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№206 幻の池
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小学校の時、親の仕事の都合で引っ越しをしました。その転校先での話です。
転校して、それまで普通に友達がいたのに、どうやって友達を作れば良いのか判らなくなっていました。同じクラスになった子たちは優しい子ばかりで話しかけてくれたりするんですが、私が心を開くことが出来なくて・・・・・・。
昼休みは1人で校舎の外をぶらぶらしていました。花壇の花を見たり、体育館裏のじめじめした不気味な場所を探検したり。
転校してから1ヶ月くらい経ったとき、ウサギ小屋の裏に池を見つけました。ウサギは何度か見に来ていたのに、それまで池を見たことがなくて驚きました。ですがその前日に大雨があったので、それで涸れていた池が復活したんだろうと、覗き込みました。
それがとても透き通って綺麗だったんです。水の底に青い石が敷き詰められていて、水面がキラキラ光っていて、私はうっとりと見入ってしまいました。底に黒い魚がスーッと泳いできました。鮒かなと思ったんですが、どうもおかしい。形がはっきりしない。水が揺れているのではなく、そもそも輪郭が不明確。凝視していたら、どうしてそう見えるのか判りました。それは影だったんです。影だけが底を滑ってきたんです。でも本体が水の中にいない。じゃあ、空中にいると言うことになります。私は不思議に思いながらもそのまま上を見上げました。勿論空気中に泳いでいる魚はいません。その時、池を覗くために地面に手をついていたんですが、手首を強い力で引っ張られたんです。それが何か見るまでに私は池に引きずり込まれました。数センチの深さかと思っていたのが、ずっと深く、足が付かずに私は焦りました。必死で池の縁に生えている草に手を伸ばし、自ら這い上がりました。
少し水を飲んでしまって、げほげほと咳き込んでいると、クラスメイトが数人通りかかり私を見つけました。彼らはとても心配してくれて、背中をさすってくれました。
「どうしたの? ずぶ濡れじゃん」
「池に落ちて・・・・・・」
「池? プールじゃなくて? 池なんてないよ」
この池だよ、と私は振り返って指さそうとしました。しかし、そこにはいくつか木が植えてあるだけで池なんかありませんでした。私は急に怖くなって泣き出して、クラスメイトを困らせてしまいました。そんなことがあっても、彼らは優しく、私も心を開くようになりました。変なきっかけでしたが、やっとなじめるようになってきました。
最近同窓会があって、そのとき助けてくれた友達の一人が、こそっと教えてくれたんです。
「ウサギ小屋の裏で、最近で溺死した生徒がいるよ」って。調べたら確かに子どもが亡くなったニュースが地方紙に載っていました。事件と事故の両方で調べていると締めくくられていましたが、続報はありません。
――判沢さんの母校は近く廃校になる予定らしい。
転校して、それまで普通に友達がいたのに、どうやって友達を作れば良いのか判らなくなっていました。同じクラスになった子たちは優しい子ばかりで話しかけてくれたりするんですが、私が心を開くことが出来なくて・・・・・・。
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少し水を飲んでしまって、げほげほと咳き込んでいると、クラスメイトが数人通りかかり私を見つけました。彼らはとても心配してくれて、背中をさすってくれました。
「どうしたの? ずぶ濡れじゃん」
「池に落ちて・・・・・・」
「池? プールじゃなくて? 池なんてないよ」
この池だよ、と私は振り返って指さそうとしました。しかし、そこにはいくつか木が植えてあるだけで池なんかありませんでした。私は急に怖くなって泣き出して、クラスメイトを困らせてしまいました。そんなことがあっても、彼らは優しく、私も心を開くようになりました。変なきっかけでしたが、やっとなじめるようになってきました。
最近同窓会があって、そのとき助けてくれた友達の一人が、こそっと教えてくれたんです。
「ウサギ小屋の裏で、最近で溺死した生徒がいるよ」って。調べたら確かに子どもが亡くなったニュースが地方紙に載っていました。事件と事故の両方で調べていると締めくくられていましたが、続報はありません。
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