怪談レポート

久世空気

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№147 捕食

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――鯨井さんは現在在宅で仕事をしているらしい。

 一人暮らしなんで全然人に会わないときもあります。買い物は行きますが、最近最寄りのスーパーがセルフレジを設置したため人と話すのは顧客や親、友達の電話の時くらいです。宅配が来て玄関のドアを開けることはありますが、人を家に上げることは全然ないですね。窓を開けることはありますが、マンションの5階以上に住んでいるんで、窓を開けても虫もほぼ入ってきません。
 それなのに、先日床に金魚が落ちていたんですよ。生きてるんです。さっきまで水の中にいたみたいに元気なんです。すぐに「ホラーだ!超常現象だ!」なんて考えませんでした。買った魚に付いていたかな。いや、買い物に行ったのはその前の日だし、切り身を買ったんだから雑魚に小さい蟹が混ざっているようなことがあるわけがない。
 なんて悶々と考え込んでいたら、ひょいと小さな影が目の前に現れました。猫でした。僕は猫なんて飼ってません。猫は金魚をパクッとくわえて噛まずにゴクンと飲み込み、さっと開いている窓から出て行きました。慌てて窓の外を見ましたがもう猫の姿はありませんでした。金魚がいたのも不思議でしたが、猫もなんで家の中に入ってきたのかも疑問でした。
 でもその日は、そういうこともあるだろうと気にしないことにしました。しかし一週間後、ふと床を見たらウサギがうずくまっていました。さすがにウサギはおかしいだろと固まっていたらテーブルの下から大型の犬が出てきました。犬の種類は分かりませんが結構獰猛そうな犬です。それがパクッとウサギを咥えて去って行きました。
 どこに行ったのか分かりません。窓から出られるサイズではなかったんですが、ふと家具の影に入ったと思ったらいなくなっていました。床には点々と血の跡が残っていたので、夢ではありません。
 そしてその一週間後の昨日、鹿がいました。もはやどうやって入ったかなんてどうでもいいですよね。そして天井から落ちてくるように虎が鹿を組み敷いて首に噛みつきました。バキバキと骨が折れる音もして、壁に血しぶきが飛びました。虎はしばらくぐちゃぐちゃと咀嚼した後、ぐったりする鹿を咥えて消えました。前の日の犬のように扉の影に入ったら消えていました。
 私の部屋で何が起こっているんでしょうか? 来週は何が起こるのでしょうか? もう気が狂いそうです。血の跡ですか? 怖くてすぐに拭きました。残しておいた方が良かったでしょうか?

――この話を聞いた翌週、鯨井さんは自室に侵入した変質者に襲われて死んでいる。犯人はあの部屋で鯨井さんを切り刻んでいたらしい。それ以上のことは報道されていない。
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