怪談レポート

久世空気

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№153 視える人

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 いわゆる「視える人」の分類に入ると思うんです、僕。でも「視える人」って当たり前みたいに見えてるって思われがちじゃないですか? 僕は全然なんですよ。バンッてはっきり見えることもあれば、全然感じもしないこともあるんです。まあ、それをネタに周りには「残念な霊能力者」なんて言われて覚えてもらってます。
 だから幽霊とかの相談って受けたことなかったんですけど、一度だけ、先輩から
「俺の部屋見てくれ」
 って言われたんです。最初はまさか幽霊のことだとは思わなくて
「模様替えですか?」
 って聞き返したら怒られちゃいました。
 その先輩っていうのがかなりクズで、いつも女の子泣かせてるんですよね。だからそんなに仲良くしたくないんですけど、初めて心霊相談されて、ちょっと舞い上がっちゃったんですよ。二つ返事でOK。遊びに行きました。とはいっても、僕はたまにしか見えないし、それも先輩は知ってるので、何度か先輩の家で二人で宅飲みすることになったんです。
 最初は普通に良い部屋だなぁって思ってたんですけど、どうもその部屋も女に貢がせて手に入れたらしくて、酔った先輩が自慢してきました。過去形で話してたから、多分その女も捨てられたんだろうなってちょっと嫌な気分になりながらも、適当に返事しながら1度目の視察は終わりました。2回目、3回目も何も見えなくて、そろそろ苦痛になってきた飲み会をどう終わらそうと思案していると、4回目で見えてしまったんです。
 酔っ払った先輩がまた自慢話を始めて、適当に合わせていたら、僕の反応がお気に召さなかったんでしょうね、
「今の女に買わせた」
 と高い腕時計見せてきたんです。興味ないけど
「すげぇ!」「やべぇ!」
 を繰り返していたらやっと機嫌が良くなって
「やっぱ女は体と金だよ」
 と言い出したんです。
「なんだこいつ」って思いながら
「そうですねぇ~」
 なんて返した瞬間、ばっと視界が暗くなったんです。「視える人」のスイッチが入ったんだと思いました。でも声が出せないんですよ。僕、首を絞められてたんです。目の前の女に。暗くなったと思ったのは女の陰だったんですよ。「これ以上関わっちゃダメだ」って直感しました。きっとこのまま部屋にいたら殺されるし、この女のことを先輩に話してもいけないって。そう悟ったら女はすっと僕から離れて部屋の隅に立ってじっと先輩を見ていました。先輩は僕の様子が変わったのに気づかなかったようで、いろいろと女に貢がせた物を見せていたようです。
 僕は腹が痛いとか適当な理由を言ってすぐに帰りました。それから数日後、先輩はあの部屋で死んでいました。心不全ってやつです。原因不明。自殺ではないみたいでしたよ。十中八九、あの女のせいですけどね。先輩もあんな感じの人だから、見えなかった僕が責められることはありませんでした。

――最近、見る回数が減ってきたんですと言う、須鴨さんの後ろには黒い陰が見えた。
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