怪談レポート

久世空気

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№51 ショッピングモール

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 古い建物にはやっぱり何かあるんでしょうか?

――大下さんは近所のショッピングモールに行ったそうだ。

 昔からある建物で、中の店は少しずつ変わっていますが内装も外装もほとんど変わりないですね。エレベーターも、もちろん点検とかはしていると思いますが私が子供の時と同じものを使っています。

 4階にある本屋さんに行った帰り、いつも通りエレベーターを使いました。乗った時は私一人だったのですが、ドアが閉まる瞬間小さな女の子がするっと入り込んできました。小学生低学年くらいでしょうか。いまどきの、おしゃれな服装と凝った髪型が似合う可愛い女の子です。子供が一人で来てもおかしくない場所なので特に気にしなかったのですが、突然その子に話しかけられました。

「これ、どこに行くの?」

 何を聞かれたのかわからずぽかんとしてしまいましたが、その建物は5階まであるのでもしかして上に行くエレベーターと間違えたのかと気づきました。

「下の階に行くよ」

 と教えてあげると、いまいちわかっていないようで首を傾げていました。

「どこに行きたいの?」

 と今度はこちらから聞いてみました。すると

「おかあさんのところ」

 と答えました。ひょっとしたら迷子何だろうかと思い、1階についたら案内所に連れていこうと考えたところでエレベーターの階数の表示が2階を通り過ぎました。
 そして……よくわからないんですが1階を通り過ぎたんです。その建物は地下なんてありません。1階についたのに故障でドアが開かなかった、というのではないんです。エレベーターが降下している感覚は確かにありました。私は
「え? あれ?」
 とパニックになっていましたが女の子はじっとドアを見つめていました。そして、大体3階分くらい下がったところでエレベーターは止まりました。ドアが開く寸前、女の子が振り返った気がしました。でも私は突然の潮の香りと押し寄せる水で気を失いました。たぶん溺れたんだと思います。
 次に気が付いたとき私は救急車の中でした。ショッピングモールのエレベーターの中でびしょぬれで倒れていたそうです。息もしていなかったからいろんな人に助けてもらったって。女の子は誰も見ていないようです。

 不思議ですよね。近くに海なんてないのに。あの海水はどこから来たんでしょう?
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