怪談レポート

久世空気

文字の大きさ
上 下
188 / 254

№188 引き寄せ

しおりを挟む
 これは俺の大学の友達の話です。仮に久谷とします。こいつは結構考えなしというか、悪ふざけが過ぎるというか・・・・・・。普通に付き合う分には楽しいやつなんですけどね。

 ある日、久谷に呼び出されて行ってみると知らない男が一緒に居ました。誰かと聞くと、霊感があると大学で有名な学生だと。とりあえず玖木としますね。これから3人で心霊スポットに行こうと久谷は言いました。久谷のようすから玖木を試そうと思っていることが分かりました。多分彼を知っている人なら気づいたと思います。でも玖木は無表情でわかっているのかいないのか読み取れなかったから、俺も付いていくことにしました。

 久谷はマンションの一室に俺たちを案内しました。

「ここは先週死んだ親戚の部屋だ。まだ片付けてないんだ」
 と言っていました。玖木はじっと部屋を見回り、俺も久谷が嘘をついていると思っていろいろ見てみました。冷蔵庫の中も水くらいしか入ってなかったし、風呂や洗面所は乾いていました。10分くらいして、俺たちの様子をニヤニヤしながら見ていた久谷が

「何か見える?」
 と聞いてきました。

 たぶん玖木に聞いたんだと思うけど、俺は一応首を横に振っときました。玖木はちょっと考えてから

「死んだ場所はこの部屋じゃない。遠いところ。車にひかれた。しばらく生きてたけど、実家から遠いから誰にも看取られずに死んだ」

 ゆっくりそう言うと玖木は黙って、そのまま玄関から出て行った。ぽかんとしていた久谷は玖木が帰ってこないと分かると笑い出しました。

「あれ、嘘だぜ?」

 実はその部屋、久谷の従兄が借りている所で、従兄は生きていて、仕事で長期出張に行っていたそうです。

「種明かしする前に帰るなよ。なぁ?」

 久谷は俺に同意を求めてきたけど、なんか感じが悪くて俺もすぐに帰りました。
 でもその夜、久谷から電話がかかってきました。ショックを受けて震えた声をしていました。久谷の従兄が同じ日の夕方、出張先のマンスリーマンションの前で車にひかれたんだそうです。すぐに救急車に運ばれ、最初は意識はあったけど自分が誰かもしゃべれず、身分証も持ってなかったから会社にも実家にも連絡が行かず、搬送先で亡くなったそうです。

 久谷はその日から大学にあんまり来なくなって、いつの間にか退学していました。退学前に久谷に会った同級生は「玖木のことすごく怖がってた」と言っていました。玖木とは一度だけ話す機会がありました。久谷の従兄のことどうして分かったのかと聞くと、すごく不快な顔をされました。

「ああいう嘘は、ダメだろ。引き寄せる」

 最初は意味わからなかったけど多分、呪いとかそういうのじゃなくて、久谷が引き寄せたのを玖木がキャッチしてしまった、と言う意味じゃないかなって。どう思います?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。

鞠目
ホラー
さくら急便のある営業所に、奇妙な配達員にいたずらをされたという不可思議な問い合わせが届く。 最初はいたずら電話と思われていたこの案件だが、同じような問い合わせが複数人から発生し、どうやらいたずら電話ではないことがわかる。 迷惑行為をしているのは運送会社の人間なのか、それとも部外者か? 詳細がわからない状況の中、消息を断つ者が増えていく…… 3月24日完結予定 毎日16時ごろに更新します お越しをお待ちしております

消える死体

ツヨシ
ホラー
女の子の死体が消える

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

特別。

月芝
ホラー
正義のヒーローに変身して悪と戦う。 一流のスポーツ選手となって活躍する。 ゲームのような異世界で勇者となって魔王と闘う。 すごい発明をして大金持ちになる。 歴史に名を刻むほどの偉人となる。 現実という物語の中で、主人公になる。 自分はみんなとはちがう。 この世に生まれたからには、何かを成し遂げたい。 自分が生きた証が欲しい。 特別な存在になりたい。 特別な存在でありたい。 特別な存在だったらいいな。 そんな願望、誰だって少しは持っているだろう? でも、もしも本当に自分が世界にとっての「特別」だとしたら…… 自宅の地下であるモノを見つけてしまったことを境にして、日常が変貌していく。まるでオセロのように白が黒に、黒が白へと裏返る。 次々と明らかになっていく真実。 特別なボクの心はいつまで耐えられるのだろうか…… 伝奇ホラー作品。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
よくよく考えると ん? となるようなお話を書いてゆくつもりです 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...