怪談レポート

久世空気

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№70 彼女の写真

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 彼女と旅行のついでに廃トンネルに行きました。そこは有名な心霊スポットで、車で行くとフロントガラスに手形がつくとか、下半身のない老婆が追いかけてくるとか、そんな噂がありました。
 僕が運転して彼女が助手席にいて、一体どんなところだろうとワクワクしていました。僕も彼女もあまり心霊とか信じてなかったんですよ。
 ああ、貴方のことを知ったときも、変な人がいるんだなぁ、儲かるのかな? なんて思いました。実際どうなんです? ……すみません、話を続けます。

 トンネルは確かに不気味でしたが、特に変なこともなく、写真だけ撮って帰りました。ホテルにつくと彼女が「さっきトンネルでとった写真、送って」と言ってきました。僕のスマホの方が夜間の写りが良いので二人で取り合っていたんです。
 まとめてLINEに送ったんですが、彼女が「私だけ写った写真がない」と言い出したんです。彼女のLINEを見せてもらうと、確かに僕の映っている写真しかありませんでした。スマホのフォルダを探してみると、ちゃんと彼女の写真はありました。でも全部顔の辺りに男のごつい手のような影が入り込んでいるんです。
 さすがに彼女も気持ち悪いだろうと思ったんですが、彼女は何故かすごく冷たい表情になって「全部消して」と言いました。僕は言われるがままに消しました。彼女はにっこり笑って「忘れよう」と言いましたが、実は一枚残していました。なんかの話題になるかなって。

 でもその後、知らない番号から何度か電話があって一度取ってみると「その写真を早く消しなさい」と知らない男性の声が言うんです。まぁ、消さなかったんですけどね。

 彼女とはその後すぐに別れました。そのときも「写真、全部消したんだよね?」ってしつこく聞かれて……。別れてから彼女の男関係が結構汚いことを聞いて、ひょっとしてそういう生き霊だったのかなと思っています。今では合コンの良いネタですよ、写真つきだし。結構うけるんです。

――根来さんはそう言うと笑顔でその心霊写真を見せてくれた。

 彼女? さあ、今はどうしているのか知りません。え? 貴方まで消した方がいいって言うんですか? うーん、わかりました。考えておきます。
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