153 / 254
№153 視える人
しおりを挟む
いわゆる「視える人」の分類に入ると思うんです、僕。でも「視える人」って当たり前みたいに見えてるって思われがちじゃないですか? 僕は全然なんですよ。バンッてはっきり見えることもあれば、全然感じもしないこともあるんです。まあ、それをネタに周りには「残念な霊能力者」なんて言われて覚えてもらってます。
だから幽霊とかの相談って受けたことなかったんですけど、一度だけ、先輩から
「俺の部屋見てくれ」
って言われたんです。最初はまさか幽霊のことだとは思わなくて
「模様替えですか?」
って聞き返したら怒られちゃいました。
その先輩っていうのがかなりクズで、いつも女の子泣かせてるんですよね。だからそんなに仲良くしたくないんですけど、初めて心霊相談されて、ちょっと舞い上がっちゃったんですよ。二つ返事でOK。遊びに行きました。とはいっても、僕はたまにしか見えないし、それも先輩は知ってるので、何度か先輩の家で二人で宅飲みすることになったんです。
最初は普通に良い部屋だなぁって思ってたんですけど、どうもその部屋も女に貢がせて手に入れたらしくて、酔った先輩が自慢してきました。過去形で話してたから、多分その女も捨てられたんだろうなってちょっと嫌な気分になりながらも、適当に返事しながら1度目の視察は終わりました。2回目、3回目も何も見えなくて、そろそろ苦痛になってきた飲み会をどう終わらそうと思案していると、4回目で見えてしまったんです。
酔っ払った先輩がまた自慢話を始めて、適当に合わせていたら、僕の反応がお気に召さなかったんでしょうね、
「今の女に買わせた」
と高い腕時計見せてきたんです。興味ないけど
「すげぇ!」「やべぇ!」
を繰り返していたらやっと機嫌が良くなって
「やっぱ女は体と金だよ」
と言い出したんです。
「なんだこいつ」って思いながら
「そうですねぇ~」
なんて返した瞬間、ばっと視界が暗くなったんです。「視える人」のスイッチが入ったんだと思いました。でも声が出せないんですよ。僕、首を絞められてたんです。目の前の女に。暗くなったと思ったのは女の陰だったんですよ。「これ以上関わっちゃダメだ」って直感しました。きっとこのまま部屋にいたら殺されるし、この女のことを先輩に話してもいけないって。そう悟ったら女はすっと僕から離れて部屋の隅に立ってじっと先輩を見ていました。先輩は僕の様子が変わったのに気づかなかったようで、いろいろと女に貢がせた物を見せていたようです。
僕は腹が痛いとか適当な理由を言ってすぐに帰りました。それから数日後、先輩はあの部屋で死んでいました。心不全ってやつです。原因不明。自殺ではないみたいでしたよ。十中八九、あの女のせいですけどね。先輩もあんな感じの人だから、見えなかった僕が責められることはありませんでした。
――最近、見る回数が減ってきたんですと言う、須鴨さんの後ろには黒い陰が見えた。
だから幽霊とかの相談って受けたことなかったんですけど、一度だけ、先輩から
「俺の部屋見てくれ」
って言われたんです。最初はまさか幽霊のことだとは思わなくて
「模様替えですか?」
って聞き返したら怒られちゃいました。
その先輩っていうのがかなりクズで、いつも女の子泣かせてるんですよね。だからそんなに仲良くしたくないんですけど、初めて心霊相談されて、ちょっと舞い上がっちゃったんですよ。二つ返事でOK。遊びに行きました。とはいっても、僕はたまにしか見えないし、それも先輩は知ってるので、何度か先輩の家で二人で宅飲みすることになったんです。
最初は普通に良い部屋だなぁって思ってたんですけど、どうもその部屋も女に貢がせて手に入れたらしくて、酔った先輩が自慢してきました。過去形で話してたから、多分その女も捨てられたんだろうなってちょっと嫌な気分になりながらも、適当に返事しながら1度目の視察は終わりました。2回目、3回目も何も見えなくて、そろそろ苦痛になってきた飲み会をどう終わらそうと思案していると、4回目で見えてしまったんです。
酔っ払った先輩がまた自慢話を始めて、適当に合わせていたら、僕の反応がお気に召さなかったんでしょうね、
「今の女に買わせた」
と高い腕時計見せてきたんです。興味ないけど
「すげぇ!」「やべぇ!」
を繰り返していたらやっと機嫌が良くなって
「やっぱ女は体と金だよ」
と言い出したんです。
「なんだこいつ」って思いながら
「そうですねぇ~」
なんて返した瞬間、ばっと視界が暗くなったんです。「視える人」のスイッチが入ったんだと思いました。でも声が出せないんですよ。僕、首を絞められてたんです。目の前の女に。暗くなったと思ったのは女の陰だったんですよ。「これ以上関わっちゃダメだ」って直感しました。きっとこのまま部屋にいたら殺されるし、この女のことを先輩に話してもいけないって。そう悟ったら女はすっと僕から離れて部屋の隅に立ってじっと先輩を見ていました。先輩は僕の様子が変わったのに気づかなかったようで、いろいろと女に貢がせた物を見せていたようです。
僕は腹が痛いとか適当な理由を言ってすぐに帰りました。それから数日後、先輩はあの部屋で死んでいました。心不全ってやつです。原因不明。自殺ではないみたいでしたよ。十中八九、あの女のせいですけどね。先輩もあんな感じの人だから、見えなかった僕が責められることはありませんでした。
――最近、見る回数が減ってきたんですと言う、須鴨さんの後ろには黒い陰が見えた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。



奇妙な家
376219206@qq.com
ホラー
運転手なしのバスは、呪われた人々を乗せて、奇妙な黒い家へと向かった...その奇妙な家には、血で染まったドアがあった。呪われた人は、時折、血の門の向こうの恐ろしい世界に強制的に引きずり込まれ、恐ろしい出来事を成し遂げることになる... 寧秋水は奇怪な家で次々と恐ろしく奇妙な物語を経験し、やっとのことで逃げ延びて生き残ったが、すべてが想像とは全く違っていた... 奇怪な家は呪いではなく、... —— 「もう夜も遅いよ、友よ、奇怪な家に座ってくれ。ここには火鉢がある。ところで、この話を聞いてくれ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる