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№207 イマジナリーフレンド
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一人遊びが得意な子どもでした。親は仕事でいつも家に居なくて、世話をしてくれる人はいましたが、コロコロ替わって懐くようなことはなかったと思います。ずっと一人だった記憶があります。
寂しくて、友達が欲しかったので頭の中で友達を作っていました。友達と二人並んだ絵を描いたり、おままごとをするときに「あなたは子ども役ね」なんて話しかけたり。おやつを食べるときも2人分用意してもらって、一緒に食べているふりをしました。イマジナリーフレンドと周りの大人は思っていたようですが、私は自分の想像だと判っていました。
小学校に上がる前くらいに、それをするのをやめました。きっかけはおやつの時間。その日も、もう一人分のショートケーキを用意して「一緒に食べようね」と向かい合わせでテーブルに座るふりをしました。その時、ケーキがパタンと倒れ、フォークがその場でくるりと回って元の位置に戻りました。動きはとてもゆっくりで10秒くらいだったと思います。私はそれから怖くなって想像の友達と話すのをやめました。直感的にこれはやってはいけないことだった、と悟ったんです。
不思議なことはそれきりで、すぐに小学校に上がって本物の友達も出来たので忙しくて、その時のことは忘れていました。
今、私は結婚し、夫と2人で暮らしています。私はほぼ家に居て家事をしています。夫の仕事は残業があまりないので夕食も一緒に食べていました。
でも新婚1ヶ月目くらいで急に残業になると連絡がありました。すでにほとんど料理が出来ている時間だったので、とりあえず2人分盛り付けて、夫の分だけラップをし、私は先に食べることにしました。いつも向かい合わせで食べているので、ちょっと寂しいなぁと思って食べていると、夫のおかずに掛けているラップが勝手にピーッと外れ、お箸がカタンと床に落ちました。私は子どもの頃の出来事を思い出すと同時にぞーっと寒気がしました。そして考えるより先に夫のおかずを生ゴミに捨てました。ついでに私の食べかけも。夫には「味付けに失敗した」と嘘をついて2人で買い置きのカップ麺を食べました。
それから家の中に何か居るような気がしてしょうがありません。いえ、たぶん私に憑いていたんですよね、子どもの頃から。気づかなかっただけで。夕飯は夫の連絡を待ってから仕上げて、何時になっても一緒に食べるようにしました。夫は嬉しいようで、同僚や友達に「良い妻」と自慢しているようです。本当は何かを家に入れてしまっているなんて、言えません。
――日枝さんが帰った後、聞き取りしたメモを見返していたら、日枝さんに出した湯飲みがカタカタと二回揺れ、半分に割れた。新品の湯飲みだった。
寂しくて、友達が欲しかったので頭の中で友達を作っていました。友達と二人並んだ絵を描いたり、おままごとをするときに「あなたは子ども役ね」なんて話しかけたり。おやつを食べるときも2人分用意してもらって、一緒に食べているふりをしました。イマジナリーフレンドと周りの大人は思っていたようですが、私は自分の想像だと判っていました。
小学校に上がる前くらいに、それをするのをやめました。きっかけはおやつの時間。その日も、もう一人分のショートケーキを用意して「一緒に食べようね」と向かい合わせでテーブルに座るふりをしました。その時、ケーキがパタンと倒れ、フォークがその場でくるりと回って元の位置に戻りました。動きはとてもゆっくりで10秒くらいだったと思います。私はそれから怖くなって想像の友達と話すのをやめました。直感的にこれはやってはいけないことだった、と悟ったんです。
不思議なことはそれきりで、すぐに小学校に上がって本物の友達も出来たので忙しくて、その時のことは忘れていました。
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それから家の中に何か居るような気がしてしょうがありません。いえ、たぶん私に憑いていたんですよね、子どもの頃から。気づかなかっただけで。夕飯は夫の連絡を待ってから仕上げて、何時になっても一緒に食べるようにしました。夫は嬉しいようで、同僚や友達に「良い妻」と自慢しているようです。本当は何かを家に入れてしまっているなんて、言えません。
――日枝さんが帰った後、聞き取りしたメモを見返していたら、日枝さんに出した湯飲みがカタカタと二回揺れ、半分に割れた。新品の湯飲みだった。
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