184 / 254
№184 悪人
しおりを挟む
――枝橋さんは現在、大学生だといった。しかし見た目は驚くほど老けて見えた。
彼女のことは1年生の時からすでに噂で知っていました。曰く「単位のために教授と寝まくってる」と。良くある下品なネタだと思っていました。彼女は顔はそれほどだったんですが、なかなかスタイルが良くて、そう言うところが噂になりやすかったのかなって。ほら、美人だと笑ってるだけでもいいけど、ブスなら体張らないと・・・・・・すみません、話を続けます。
その日、たまたま時間があったので教授に借りた本を返しに行ったんです。貴重な本と聞いていたからできるだけ早く返したかったので、読み終わったのは夕方だったんですが研究室にいたらいいなくらいのつもりで。そこで見ちゃったんですよ、彼女と教授がキスしてるの。噂が本当だったこととスキャンダルを見た興奮で、思わず写真を撮っちゃったんです。
僕は教授に本を返すのをやめて、彼女がキャンパスから出てくるのを待ち、出てきたところでスマホで撮った写真を見せました。その時はじめてしゃべったんです。
「これ、知られたらヤバいよね。先生、既婚者だよね」
って。彼女は僕が話しかけたことには驚いていました。写真については「ああ、そう」みたいな反応でしたが、かまわず一人暮らしの部屋に連れ込んで・・・・・・。本当に、どうかしてたんです。事の真相を偶然知って気が大きくなっていたというか、尻軽女を見つけて遊んでみたくなったというか。
その日から、彼女は僕の部屋に住みつくようになりました。家事をしてくれるから恋人になったつもりかと、それ以上のことは特に考えませんでした。数週間後、例の教授が自殺しました。理由は「奥さんに、学生に手を出してたことばれたからね」と彼女が教えてくれました。彼女は特に悲しそうでも残念そうでもなく、淡々としていました。
そのあたりから、僕の部屋に異変が起こり始めたんです。男のうなり声がしたり、誰も居ないところからペタペタ歩く音がしたり、寝ているときに誰かが乗ってくる感覚がして金縛りになったり。
一度、目を開けてみたら、教授だったんです。叫んで起きたら彼女も起き出しました。教授は消えました。教授がいたといったら、やっぱりねって。どうも彼女に近づいた男は自殺したり、自殺に近い感じで事故死するそうなんです。
「昔、霊感がある人にそういう男が全部憑いてるよって言われたんだよね。私は見えないけど」
と彼女はあっけらかんと言いました。教授が死んでも動揺しなかったのは慣れていたからだそうです。
彼女と別れたいです。何で彼女が取り憑かれているのに僕が苦しまなきゃいけないのか。でもなかなか出て行ってくれないんですよ。土下座して頼んでも、怒鳴って酷いことを言っても、平気なんですよ。叩き出してもふらっと帰ってくるんです。もう・・・・・・死にたい。きっと僕が死んでも彼女はなんとも思わず他の男を引っかけるんでしょうね。
彼女に取り憑く男たちの気持ちがちょっと分かります。
彼女のことは1年生の時からすでに噂で知っていました。曰く「単位のために教授と寝まくってる」と。良くある下品なネタだと思っていました。彼女は顔はそれほどだったんですが、なかなかスタイルが良くて、そう言うところが噂になりやすかったのかなって。ほら、美人だと笑ってるだけでもいいけど、ブスなら体張らないと・・・・・・すみません、話を続けます。
その日、たまたま時間があったので教授に借りた本を返しに行ったんです。貴重な本と聞いていたからできるだけ早く返したかったので、読み終わったのは夕方だったんですが研究室にいたらいいなくらいのつもりで。そこで見ちゃったんですよ、彼女と教授がキスしてるの。噂が本当だったこととスキャンダルを見た興奮で、思わず写真を撮っちゃったんです。
僕は教授に本を返すのをやめて、彼女がキャンパスから出てくるのを待ち、出てきたところでスマホで撮った写真を見せました。その時はじめてしゃべったんです。
「これ、知られたらヤバいよね。先生、既婚者だよね」
って。彼女は僕が話しかけたことには驚いていました。写真については「ああ、そう」みたいな反応でしたが、かまわず一人暮らしの部屋に連れ込んで・・・・・・。本当に、どうかしてたんです。事の真相を偶然知って気が大きくなっていたというか、尻軽女を見つけて遊んでみたくなったというか。
その日から、彼女は僕の部屋に住みつくようになりました。家事をしてくれるから恋人になったつもりかと、それ以上のことは特に考えませんでした。数週間後、例の教授が自殺しました。理由は「奥さんに、学生に手を出してたことばれたからね」と彼女が教えてくれました。彼女は特に悲しそうでも残念そうでもなく、淡々としていました。
そのあたりから、僕の部屋に異変が起こり始めたんです。男のうなり声がしたり、誰も居ないところからペタペタ歩く音がしたり、寝ているときに誰かが乗ってくる感覚がして金縛りになったり。
一度、目を開けてみたら、教授だったんです。叫んで起きたら彼女も起き出しました。教授は消えました。教授がいたといったら、やっぱりねって。どうも彼女に近づいた男は自殺したり、自殺に近い感じで事故死するそうなんです。
「昔、霊感がある人にそういう男が全部憑いてるよって言われたんだよね。私は見えないけど」
と彼女はあっけらかんと言いました。教授が死んでも動揺しなかったのは慣れていたからだそうです。
彼女と別れたいです。何で彼女が取り憑かれているのに僕が苦しまなきゃいけないのか。でもなかなか出て行ってくれないんですよ。土下座して頼んでも、怒鳴って酷いことを言っても、平気なんですよ。叩き出してもふらっと帰ってくるんです。もう・・・・・・死にたい。きっと僕が死んでも彼女はなんとも思わず他の男を引っかけるんでしょうね。
彼女に取り憑く男たちの気持ちがちょっと分かります。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

叔父様ノ覚エ書
国府知里
ホラー
音信不通になっていた叔父が残したノートを見つけた姪。書かれていたのは、摩訶不思議な四つの奇譚。咲くはずのない桜、人食い鬼の襲撃、幽霊との交流、三途の川……。読むにつれ、叔父の死への疑いが高まり、少女は身一つで駆けだした。愛する人を取り戻すために……。
「行方不明の叔父様が殺されました。お可哀想な叔父様、待っていてね。私がきっと救ってあげる……!」
~大正奇奇怪怪幻想ホラー&少女の純愛サクリファイス~
推奨画面設定(スマホご利用の場合)
背景色は『黒』、文字フォントは『明朝』
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる