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№33 スモック
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先日の大雪の時の話です。
――向井さんは寒そうに肩を抱きながら話始めた。
高校の帰りに友達二人とどこかで遊ぼうかって話になったんです。雪が珍しくて、このまま帰るのはもったいないなって。3人ともいつもは自転車通学なんですが、雪道が危ないと思ってあの日だけは徒歩でした。だから多少帰りが遅くなってもいいよねって公園に寄り道しました。
公園はもちろん小さい子供が遊んだ後で、ほとんどきれいな雪はありませんでした。でも昼からも少し降ったから、ほんの少しのきれいな雪を集めて小さな雪だるまを作ったり、シャーベットみたいになった雪の塊を踏んだりして遊びました。そこでまた雪が降ってきたんです。すごいすごいと喜んだのもつかの間、吹雪みたいになって私たちは滑り台の下に身を寄せあって動けなくなりました。
はい、あの日はそんな急な天気の変化はなかったそうですね。でも確かに私たちは小さな公園の外も白く見えなくなるほどの吹雪に遭いました。
その白い景色の中にふと幼稚園くらいの子供が現れたんです。見たことのないうす緑のスモックを着て同じ色のブーツをはいていました。友達の一人が「あぶないよ、こっちにおいで」と叫びましたが反応しません。私にはその子がなんだか不気味でした。小さな子供が吹雪の中、平然と立っているなんて変です。それでも友達は手を伸ばしてその子を引き寄せようとしました。突然、白の景色の中からたくさんの子供の手が現れて友達を掴んで引っ張ったんです。友達は「あっ」と言って倒れたまま動きません。友達を引っ張ったのは同じようなうす緑のスモックを着たたくさんの子供たちでした。
「おかあさんだ! おかあさんだ!」
と彼らは叫び倒れた友達を運び始めます。
「連れていかないで!」
と私は思わず叫びました。その時いつの間にか私たちのすぐそばまで来ていた最初の子供が、私たちを見上げていったのです。
「誰にも言うなよ?」
その後の記憶はありません。私ともう一人の友達は公園に倒れていたところを近所の人に発見され病院に運ばれました。あの子供たちに連れていかれた友達は今も行方不明です。
――話してよかったんですか? と私は向井さんに尋ねた。
良いんです。真っ先に子供たちのことを大人に話した友達は次の日、部屋で凍死していました。私もたぶんそうなるでしょう。ここまでしないと、大人って私たちの言う事を信じてくれないんですよ。
――向井さんは寒そうに肩を抱きながら話始めた。
高校の帰りに友達二人とどこかで遊ぼうかって話になったんです。雪が珍しくて、このまま帰るのはもったいないなって。3人ともいつもは自転車通学なんですが、雪道が危ないと思ってあの日だけは徒歩でした。だから多少帰りが遅くなってもいいよねって公園に寄り道しました。
公園はもちろん小さい子供が遊んだ後で、ほとんどきれいな雪はありませんでした。でも昼からも少し降ったから、ほんの少しのきれいな雪を集めて小さな雪だるまを作ったり、シャーベットみたいになった雪の塊を踏んだりして遊びました。そこでまた雪が降ってきたんです。すごいすごいと喜んだのもつかの間、吹雪みたいになって私たちは滑り台の下に身を寄せあって動けなくなりました。
はい、あの日はそんな急な天気の変化はなかったそうですね。でも確かに私たちは小さな公園の外も白く見えなくなるほどの吹雪に遭いました。
その白い景色の中にふと幼稚園くらいの子供が現れたんです。見たことのないうす緑のスモックを着て同じ色のブーツをはいていました。友達の一人が「あぶないよ、こっちにおいで」と叫びましたが反応しません。私にはその子がなんだか不気味でした。小さな子供が吹雪の中、平然と立っているなんて変です。それでも友達は手を伸ばしてその子を引き寄せようとしました。突然、白の景色の中からたくさんの子供の手が現れて友達を掴んで引っ張ったんです。友達は「あっ」と言って倒れたまま動きません。友達を引っ張ったのは同じようなうす緑のスモックを着たたくさんの子供たちでした。
「おかあさんだ! おかあさんだ!」
と彼らは叫び倒れた友達を運び始めます。
「連れていかないで!」
と私は思わず叫びました。その時いつの間にか私たちのすぐそばまで来ていた最初の子供が、私たちを見上げていったのです。
「誰にも言うなよ?」
その後の記憶はありません。私ともう一人の友達は公園に倒れていたところを近所の人に発見され病院に運ばれました。あの子供たちに連れていかれた友達は今も行方不明です。
――話してよかったんですか? と私は向井さんに尋ねた。
良いんです。真っ先に子供たちのことを大人に話した友達は次の日、部屋で凍死していました。私もたぶんそうなるでしょう。ここまでしないと、大人って私たちの言う事を信じてくれないんですよ。
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