怪談レポート

久世空気

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№37 岩場

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 高校生の時、私は男性教師と付き合っていました。今思うと馬鹿だなぁと冷静に判断できますが、あの頃は完全にのぼせ上がっていました。イケメンで背も高くて親しみやすい雰囲気があったんです。でも楽しかったのは最初だけで、だんだんつらくなってきました。メールでずっと説教し出して、私が返信を止めると電話で怒鳴ったり、クラスメイトの他の女の子と胸のサイズを比べられたり、あの子からアプローチされたとか私の嫉妬心をあおるようなことを言ったり……遊ばれてたんですよね。それなのに馬鹿な私必死で彼の気持ちをつなぎとめようと、言われるがまま……でした。

 付き合って1年くらいの時、学校の行事で海に行きました。救命救護のレクチャーとか建前はありましたが、ほとんど遊びでしたね。残念ながら私は体調が悪くて泳げませんでした。
 他に海に入れない子と砂浜で遊んでいたら、彼がふと横切っていきました。彼は引率の教師の一人でした。目で追うと、彼は岩場に立っていた女の子に誘われるように歩いていきます。見たことがない子でしたが同じ高校の制服を着ていました。「浮気」の二文字が頭を過りました。嫉妬させる為にわざわざ見える場所を通ったんだと怒りで頭が熱くなりました。
 私は二人を追いかけました。姿は見えなくなっていましたが、足元の悪い岩場を慎重に歩いていくと私達がいた砂浜とは違う砂浜が出てきました。そこは岩場に挟まれた狭い砂浜でした。そこに先生は倒れていました。周りをいろんな制服を着た女の子が10人くらいで囲んでいます。先生が苦しそうに転がると転がった先にいた女の子が爪先で軽く蹴ります。また転がるとその先にいた子が蹴る。それを繰り返していました。
 私は助けなきゃと思いながらも怖くて動けなくなっていました。先生は私に気付き呻きながら私に手を伸ばしました。気が付くと横にさっき先生を誘い込んだ女の子が立っていました。そのは憐憫のまなざしで私を見ていました。ショックでした。気づかないうちに、いえ、気づかないようにしていた自分の落ちぶれた姿をあの子に見られてしまったという恥ずかしさで私は先生を見捨ててその場を立ち去りました。そして誰にも言いませんでした。

 先生がいなくなり騒ぎになりましたが、その晩に岩場に挟まれた砂浜で遺体が発見されました。不思議なことに死因は心不全でした。外傷はほとんどなかったそうです。
 イケメンの人気教師が死んだことで、今まで表に出なかった噂がまるでストッパーが外れたように流れ出しました。前の年に自殺した上級生は、先生と付き合っていて中絶させられ振られたとか、前の学校でも何人もの女子生徒に手を出していたとか。根も葉もないとは私は言えません。ただ少なくとも先生の死には前年に自殺した上級生の呪いもあったのではと。友達にその上級生の写真を見せてもらったんです。間違いなくあの時岩場で私の横に立ったあの子でした。
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