172 / 254
№172 居たはずなのに
しおりを挟む
家に居たのに家に居ないことにされたことがあります。
夫の母親、つまり姑なんですが、結婚するまでは良い方だったのに、結婚してからはあたりが強くなって。きっと最初から嫌われてたんでしょうね。
「まさか本当に結婚するなんて」
と、言ってたこともあります。ただ暴力を振るわれたり、あからさまに悪口を言われたことがなかったので夫にはなんとなく言いづらくて、なぁなぁにしていたんです。それが悪かったんでしょう。夫は姑に言いくるめられて家の合鍵を渡してしまったんです。それからちょくちょく姑は家に勝手に上がるようになりました。しかも私が居るのに、合鍵を使ってずかずか入ってくるんです。最初のうちは
「あら。居たの?」
と、すっとぼけていたのが、徐々にそれもなくなり我が物顔で家の掃除や料理を作ったり・・・・・・私が止めようとするとわざと大きな声を出したり、持っている調理器具を振り回してくるんです。さすがにこれは酷いと思いましたが、夫に訴える前に、事件が起きたんです。
私はその日、家の掃除をして洗濯して、布団を干してと忙しくしてました。昼前くらいでしょうか、
「美佳さ~ん」
と姑の声で呼ばれたんです。びっくりして周りを見ましたが、誰も居ません。姑を恐れるばかりに幻聴を聞いてしまったんだと思いました。そもそも姑が私を呼ぶことなんてありませんし。
でも家事にもどろうとしたらまた、今度はもっと近くから呼ばれました。どこかに隠れているのかとあちこち探しましたが見つかりません。その間も姑の声は続きます。
だんだん気持ち悪くなってきて、私は居間のソファに腰を下ろしました。その瞬間生臭い匂いがふわぁと部屋を満たしました。
そしてまた私を呼ぶ声がしたんですが、それは夫でした。振り返ると唖然とした夫と目が合いました。仕事は、と聞くと突然泣き出して抱きついてきたんです。夫をなだめながら気がついたんですが、部屋の中が酷く荒れていて、あちこちに赤黒い汚れが付いていました。それは姑の血でした。
姑はいつも通り、うちに勝手に上がり込んだとき、後を付けてきた男に入り込まれ、襲われて金品を盗られたそうです。姑は抵抗して、私を呼びながら逃げ回り、大声に焦った強盗に刺されたということです。強盗は家に誰かがいると思い、家中を探し、その間に騒ぎを聞いた近所の人が通報してくれたようです。
皆、私が上手く強盗から逃げ隠れることが出来たと思ったようです。
「お前だけでも助かって良かった」
と、夫は泣いて喜んでくれましたが、私はずっと家に居たし、家の中を姑を探してうろうろしていましたし、強盗が私を探していたらかち合っているはずです。私がした炊事洗濯はちゃんとそのままでした。夢を見ていたわけでもないです。誰も私を責めたりしませんが、ふとした瞬間に、あのときの姑が呼ぶ声を思い出して気分が落ち込みます。嫌な人でしたが、さすがに死んでほしいと思ったことは・・・・・・。
夫の母親、つまり姑なんですが、結婚するまでは良い方だったのに、結婚してからはあたりが強くなって。きっと最初から嫌われてたんでしょうね。
「まさか本当に結婚するなんて」
と、言ってたこともあります。ただ暴力を振るわれたり、あからさまに悪口を言われたことがなかったので夫にはなんとなく言いづらくて、なぁなぁにしていたんです。それが悪かったんでしょう。夫は姑に言いくるめられて家の合鍵を渡してしまったんです。それからちょくちょく姑は家に勝手に上がるようになりました。しかも私が居るのに、合鍵を使ってずかずか入ってくるんです。最初のうちは
「あら。居たの?」
と、すっとぼけていたのが、徐々にそれもなくなり我が物顔で家の掃除や料理を作ったり・・・・・・私が止めようとするとわざと大きな声を出したり、持っている調理器具を振り回してくるんです。さすがにこれは酷いと思いましたが、夫に訴える前に、事件が起きたんです。
私はその日、家の掃除をして洗濯して、布団を干してと忙しくしてました。昼前くらいでしょうか、
「美佳さ~ん」
と姑の声で呼ばれたんです。びっくりして周りを見ましたが、誰も居ません。姑を恐れるばかりに幻聴を聞いてしまったんだと思いました。そもそも姑が私を呼ぶことなんてありませんし。
でも家事にもどろうとしたらまた、今度はもっと近くから呼ばれました。どこかに隠れているのかとあちこち探しましたが見つかりません。その間も姑の声は続きます。
だんだん気持ち悪くなってきて、私は居間のソファに腰を下ろしました。その瞬間生臭い匂いがふわぁと部屋を満たしました。
そしてまた私を呼ぶ声がしたんですが、それは夫でした。振り返ると唖然とした夫と目が合いました。仕事は、と聞くと突然泣き出して抱きついてきたんです。夫をなだめながら気がついたんですが、部屋の中が酷く荒れていて、あちこちに赤黒い汚れが付いていました。それは姑の血でした。
姑はいつも通り、うちに勝手に上がり込んだとき、後を付けてきた男に入り込まれ、襲われて金品を盗られたそうです。姑は抵抗して、私を呼びながら逃げ回り、大声に焦った強盗に刺されたということです。強盗は家に誰かがいると思い、家中を探し、その間に騒ぎを聞いた近所の人が通報してくれたようです。
皆、私が上手く強盗から逃げ隠れることが出来たと思ったようです。
「お前だけでも助かって良かった」
と、夫は泣いて喜んでくれましたが、私はずっと家に居たし、家の中を姑を探してうろうろしていましたし、強盗が私を探していたらかち合っているはずです。私がした炊事洗濯はちゃんとそのままでした。夢を見ていたわけでもないです。誰も私を責めたりしませんが、ふとした瞬間に、あのときの姑が呼ぶ声を思い出して気分が落ち込みます。嫌な人でしたが、さすがに死んでほしいと思ったことは・・・・・・。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる