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№165 親愛
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小学生の時、学校が苦手で不登校でした。たまに行っても数時間で勝手に帰ったりしてました。今もやっぱり苦手で、通信制の高校に通っています。
そんな僕にも友達がいました。平日の昼間、学校以外で外に出ることは禁止されていたのですが、玄関の横の車庫なら開放して遊んで良いことになっていました。車は父が通勤で使っていたので空っぽで、壁にボールを当てたり、縄跳びをしたり、地面にチョークで絵を描いたり、暑い日なんかは小さいビニールプールに水を入れて水浴びしていました。
友達はそこにふらっと現れました。僕は結構自由にさせてもらっていましたが、やっぱり一人遊びだけではつまらなくて、友達が来たらすぐ一緒に遊び始めました。
さく君と呼んでいました。さく君がどこから来て、どうして学校に行ってないかは聞いていません。僕も聞かれませんでした。お互い自分の話は一切なくて、ただその時その時を二人で楽しく過ごしていました。
今思うと贅沢で不思議な時間でした。
ある日、祖母がうちに来て、人形をくれました。祖母はちょっとした人形作家で、たまに姉に作ってあげていましたが僕は男の子だという理由で断っていました。でもその日くれた人形は手のひらにのる位のサイズで、その時流行っていたアニメの主人公の形をしていました。頭に組紐が付いていて、鞄などに付けれる使用になっていました。祖母は
「友達とおそろいになるよ」
と二つ持たせてくれました。きっとさく君も喜ぶだろうと次の日車庫で待っていましたが、さく君は来ませんでした。
次の日も、その次の日も、僕は待ちぼうけし、しまいに姉に泣きつきました。姉は
「きっと友達は学校に行き始めたんだよ。学校に行ったら会えるかもね」
と言ったので僕は次の日から自分をだましだまし学校に行くようになりました。でも再会はかなわず、中学校で会うことも期待しましたが、そこでも会えず、無理して登校していたので一時期メンタル面をやられて入院もしました。
ずっと人形を持ち歩き、きっと会えると信じていました。その希望が打ち砕かれたのは先週の祖母の葬式後のことです。火葬場で荼毘に付すのを待ちながらぼんやりと作ってもらった人形を見ていました。それを見て姉が
「あんたまだそれ持ってたの!」
と驚いた声で話しかけてきたんです。まださく君と再会できてないと打ち明けると、姉は本当のことを教えてくれました。
祖母の人形は一種のお守りらしく、僕に悪いものが近づかないようにと持たせてくれた物なんだそうです。姉が僕が車庫で遊んでいるのを何度か見ているそうですが、いつも一人で遊んでいて、さらに誰か居るように振る舞っていたというのです。さく君を一度も見たことがないと。それを不気味に思った姉は祖母に相談したところ、お守りの人形を作ってくれたんだそうです。僕がさく君に渡そうと人形を持っていることで、僕の前にさく君が現れなくなり、姉も祖母も安心していたそうです。
家に帰って僕は人形をハサミで切り裂いて捨てました。例え何者でも、僕からさく君を奪ったことを、僕は絶対許しません。
――能見さんはこれから友達と遊びに行くと、謝礼を持って帰っていった。
そんな僕にも友達がいました。平日の昼間、学校以外で外に出ることは禁止されていたのですが、玄関の横の車庫なら開放して遊んで良いことになっていました。車は父が通勤で使っていたので空っぽで、壁にボールを当てたり、縄跳びをしたり、地面にチョークで絵を描いたり、暑い日なんかは小さいビニールプールに水を入れて水浴びしていました。
友達はそこにふらっと現れました。僕は結構自由にさせてもらっていましたが、やっぱり一人遊びだけではつまらなくて、友達が来たらすぐ一緒に遊び始めました。
さく君と呼んでいました。さく君がどこから来て、どうして学校に行ってないかは聞いていません。僕も聞かれませんでした。お互い自分の話は一切なくて、ただその時その時を二人で楽しく過ごしていました。
今思うと贅沢で不思議な時間でした。
ある日、祖母がうちに来て、人形をくれました。祖母はちょっとした人形作家で、たまに姉に作ってあげていましたが僕は男の子だという理由で断っていました。でもその日くれた人形は手のひらにのる位のサイズで、その時流行っていたアニメの主人公の形をしていました。頭に組紐が付いていて、鞄などに付けれる使用になっていました。祖母は
「友達とおそろいになるよ」
と二つ持たせてくれました。きっとさく君も喜ぶだろうと次の日車庫で待っていましたが、さく君は来ませんでした。
次の日も、その次の日も、僕は待ちぼうけし、しまいに姉に泣きつきました。姉は
「きっと友達は学校に行き始めたんだよ。学校に行ったら会えるかもね」
と言ったので僕は次の日から自分をだましだまし学校に行くようになりました。でも再会はかなわず、中学校で会うことも期待しましたが、そこでも会えず、無理して登校していたので一時期メンタル面をやられて入院もしました。
ずっと人形を持ち歩き、きっと会えると信じていました。その希望が打ち砕かれたのは先週の祖母の葬式後のことです。火葬場で荼毘に付すのを待ちながらぼんやりと作ってもらった人形を見ていました。それを見て姉が
「あんたまだそれ持ってたの!」
と驚いた声で話しかけてきたんです。まださく君と再会できてないと打ち明けると、姉は本当のことを教えてくれました。
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家に帰って僕は人形をハサミで切り裂いて捨てました。例え何者でも、僕からさく君を奪ったことを、僕は絶対許しません。
――能見さんはこれから友達と遊びに行くと、謝礼を持って帰っていった。
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