怪談レポート

久世空気

文字の大きさ
上 下
173 / 254

№173 首飾り

しおりを挟む
 私、本当はネックレスとかペンダントとか好きなんですよ。

――向さんは白く細い自分の首をなでながら言った。

 それが出来なくなったのはあるペンダントがきっかけでした。
 それは姉のペンダントで、彼氏からプレゼントされたものでした。私はうらやましくてたまらなくて・・・・・・でも到底私の経済力で買えるようなものではありませんでした。
 だから姉が絶対付けない日を見計らって、こっそり部屋から拝借して付けていました。最初は自室でペンダントをつけたコーデを楽しむだけだったんですが、だんだんと大胆になってきて、その格好で友達と遊びに行ったりしていました。
 私は大学生で、姉は社会人。生活リズムも活動範囲も違ったので全然ばれず、姉もおっとりした性格だったの私が多少おかしな行動――姉の予定を聞きまくったり、部屋の周りでうろうろしたり――をしても気にしていないようでした。
 でもある日、私はうっかり姉の予定を勘違いしてペンダントを持って家を出てしまったんです。それは運悪く、姉が彼氏の両親に挨拶に行く日でした。姉も彼氏もペンダントに思い入れがあり、是非付けてきて欲しいと言われ、姉は前日から準備していたようです。私は何も知らずにそれを持って大学に行き、飲み会にも参加しました。
 一方姉は、準備していたはずのペンダントがなく、散々探して仕方なく時間ギリギリに挨拶に向かったそうです。遅刻寸前の上、ペンダントを付けていないことに彼氏はいらだち、姉もこんなはずじゃなかったと口論になったそうです。なくしたんじゃないかとか、そんなはずない、といった口論の後、頭に血が上った彼氏は家まで送るはずだったのに、姉を車から降ろしたんです。姉も冷静になりたかったのか言われるがまま車から降りました。でも、そこに後続のバイクが来て・・・・・・。
 私は後悔しましたが、おそろしくてペンダントのことは誰にも言えません。そして姉の棺桶にそっとペンダントを入れました。火葬場で燃えたと思ったんですが、ペンダントはいつの間にか私の部屋にありました。それから何度捨ててもペンダントは帰ってくるんです。とうとうお寺に引き取ってもらいました。でもいまだにペンダントやネックレスなどは付けるのも見るのも嫌なんです。え? どんなって、ピンクダイヤのかわいらしいけど、ちゃんとフォーマルなところにも使える良いデザインのペンダントです。

――帰り際、話し始めたときにはなかったピンクダイヤのペンダントが向さんの首元で光っていた。向さんは最後まで気づかずに帰って行った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

おねしょ合宿の秘密

カルラ アンジェリ
大衆娯楽
おねしょが治らない10人の中高生の少女10人の治療合宿を通じての友情を描く

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

意味が分かると怖い話 完全オリジナル

何者
ホラー
解けるかなこの謎ミステリーホラー

奇妙な家

376219206@qq.com
ホラー
運転手なしのバスは、呪われた人々を乗せて、奇妙な黒い家へと向かった...その奇妙な家には、血で染まったドアがあった。呪われた人は、時折、血の門の向こうの恐ろしい世界に強制的に引きずり込まれ、恐ろしい出来事を成し遂げることになる... 寧秋水は奇怪な家で次々と恐ろしく奇妙な物語を経験し、やっとのことで逃げ延びて生き残ったが、すべてが想像とは全く違っていた... 奇怪な家は呪いではなく、... —— 「もう夜も遅いよ、友よ、奇怪な家に座ってくれ。ここには火鉢がある。ところで、この話を聞いてくれ

処理中です...