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№71 盗撮
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その写真が私の家のポストに入るようになったのは、高校生の時でした。
最初に見つけたのは母です。その日来た郵便物の一番下にあったそうです。それは私の家を写した写真でした。母は家族の誰かがいれたんだろうと思って、夕飯の時に聞いてきました。母と父、私と弟です。誰も知らなくて、なんか気持ち悪いね、というだけでその話は終わりました。
1週間くらいして今度は弟がその写真をポストで見つけました。
今度は玄関の写真でした。弟はその時少し嫌な予感がしたそうです。それですぐに母に伝えましたが、母はまた変ないたずらでしょ、と気にしませんでした。
さらに1週間くらいたって、今度もまた弟が写真を見つけました。家の中の写真を。さすがに母もおかしいと思って父に写真を見せました。父はすぐに交番に写真を持っていきましたが、あんまり深刻に話を聞いてくれなかったそうです。それでも私がまだ未成年の女子だということで巡回の際はうちのほうを気を付けて回ってくれるようになりました。
それでも新しい写真が投函されていました。見つけたのは母です。それは、とうとう、家の中の写真でした。再度父は交番に行きましたが、やはりあんまり相手にしてもらえなかったそうです。何か盗られたりとか、壊されたりとかいう被害がなかったからです。逆に弟のことを根掘り葉掘り聞かれたそうで……中学生だから悪戯してんじゃないのかって。それが父の逆鱗に触れて、結局私たちは隣の県に引っ越しすることになりました。
そして引っ越しする前日、その1枚は私が見つけました。ポストを開けたとたんぞっと寒気のようなものを感じました。そして「また来てる」と思いました。果たしてダイレクトメール等の下から写真が裏向きに出てきました。
私がそっとめくると、それは私の部屋の写真でした。眩暈を覚え、その場に座り込んでいました。頭の中に「不法侵入」とか「ピッキング」とか「ストーカー」とかそんな言葉がぐるぐると渦巻き、自然と涙がこぼれてきました。でも、ふと写真に違和感を覚えたんです。
私の部屋には姿見があります。姿見は写真のほぼ真ん中に映っていました。その中に、私の姿もあったんです。私が鏡を振り返っていました。家に帰って、自室に入って、扉を閉めて振り返る。その一瞬のように見えました。あの部屋に誰かいた? でもそれなら気づくし、隠れていたなら取れないような写真です。そう、こんな写真を撮れるのは、私だけなんです。そして今までの写真も全部、私の目の高さと同じ高さで撮られていました。私の目、私の目が撮っていたんです。
私は父と母に、私は一体何なんだと問いただしました。二人とも一体何を言ってるんだととぼけます。写真を見ても「確かにそう見えるけど」と濁すので、私は目を捨てました。あれから写真は来ていません。でも、まだ自分の正体がわからないうちは、安心できません。
――野原さんは白い杖をコンコンとリズム良く振って帰っていった。
最初に見つけたのは母です。その日来た郵便物の一番下にあったそうです。それは私の家を写した写真でした。母は家族の誰かがいれたんだろうと思って、夕飯の時に聞いてきました。母と父、私と弟です。誰も知らなくて、なんか気持ち悪いね、というだけでその話は終わりました。
1週間くらいして今度は弟がその写真をポストで見つけました。
今度は玄関の写真でした。弟はその時少し嫌な予感がしたそうです。それですぐに母に伝えましたが、母はまた変ないたずらでしょ、と気にしませんでした。
さらに1週間くらいたって、今度もまた弟が写真を見つけました。家の中の写真を。さすがに母もおかしいと思って父に写真を見せました。父はすぐに交番に写真を持っていきましたが、あんまり深刻に話を聞いてくれなかったそうです。それでも私がまだ未成年の女子だということで巡回の際はうちのほうを気を付けて回ってくれるようになりました。
それでも新しい写真が投函されていました。見つけたのは母です。それは、とうとう、家の中の写真でした。再度父は交番に行きましたが、やはりあんまり相手にしてもらえなかったそうです。何か盗られたりとか、壊されたりとかいう被害がなかったからです。逆に弟のことを根掘り葉掘り聞かれたそうで……中学生だから悪戯してんじゃないのかって。それが父の逆鱗に触れて、結局私たちは隣の県に引っ越しすることになりました。
そして引っ越しする前日、その1枚は私が見つけました。ポストを開けたとたんぞっと寒気のようなものを感じました。そして「また来てる」と思いました。果たしてダイレクトメール等の下から写真が裏向きに出てきました。
私がそっとめくると、それは私の部屋の写真でした。眩暈を覚え、その場に座り込んでいました。頭の中に「不法侵入」とか「ピッキング」とか「ストーカー」とかそんな言葉がぐるぐると渦巻き、自然と涙がこぼれてきました。でも、ふと写真に違和感を覚えたんです。
私の部屋には姿見があります。姿見は写真のほぼ真ん中に映っていました。その中に、私の姿もあったんです。私が鏡を振り返っていました。家に帰って、自室に入って、扉を閉めて振り返る。その一瞬のように見えました。あの部屋に誰かいた? でもそれなら気づくし、隠れていたなら取れないような写真です。そう、こんな写真を撮れるのは、私だけなんです。そして今までの写真も全部、私の目の高さと同じ高さで撮られていました。私の目、私の目が撮っていたんです。
私は父と母に、私は一体何なんだと問いただしました。二人とも一体何を言ってるんだととぼけます。写真を見ても「確かにそう見えるけど」と濁すので、私は目を捨てました。あれから写真は来ていません。でも、まだ自分の正体がわからないうちは、安心できません。
――野原さんは白い杖をコンコンとリズム良く振って帰っていった。
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