怪談レポート

久世空気

文字の大きさ
上 下
60 / 254

№60 学校の怪談

しおりを挟む
 もう20年も前なんだけどね。

――と、清田さんはゆっくりと思いだしながら話し始めた。

 小学生の時、俺は怖い話とか大好きで、いわゆる学校の怪談? 七不思議ってやつ? ああいう話を聞いたり見に行ったりしてた。プールに漂う黒髪、体育館で跳ねる生首、音楽室の人食いピアノ、理科室の生きてる人体模型、校舎裏の幽霊の家、校庭に突然現れる地獄の入り口、そしてトイレに住む子供の幽霊。トイレは花子さんが有名だけど、あれには男バージョンのトイレのヨウスケ君っていうのがいて……あ、知ってる?
 とりあえず、そんな七不思議を昼休みとか放課後に探検してたね。うん。もっと何かあった気がするけど、普通に誰それが幽霊を見たとか不思議な声を聞いたとか、ちょっと盛り上がってすぐ消える軽い怪談だったかな。

 ま、そんな感じで放課後、友達数人と校内を練り歩くのが日課になっていたんだけど、その日はやけに静かで、今日は皆帰るの早いななんてしゃべってた気がする。
 あれは校舎の3階だったかな。夕陽がすごく赤かったのを覚えてる。そろそろ帰るかって空気になってたんだけど、誰かが「あれ何?」って聞いてきたんだ。俺達はちょうど廊下の端にいたんだけど、反対側の端に何かある。最初は気づかなかったけど、白っぽい何かがあるなあって言われて気付いた。
 人じゃなかった。人なら服着てるだろ? 確かに人くらいの大きさだけど、全部白いの。それがこっちに来はじめた。全身タイツ? って思ったけど、頭がやたら大きくて、でも筒みたいだったけど両手両足みたいなものを振りながら近づいてきて、俺たちの前で止まった。ロボットみたいだったけど、風船みたいに軽い感じで、あと見た目は埴輪? 土偶? あんな感じで単純な人間の見た目をしていた。

 それから後の記憶があんまりない。はっきりしたのは病院だった。俺たち全員校庭で倒れてて、衰弱しきってたって。あちこち擦り傷があるから何か事件に巻き込まれたんじゃないかって大人たちに聞かれたけど、示し合せたわけじゃないけど、俺達は「覚えてない」って言い張った。その後、もう怪談探検はしなくなって友達はバラバラ。

 でもね、少し覚えてることがある。あの白い奴、俺達を全員吸い込んだんだよ。口みたいなものがパカッて開いて。一人吸い込んだら吐き出して、逃げたやつを追いかけてまた吸い込んでまた吐いて。意味わかんないだろ? 俺も現実にあったかどうかわからねえ。でも逃げて捕まってを繰り返してたからあんなに怪我してたんだと思う。

 で、結局あれが何だったかわかんねぇ。ネットで調べてもそんな怪談見つからない。そもそもあんなに怪談集めてた俺たちの耳にも一切入ってこなかったんだ。
 な、あんたなら知ってるんじゃないか? あれが何だったのか。 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味が分からないと怖い百物語

悪夢
ホラー
1話20秒で読めるような話を投稿していきます、解説、ヒント付きです

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

怪異語り 〜世にも奇妙で怖い話〜

ズマ@怪異語り
ホラー
五分で読める、1話完結のホラー短編・怪談集! 信じようと信じまいと、誰かがどこかで体験した怪異。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

やってはいけない危険な遊びに手を出した少年のお話

山本 淳一
ホラー
あるところに「やってはいけない危険な儀式・遊び」に興味を持った少年がいました。 彼は好奇心のままに多くの儀式や遊びを試し、何が起こるかを検証していました。 その後彼はどのような人生を送っていくのか...... 初投稿の長編小説になります。 登場人物 田中浩一:主人公 田中美恵子:主人公の母 西藤昭人:浩一の高校時代の友人 長岡雄二(ながおか ゆうじ):経営学部3年、オカルト研究会の部長 秋山逢(あきやま あい):人文学部2年、オカルト研究会の副部長 佐藤影夫(さとうかげお)社会学部2年、オカルト研究会の部員 鈴木幽也(すずきゆうや):人文学部1年、オカルト研究会の部員

処理中です...