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№190 しゃべる猫
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結婚してすぐに友人から子猫を譲り受けました。この猫がしゃべるんです。
ある日、事前連絡なしに姑が家に来ました。家事が終わってのんびりしている時間なので、慌ててお茶菓子を出したりしていると、うちの猫がテーブルに飛び乗ってきたんです。躾でテーブルの上には乗らないようにしていたので驚きました。叱っても平気な顔で姑の横に座ってしまい、姑も少し嫌な顔をしてお茶をすすりました。
その時
「子供も作らず畜生なんて飼って、ああ気にくわない」
と声がしたんです。姑はお茶を吹き出し私も持っていた皿を取り落としそうになりました。私たちはどちらも何も言ってませんが、どちらも聞こえていました。それは猫から聞こえていたんです。姑は真っ青になってすぐに出て行きました。
たぶん姑の心の声だったんでしょうね。
次にしゃべったのがつい最近です。あの後に生まれた娘は今は小学6年生です。いわゆる反抗期で全然親の言うことを聞きません。私自身にも覚えがあったので態度が素っ気なくなってもあまり気にしなかったんです。
居間で娘がテレビを見、私は内職をしていたときです。猫が娘の足にすり寄っていきました。昔は可愛がっていたんですが、最近娘はあまり猫にかまわず、猫も娘に懐かなくなったので、珍しいなと思って見ていたんです。そしたら猫は娘の横にすわりしゃべりました。
「明日のパパからいくらもえらえるかなぁ。友達連れて行くし、10万くらい行けるかなぁ」
私はすぐには意味が分かりませんでした。娘の方は悲鳴を上げ、転がるように自室に入っていきました。猫はすまし顔で座ったままです。ちなみに娘は夫のことを「お父さん」と呼びます。じゃあ「パパ」って誰? と考えたところで血の気が引くのを感じました。
すぐに娘の部屋に行きましたが、鍵を掛けていて出てきてくれませんでした。その晩、夫にこのことを話しました。夫は半信半疑で「とにかく明日娘に話を聞こう」と翌日まで保留になりました。
早朝、家の玄関が開く音がしました。不安になり娘の部屋に行くと娘が居ません。家出だと思ってその日は夫も仕事を休んで探しました。もちろん学校にも連絡しましたが、登校してませんでした。昼過ぎにいったん家に戻り、二人で頭を抱えました。昨晩のこともありますし、やっぱり警察に・・・・・・と言うところで娘が帰ってきたんです。安心や怒りなどいろんな感情がありましたが、私たちが何か言う前に娘が叫びました。「なんでいるの?!」って。娘の視線の先には、猫が居ました。
猫は朝からずっと家に居ました。それは間違いありません。私が世話をしていたんで。
娘は援助交際が猫のせいでばれると思い、猫を捨てに行ったんだと白状しました。自転車に乗って隣町の廃屋に行き、道から見えないところに繋いだと。帰る途中でなぜか道が分からなくなり迷ってやっと帰ってきたんだと泣きながら言いました。嘘を言っているようではなかったし、こんな嘘をついても意味ありません。娘の援助交際に関しては本人も反省し、解決済みです。でも、あれから猫恐怖症になってしまったので、今は猫を親戚の家に里子に出しています。
でもね、娘には内緒なんですけど、たまに私に会いに来てくれるんですよ。
――猫ってすごいですね、と古堂さんは微笑んだ。
ある日、事前連絡なしに姑が家に来ました。家事が終わってのんびりしている時間なので、慌ててお茶菓子を出したりしていると、うちの猫がテーブルに飛び乗ってきたんです。躾でテーブルの上には乗らないようにしていたので驚きました。叱っても平気な顔で姑の横に座ってしまい、姑も少し嫌な顔をしてお茶をすすりました。
その時
「子供も作らず畜生なんて飼って、ああ気にくわない」
と声がしたんです。姑はお茶を吹き出し私も持っていた皿を取り落としそうになりました。私たちはどちらも何も言ってませんが、どちらも聞こえていました。それは猫から聞こえていたんです。姑は真っ青になってすぐに出て行きました。
たぶん姑の心の声だったんでしょうね。
次にしゃべったのがつい最近です。あの後に生まれた娘は今は小学6年生です。いわゆる反抗期で全然親の言うことを聞きません。私自身にも覚えがあったので態度が素っ気なくなってもあまり気にしなかったんです。
居間で娘がテレビを見、私は内職をしていたときです。猫が娘の足にすり寄っていきました。昔は可愛がっていたんですが、最近娘はあまり猫にかまわず、猫も娘に懐かなくなったので、珍しいなと思って見ていたんです。そしたら猫は娘の横にすわりしゃべりました。
「明日のパパからいくらもえらえるかなぁ。友達連れて行くし、10万くらい行けるかなぁ」
私はすぐには意味が分かりませんでした。娘の方は悲鳴を上げ、転がるように自室に入っていきました。猫はすまし顔で座ったままです。ちなみに娘は夫のことを「お父さん」と呼びます。じゃあ「パパ」って誰? と考えたところで血の気が引くのを感じました。
すぐに娘の部屋に行きましたが、鍵を掛けていて出てきてくれませんでした。その晩、夫にこのことを話しました。夫は半信半疑で「とにかく明日娘に話を聞こう」と翌日まで保留になりました。
早朝、家の玄関が開く音がしました。不安になり娘の部屋に行くと娘が居ません。家出だと思ってその日は夫も仕事を休んで探しました。もちろん学校にも連絡しましたが、登校してませんでした。昼過ぎにいったん家に戻り、二人で頭を抱えました。昨晩のこともありますし、やっぱり警察に・・・・・・と言うところで娘が帰ってきたんです。安心や怒りなどいろんな感情がありましたが、私たちが何か言う前に娘が叫びました。「なんでいるの?!」って。娘の視線の先には、猫が居ました。
猫は朝からずっと家に居ました。それは間違いありません。私が世話をしていたんで。
娘は援助交際が猫のせいでばれると思い、猫を捨てに行ったんだと白状しました。自転車に乗って隣町の廃屋に行き、道から見えないところに繋いだと。帰る途中でなぜか道が分からなくなり迷ってやっと帰ってきたんだと泣きながら言いました。嘘を言っているようではなかったし、こんな嘘をついても意味ありません。娘の援助交際に関しては本人も反省し、解決済みです。でも、あれから猫恐怖症になってしまったので、今は猫を親戚の家に里子に出しています。
でもね、娘には内緒なんですけど、たまに私に会いに来てくれるんですよ。
――猫ってすごいですね、と古堂さんは微笑んだ。
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