怪談レポート

№150 UFO

――坂北さんは怪談を話す前にブラインドを閉めるように言ってきた。

　確か今日みたいに蒸し蒸しとした日の夕暮れ時でした。一人暮らしの部屋で大学のレポートをしていたんですが、集中できなくて、エアコンを使うにはまだ時期が早かったので窓を開けました。
　風がすーっと入ってきて気持ちいいなあ、としばらく窓際でぼーっとしていたら、日が暮れかけている空にピカピカ何か光り出したんです。最初は飛行機かと思ったんですが、動き方がおかしい。同じ場所を行ったり来たりしてるんです。形も円盤のようです。ドローンかとも考えました。でも周りの建物と比較しても全然大きい。それこそ飛行機くらいはあります。そしてCDのように高速で回転しているんです。UFOとは何故か考えなかったんですよ。とにかくヤバいものが飛んでると。SNSで検索しても他に同じようなものを見ている人はいません。しばらく考えて大学の先輩に電話しました。

「すみません、Aビルの上になんか光っている円盤みたいなものが見えるんですけどあれってなんですかね」って。

　先輩は近くに住んでいて、先輩の部屋からも同じ場所が見えることは知っていました。先輩は寝ていたようで
「ちょっと待ってろ」
　とぼやけた声で答えて、カーテンが開く音がしました。しばらく外を眺めているような間があり突然

「馬鹿！　お前にはあれが円盤に見えるのか！」

　と怒鳴られました。

「どういうこですか？」
　と聞き返したんですが、がさがさという音の後、ドアを開く音、アスファルトの上を走る音、そして車のドアを開けてエンジンを掛ける音。もしかして電話が通じていることを忘れているんだろうかと、何度も声を掛けましたが、しばらくして電話は切れました。かけ直したり、メールしたりしましたが返事はありませんでした。そうしているうちに、円盤は消えていました。

　その数日後、海辺に先輩の車が放置されて居るのが発見され、中には先輩がうずくまっていたそうです。意識がなく、救急車で病院に運ばれる途中で亡くなったそうです。
　俺たちが住んでいる場所は、海から結構離れていて、車が発見されたのも俺がUFOみたいなものを見た場所とは全然違うところです。先輩は怪我とかもなく、俺が知っている限り病気もなかったので事件か事故かと最初思われたみたいですが、結局心不全で捜査が打ち切られたと聞いています。
　先輩はあの円盤が何に見えたんでしょうか。どうして俺は助かったんでしょうか。あれから、ちょっとカーテン開けるのが怖いんですよね。