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№200 霊感診断
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怪談を集めているんです。SNSで募集するんです。「怪談募集。直接会ってお話ししませんか」って。本やネットで読む怪談は嫌いじゃないんですけど、やっぱり生の声で聞く怪談は格別ですよね。
その人は一度会って話を聞いた人から、紹介された人でした。SNSで個人が募集しているとなかなか人は集まりません。でも年に数件、物好きな人が声をかけてくれてお会いして話を聞くことが出来ます。そしてたまに、そういう人が怖い体験をした人をまた紹介してくれるんです。
その紹介してくれた人はとても息が合って、お会いしたのは一度だけでしたが、SNSではその後も仲良くしていました。だから「怪談話したいって人いるよ」と言われて何も考えずに会ってしまったんです。
待ち合わせの喫茶店にいたのは先に聞いていたとおりの女性でした。怪談をするにしてはとても嬉しそう、というか目が爛々としていました。声をかけ、軽く自己紹介をし合って机を挟んで正面に座りました。
「霊感があるかないか判定する怪談ってあるじゃないですか。あれの進化版みたいな話があるんです」
彼女は
「手を出してください」
と僕の手を取り、目をつむるように促してきました。そして
「深い海の底に行くイメージをしてください」
変な宗教に勧誘されているような警戒感が生まれましたが、まだ逃げれると僕は言わたようにしました。しかしそれ以上彼女は何も言いません。僕はただただ頭の中で深海に落ちていきました。いつまで続くんだろう。そういえば「底に行く」って言ってたな。そう考えたときゾワッと恐怖が襲ってきて僕は思わず目を開けてしまったんです。耳元でギーッとさびた鉄の扉が開くように不快な音がして思わず顔をしかめました。正面の彼女はじっと僕の顔をのぞき込んでいます。
「すみません」
と思わず謝っていました。
「いいんですよ」
と言った彼女の声が二重に聞こえました。あれっと耳を押さえると
「ああ、耳だけですか」
と彼女はなぜかにやっと笑ったんです。
それから僕には今までに聞こえなかった音や声が聞こえるようになりました。それは世界が動いている音だと彼女は言っていました。
例えば冷蔵庫。開け閉めしなくても機能している限りかすかな音はしています。人が動けばどれほど気をつけても衣擦れはします。存在する物、起こる現象には必ず音がある。僕が聞こえるようになったのは本来人が聞くはずのない音、人と人の関わる音、因果応報の音、人の流れの均衡が崩れそうな音。それを使ったら、怪談が本当にあったことなのか、作り物なのかわかるようになったんです。嘘の話をするとギギギとさびたような音がするんです。
その代わり、なのかな、体に異変が生まれました。発覚したのは普通に健康診断です。僕の内臓、現在進行形で一つに固まろうと体の中で集まってきているんです。ええ、心臓も。でも不思議とすべてちゃんと機能しているんですよね。
彼女も、彼女を紹介してくれた彼も今はもう連絡が取れません。何かの実験台にされたのかなと思います。「耳だけ」っていわれたので期待した結果にならなかったんでしょうね。
あなたも怪談を集めるなら気をつけた方が良いですよ。これは思った以上に危険なことのようです。
――時田さんはそれでも怪談を集め続けているらしい。
その人は一度会って話を聞いた人から、紹介された人でした。SNSで個人が募集しているとなかなか人は集まりません。でも年に数件、物好きな人が声をかけてくれてお会いして話を聞くことが出来ます。そしてたまに、そういう人が怖い体験をした人をまた紹介してくれるんです。
その紹介してくれた人はとても息が合って、お会いしたのは一度だけでしたが、SNSではその後も仲良くしていました。だから「怪談話したいって人いるよ」と言われて何も考えずに会ってしまったんです。
待ち合わせの喫茶店にいたのは先に聞いていたとおりの女性でした。怪談をするにしてはとても嬉しそう、というか目が爛々としていました。声をかけ、軽く自己紹介をし合って机を挟んで正面に座りました。
「霊感があるかないか判定する怪談ってあるじゃないですか。あれの進化版みたいな話があるんです」
彼女は
「手を出してください」
と僕の手を取り、目をつむるように促してきました。そして
「深い海の底に行くイメージをしてください」
変な宗教に勧誘されているような警戒感が生まれましたが、まだ逃げれると僕は言わたようにしました。しかしそれ以上彼女は何も言いません。僕はただただ頭の中で深海に落ちていきました。いつまで続くんだろう。そういえば「底に行く」って言ってたな。そう考えたときゾワッと恐怖が襲ってきて僕は思わず目を開けてしまったんです。耳元でギーッとさびた鉄の扉が開くように不快な音がして思わず顔をしかめました。正面の彼女はじっと僕の顔をのぞき込んでいます。
「すみません」
と思わず謝っていました。
「いいんですよ」
と言った彼女の声が二重に聞こえました。あれっと耳を押さえると
「ああ、耳だけですか」
と彼女はなぜかにやっと笑ったんです。
それから僕には今までに聞こえなかった音や声が聞こえるようになりました。それは世界が動いている音だと彼女は言っていました。
例えば冷蔵庫。開け閉めしなくても機能している限りかすかな音はしています。人が動けばどれほど気をつけても衣擦れはします。存在する物、起こる現象には必ず音がある。僕が聞こえるようになったのは本来人が聞くはずのない音、人と人の関わる音、因果応報の音、人の流れの均衡が崩れそうな音。それを使ったら、怪談が本当にあったことなのか、作り物なのかわかるようになったんです。嘘の話をするとギギギとさびたような音がするんです。
その代わり、なのかな、体に異変が生まれました。発覚したのは普通に健康診断です。僕の内臓、現在進行形で一つに固まろうと体の中で集まってきているんです。ええ、心臓も。でも不思議とすべてちゃんと機能しているんですよね。
彼女も、彼女を紹介してくれた彼も今はもう連絡が取れません。何かの実験台にされたのかなと思います。「耳だけ」っていわれたので期待した結果にならなかったんでしょうね。
あなたも怪談を集めるなら気をつけた方が良いですよ。これは思った以上に危険なことのようです。
――時田さんはそれでも怪談を集め続けているらしい。
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