怪談レポート

久世空気

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№62 相談

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――丹田さんは最初に呪いとは本当にあるのかと聞いてきた。

 すみません、話を聞いてくれるんですよね。先に話しますね。
 私の大学生からの友人を、仮に多木さんと高居さんとします。二人は学部が同じで就活でも同じような会社に面接に行ってました。お互い情報交換し合って、一緒の会社に入社したいねって話していました。私は一番に就活が終わったので二人の話をよく聞いていました。多木さんは「丹田さんはすごく話しやすい。何でも話せる」と良く言っていました。私も二人の役に立てるのがうれしかったんです。

 先に内定をもらったのは高居さんの方でした。二人が一緒に受けた会社でした。多木さんはこっそりと私に「本当は一番入りたかった会社なんだ」と少し悲しそうに言ってましたが、高居さんには笑顔で祝福していました。それだけなら、別によくある話だったんですけどね。

 私たちは偶然、その会社に高居さんの親戚がいることを知ってしまいました。しかも人事課に。面接にもいたそうです。もちろん、それだけでは内定は決まらないだろうし、高居さんはもともと優秀な人だったので、多少関係はあるかもしれませんが、高居さんは悪くないと思います。
 だけど公平ではないですよね。多木さんはそれを知ってだいぶ落ち込んでるみたいでしたが、高居さんに直接文句を言うことはありませんでした。

 しばらくぎくしゃくしていましたが、それが急に終わりました。高居さんが卒業を前に亡くなったんです。それが、あんまりいい死に方じゃなくて。夜遅くに彼氏と駅のホームにいたら数人の酔っ払いに絡まれて、彼氏がその一人を殴ったのがきっかけで高居さんも一緒に暴行されたんです。彼氏は意識不明になって、高居さんは一人で逃げようとしましたが、ふらついて、線路に落ちて、そこに通過の電車が……。

 お葬式とかは家族でしたそうですが、ご自宅にお線香をあげるのは許してもらえました。大学の友人数人で、もちろん多木さんも一緒に。
 その帰り多木さんが私に「丹田さんだから言うんだけどね」と前置きして話し始めました。

「私ね、高居さんに呪いをかけたんだよ」

 え? と聞き返しました。多木さんには何の表情もありませんでした。ただ黒い目で遠くを見つめています。私の視線に気付いて、ふと私に微笑みかけました。

「丹田さんがいてくれてよかった。何でも話せる友達がいて」

 それからも私は多木さんと友達でいます。友達をやめたら私まで呪われる気がして。もし呪いが嘘でも、友達をやめるべきなんでしょうか。
 私には誰に相談したらいいかわかりません。
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