62 / 254
№62 相談
しおりを挟む
――丹田さんは最初に呪いとは本当にあるのかと聞いてきた。
すみません、話を聞いてくれるんですよね。先に話しますね。
私の大学生からの友人を、仮に多木さんと高居さんとします。二人は学部が同じで就活でも同じような会社に面接に行ってました。お互い情報交換し合って、一緒の会社に入社したいねって話していました。私は一番に就活が終わったので二人の話をよく聞いていました。多木さんは「丹田さんはすごく話しやすい。何でも話せる」と良く言っていました。私も二人の役に立てるのがうれしかったんです。
先に内定をもらったのは高居さんの方でした。二人が一緒に受けた会社でした。多木さんはこっそりと私に「本当は一番入りたかった会社なんだ」と少し悲しそうに言ってましたが、高居さんには笑顔で祝福していました。それだけなら、別によくある話だったんですけどね。
私たちは偶然、その会社に高居さんの親戚がいることを知ってしまいました。しかも人事課に。面接にもいたそうです。もちろん、それだけでは内定は決まらないだろうし、高居さんはもともと優秀な人だったので、多少関係はあるかもしれませんが、高居さんは悪くないと思います。
だけど公平ではないですよね。多木さんはそれを知ってだいぶ落ち込んでるみたいでしたが、高居さんに直接文句を言うことはありませんでした。
しばらくぎくしゃくしていましたが、それが急に終わりました。高居さんが卒業を前に亡くなったんです。それが、あんまりいい死に方じゃなくて。夜遅くに彼氏と駅のホームにいたら数人の酔っ払いに絡まれて、彼氏がその一人を殴ったのがきっかけで高居さんも一緒に暴行されたんです。彼氏は意識不明になって、高居さんは一人で逃げようとしましたが、ふらついて、線路に落ちて、そこに通過の電車が……。
お葬式とかは家族でしたそうですが、ご自宅にお線香をあげるのは許してもらえました。大学の友人数人で、もちろん多木さんも一緒に。
その帰り多木さんが私に「丹田さんだから言うんだけどね」と前置きして話し始めました。
「私ね、高居さんに呪いをかけたんだよ」
え? と聞き返しました。多木さんには何の表情もありませんでした。ただ黒い目で遠くを見つめています。私の視線に気付いて、ふと私に微笑みかけました。
「丹田さんがいてくれてよかった。何でも話せる友達がいて」
それからも私は多木さんと友達でいます。友達をやめたら私まで呪われる気がして。もし呪いが嘘でも、友達をやめるべきなんでしょうか。
私には誰に相談したらいいかわかりません。
すみません、話を聞いてくれるんですよね。先に話しますね。
私の大学生からの友人を、仮に多木さんと高居さんとします。二人は学部が同じで就活でも同じような会社に面接に行ってました。お互い情報交換し合って、一緒の会社に入社したいねって話していました。私は一番に就活が終わったので二人の話をよく聞いていました。多木さんは「丹田さんはすごく話しやすい。何でも話せる」と良く言っていました。私も二人の役に立てるのがうれしかったんです。
先に内定をもらったのは高居さんの方でした。二人が一緒に受けた会社でした。多木さんはこっそりと私に「本当は一番入りたかった会社なんだ」と少し悲しそうに言ってましたが、高居さんには笑顔で祝福していました。それだけなら、別によくある話だったんですけどね。
私たちは偶然、その会社に高居さんの親戚がいることを知ってしまいました。しかも人事課に。面接にもいたそうです。もちろん、それだけでは内定は決まらないだろうし、高居さんはもともと優秀な人だったので、多少関係はあるかもしれませんが、高居さんは悪くないと思います。
だけど公平ではないですよね。多木さんはそれを知ってだいぶ落ち込んでるみたいでしたが、高居さんに直接文句を言うことはありませんでした。
しばらくぎくしゃくしていましたが、それが急に終わりました。高居さんが卒業を前に亡くなったんです。それが、あんまりいい死に方じゃなくて。夜遅くに彼氏と駅のホームにいたら数人の酔っ払いに絡まれて、彼氏がその一人を殴ったのがきっかけで高居さんも一緒に暴行されたんです。彼氏は意識不明になって、高居さんは一人で逃げようとしましたが、ふらついて、線路に落ちて、そこに通過の電車が……。
お葬式とかは家族でしたそうですが、ご自宅にお線香をあげるのは許してもらえました。大学の友人数人で、もちろん多木さんも一緒に。
その帰り多木さんが私に「丹田さんだから言うんだけどね」と前置きして話し始めました。
「私ね、高居さんに呪いをかけたんだよ」
え? と聞き返しました。多木さんには何の表情もありませんでした。ただ黒い目で遠くを見つめています。私の視線に気付いて、ふと私に微笑みかけました。
「丹田さんがいてくれてよかった。何でも話せる友達がいて」
それからも私は多木さんと友達でいます。友達をやめたら私まで呪われる気がして。もし呪いが嘘でも、友達をやめるべきなんでしょうか。
私には誰に相談したらいいかわかりません。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ジャングルジム【意味が分かると怖い話】
怖狩村
ホラー
僕がまだ幼稚園の年少だった頃、同級生で仲良しだったOくんとよく遊んでいた。
僕の家は比較的に裕福で、Oくんの家は貧しそうで、
よく僕のおもちゃを欲しがることがあった。
そんなある日Oくんと幼稚園のジャングルジムで遊んでいた。
一番上までいくと結構な高さで、景色を眺めながら話をしていると、
ちょうど天気も良く温かかったせいか
僕は少しうとうとしてしまった。
近くで「オキロ・・」という声がしたような、、
その時「ドスン」という音が下からした。
見るとO君が下に落ちていて、
腕を押さえながら泣いていた。
O君は先生に、「あいつが押したから落ちた」と言ったらしい。
幸い普段から真面目だった僕のいうことを信じてもらえたが、
いまだにO君がなぜ落ちたのか
なぜ僕のせいにしたのか、、
まったく分からない。
解説ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
近くで「オキロ」と言われたとあるが、本当は「オチロ」だったのでは?
O君は僕を押そうとしてバランスを崩して落ちたのではないか、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる