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№192 瓜二つ
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中学生の時にある男の子に好かれていました。告白された訳ではないのですが、常に席が近くだと喜んだり、同じ持ち物をわざわざ買ってきたり、遠足とかで一緒に行動しようとしたりと、かなりあからさまでした。正直気持ち悪かったんですよね。話しもつまらなかったし、私がつまらなそうにしていても一人で楽しそうだし。友達もできるだけ私と新村(その男子の名前です)を引き離そうとしてくれました。それでもちょっと離れたところからニヤニヤ笑ってみてるから、卒業する頃にはすっかり嫌いになっていました。
高校は別々になり、それから同窓会で会うこともなく、それどころか新村がどうしているのか知っている同級生はいませんでした。
大学生になって家庭教師のバイトを始めました。私は基本的に小学生を担当していたんですが、会社から中学生から指名がかかったと言われました。私のことは多分生徒の親経由で知ったにしても、中学生に教えて欲しいとはどういうことだろう。よっぽど勉強できないんだな、くらいしか想像できませんでした。
初日に指定された家に行くと、げっそりした女性が迎えてくれました。私が挨拶をしても興味なさそうに、勝手に子供の部屋に行ってくださいって感じでした。違和感はありましたが言われたとおりに部屋に行くと男の子が勉強机に座ってこちらを振り返っていました。その瞬間ぞわっと鳥肌が立ったんです。生理的不快感というか、直感というか。
「先生、よろしくお願いします」
と彼は立ち上がって私のそばに立ちました。真正面で彼の顔を見たとき、それまですっかり忘れていた新村を思い出したんです。そう、彼は記憶の中の新村と瓜二つでした。私は何も言えずにそのまま逃げ帰りました。会社には生徒の性別が違ってたと報告しました。規則で中学生以上は同性した担当しないと決められていたので。社員の人も驚いて、すぐに担当を外してくれました。新村の子だとしたら大きすぎるし、親戚か、どちらにしてもだまし討ちで家に招くあたり新村が関係していることが濃厚です。とにかく私は同級生に相談して新村を牽制しようとしました。でもやっぱり本人は行方不明でした。
それから私は大学を卒業し中学教師になりました。そして1年生の担任をはじめて受け持った年、新村が入学してきたんです。それから私が1年の担任を持つたびに現れるんです。入学してくるんです。
本当です。信じてください。
中学校をかえても絶対に現れます。誰も気づかないんです。同級生ですら「確かに似てるけど」って感じで最近ではあまりまともに話も聞いてくれません。今、子供を見るのも怖いんです。
――篠田さんが帰った後、少年が一人、訊ねてきた。ニヤニヤ笑いながら篠田さんの声が入ったボイスレコーダーを掴んで出て行った。止める間もなかった。しかしバックアップを取っていたためこうしてレポートすることがかなった。彼がこれに気づいた場合どうするかは分からないが。
高校は別々になり、それから同窓会で会うこともなく、それどころか新村がどうしているのか知っている同級生はいませんでした。
大学生になって家庭教師のバイトを始めました。私は基本的に小学生を担当していたんですが、会社から中学生から指名がかかったと言われました。私のことは多分生徒の親経由で知ったにしても、中学生に教えて欲しいとはどういうことだろう。よっぽど勉強できないんだな、くらいしか想像できませんでした。
初日に指定された家に行くと、げっそりした女性が迎えてくれました。私が挨拶をしても興味なさそうに、勝手に子供の部屋に行ってくださいって感じでした。違和感はありましたが言われたとおりに部屋に行くと男の子が勉強机に座ってこちらを振り返っていました。その瞬間ぞわっと鳥肌が立ったんです。生理的不快感というか、直感というか。
「先生、よろしくお願いします」
と彼は立ち上がって私のそばに立ちました。真正面で彼の顔を見たとき、それまですっかり忘れていた新村を思い出したんです。そう、彼は記憶の中の新村と瓜二つでした。私は何も言えずにそのまま逃げ帰りました。会社には生徒の性別が違ってたと報告しました。規則で中学生以上は同性した担当しないと決められていたので。社員の人も驚いて、すぐに担当を外してくれました。新村の子だとしたら大きすぎるし、親戚か、どちらにしてもだまし討ちで家に招くあたり新村が関係していることが濃厚です。とにかく私は同級生に相談して新村を牽制しようとしました。でもやっぱり本人は行方不明でした。
それから私は大学を卒業し中学教師になりました。そして1年生の担任をはじめて受け持った年、新村が入学してきたんです。それから私が1年の担任を持つたびに現れるんです。入学してくるんです。
本当です。信じてください。
中学校をかえても絶対に現れます。誰も気づかないんです。同級生ですら「確かに似てるけど」って感じで最近ではあまりまともに話も聞いてくれません。今、子供を見るのも怖いんです。
――篠田さんが帰った後、少年が一人、訊ねてきた。ニヤニヤ笑いながら篠田さんの声が入ったボイスレコーダーを掴んで出て行った。止める間もなかった。しかしバックアップを取っていたためこうしてレポートすることがかなった。彼がこれに気づいた場合どうするかは分からないが。
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