怪談レポート

久世空気

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№186 火の玉

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 うちの実家は結構田舎で、家も平屋で庭付きで広いんです。曾祖父が建てた家だからかなり古い家です。

 年季が入っているからか、たまにおかしなことが起きます。家鳴りとか誰も居ないところから話し声や足音がする、というのは良くあることで、父は亡くなった曾祖母が仏壇に手を合わせているのを見たと言っています。
 俺が見たのは火の玉でした。青白い光が庭にふわふわ浮いているのを何度か見ました。最初は驚いて母に言いましたが
「知ってた? 火の玉って熱くないし引火しないから火事にならないのよ?」
 と謎の豆知識を植え付けられました。あの頃は俺も素直だったんで「じゃあ、怖くないか」とそれ以来見ても「燃えてるなぁ」とスルーするようになりました。

 しかしある日、中学校の友達にぽろっと話してしまったとき、いやに突っかかってくるやつがいました。
「青い火の玉は燐の成分が云々」
 ・・・・・・何か小難しいことを言ってましたが忘れました。とにかくそいつは庭を掘り起こしたら死体があると主張しました。そんな物あるわけがないと、抵抗しましたが無理矢理家に押し入ってきたので祖父に相談したところ
「納得するまで掘らせれば良い。後で元に戻しとけ」
 とあっさり許可を与えたんです。友達は意気揚々とスコップを持ってきて、俺が見た場所を聞き出すと地面を掘り出しました。僕は友人が巻き上げる土を一カ所に集めながら早くもうんざりしていました。それが1時間くらい続いたからかなり苦行です。結構堅かったと思うんですけどなんの情熱か友達はひたすら掘り続けました。

 友達がすっぽり入るくらいの穴ができあがったとき
「何か出てきた!」
 と友達は叫びました。俺が覗き込むと確かに黒いつるっとした箱が友達の手に収まっていました。そんなに大きな物じゃないのによくピンポイントで掘り出した物だと驚き、やっぱり死体だったのかと思い始めましたが友人が箱を開けると、小さな木片が2,3枚入っているだけでした。
「死体じゃないじゃん」
 と俺が言うと友達は
「疲れたから帰る」
 と言い出しました。確かにこれだけ掘って成果が木片じゃ力も抜けるだろうと、ふらふら帰ろうとする友達を引き留めジュースやお菓子を出しました。友達はもそもそとそれを食べましたがまだ元気が出ず、心配した母が車を出して家まで送っていきました。穴を埋めるのは俺の仕事でした。

 次の日から友達は学校に来ませんでした。1週間くらいして友達が両親とうちに来て祖父母と何か話した後、一緒に庭に出て何かしていました。俺は自室にいるように言われたので話は聞こえませんでしたが、祖父母が何度も謝る声が聞こえました。友達の両親も謝ってるようでした。
 そのさらに1週間後友達は学校に復帰ましたが穴を掘っている時から記憶がないそうです。
 火の玉ですか? 今でも出ますよ?

――金城さんは最近その家を相続したそうだ。
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