怪談レポート

久世空気

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№152 拾得物

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 大学のサークルメンバーとよく車で遊びに行っています。キャンプとか、釣りとか、有名な神社とか。毎回人数はまちまちですが、大体先輩後輩ごちゃまぜで5,6人くらいで行動していますね。

 去年も旅行に行ったんですが、ちょうど大雨に遭ってしまってほとんど旅館の中で過ごしました。帰りにやっと天気が持ち直したんですが、たいして観光も出来ず、皆少し物足りない感じでした。
 帰りの車の中で先輩の一人が
「この辺に心霊スポットあるなぁ」
 と言い出したんです。ネットで有名な廃墟で、今でも検索したら出てくるんじゃないですかね。その地域では最凶の心霊スポットと言われていましたし。僕も名前だけは知っていたので、近くまで来ていると思うとテンションが上がり、他のメンバーもそうだったみたいで、旅の最後に肝試しでもしようということになりました。
 場所は住宅地からちょっと離れた辺鄙な場所です。結構特徴的な建物だったのですぐ分かると思ったんですが、なかなか見つからず、皆で車を降りてうろうろしていたら、周辺の人が通報したのか、おまわりさんがやってきました。暗くなる時間だったので男数人が同じところを行ったり来たりしているのが犯罪でもしそうに見えたんでしょう。
 学生証とか見せて説明すると、おまわりさんはすぐに信じてくれました。というのもその廃墟を目当てでやっくる人もこれまでに居たそうです。ですが、おまわりさんに案内してもらって行ってみるとそこは更地になっていました。どうも僕らみたいに肝試しに来る輩が迷惑行為をするので持ち主が最近やっと取り壊したとのことでした。僕たちは
「廃墟とはいえ人の土地に勝手に入ってはいけない」
 と交番でおまわりさんに叱られるだけで帰してもらえました。
 次の日はサークルの他のメンバーに散々だった旅の話をお土産のお菓子を一緒につまみながら話していたんですが、一緒に旅行をした後輩の一人が
「実は更地でこんな物拾っちゃいました」
 と親指より少し大きめの人形をコトンと机にのせました。10年くらい前に流行った子供向けアニメのビニール人形です。敷地と道の境界あたりに落ちていたそうです。こんな物拾ってくるなよと皆笑っていました。そして人形はそのまましばらく部室に放置されていました。
 その間に部室ではいろいろ起きました。突然窓がたたかれたり、椅子や机が勝手に動いたり、うめき声みたいなのを聞いた人も居ました。人形を拾ってきた後輩は体調を崩して休学。絶対この人形が原因だと思うんですけど、誰もそれを言い出せないようでした。
 だから僕が……これ、置いていきます。すみません。あの土地に行くのも、もう嫌なんです。

――そう言って下村さんは、人形をテーブルに置いて、謝礼も受け取らず、逃げるように帰って行った。

――しばらく人形を眺めていると灰色の子供の手がテーブルの下から伸びてきて、人形を掴んでまたテーブルの下に消えていった。それきり人形は見ていない。
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