くなりました。遮断機が下りた踏切に侵入したのを数人が目撃していたので自殺と処理されました。
生徒はショックを受けている子も多かったんですが、同時に
「先生は胴体だけ這って家に帰った」
「踏切内で手を振っている先生の幽霊を見た」
「バラバラになって見つかっていない体の一部を先生の幽霊が探している」
と言った噂も流れました。
事件から半月ほど過ぎたころ、忘れ物の傘の中に赤と黄色の傘を見つけました。あの先生が持って帰ったはずの傘です。その傘は事務員が管理していますし、新しい物が増えたらわかります。他の事務員も気付いて顔が青くなりました。誰もいつ増えたか知らない。
もしかして似た傘かも、と私は傘を開きました。そのときポトッと傘の中から何かが落ちてきました。その場に私含め3人いましたが、誰もすぐにそれが何かわかりませんでした。そして一人が気付き「指」と叫びました。それを聞いた瞬間私ともう一人も絶叫しました。
色は変わっていましたが、それは人差し指でした。すぐに事務長に言い、校長まで話が行きました。……これでこの話は終わりです。あの指が死んだ先生の物かはわかりません。学校は隠蔽体質なんです。指は校長が捨ててしまって無かったことにされました。傘は私たちが捨てました。
――それ以来死んだ先生や傘の幽霊の怪談はパタリと聞かなくなったらしい。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
追っかけ
山吹
ホラー
小説を書いてみよう!という流れになって友達にどんなジャンルにしたらいいか聞いたらホラーがいいと言われたので生まれた作品です。ご愛読ありがとうございました。先生の次回作にご期待ください。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる