怪談レポート

久世空気

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№31 顔合わせ

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 私は幽霊がはっきり見えます。生きている人間みたいに。

――間島さんがテーブルの一点を見つめながら話始めた。

 でも区別はつきます。生きていれば呼吸しますよね? 鼻、口、皮膚呼吸……生きているだけで空気は動くんです。でも幽霊だと呼吸する必要がないのでそれがありません。だから、まぁ、近づかないと気づけないですね。

 去年、私は結婚を考えている彼氏がいました。そろそろ……と二人で考えて、お互いの両親に挨拶に行くことになりました。私の家族は家で挨拶して、なんの問題もなく穏やかに終わりました。彼もほっとしいました。
 彼の両親とは後日レストランでお会いすることになりました。それは彼の両親の希望でした。私もそっちの方が緊張しないですむと安心しました。彼は奮発してとても良いレストランを予約してくれました。
 当日待ち合わせ場所に行くと、彼とご年配の夫婦と彼より少し年上の女性が待っていました。見つけたときに「あれ?」と思いました。彼は両親と弟を連れていくと言っていたのです。あの女性は誰だろうと。近づいたところで私はその女性が幽霊とわかりました。女性だけではありません。彼の両親と思っていた夫婦も。

「ごめん、弟のバイトが終わらなくてさ、3人で遅れてくることになったよ。場所は親父が知ってるから大丈夫」

 彼氏がしゃべると後の三人はにこにこ笑っていました。

 彼に幽霊がついているのを初めて見ました。通りすがりの霊ではなく彼が歩けば後をついてくるのです。レストランにつくと予約していた席に案内されました。彼の両親と弟の席には当たり前のように幽霊がにこにこ笑いながら座りました。そして10分ほどして彼の家族が到着しました。両親も弟も遅刻したことを何度も謝ってくれましたが、それより座っている幽霊が気になります。
 そして3人が椅子に座っても幽霊は座ったままでした。私には両者が重なり合って見えるのです。気分が悪くなりましたが、徐々に幽霊は消えていきました。ほっと息をつこうとして、その瞬間固まりました。3人の顔が幽霊たちと同じようなにこにこ笑顔になっていたのです。彼は普通に両親の紹介をしたり私を紹介してくれたりと喋り続けていました。

 あれは乗り移ったんでしょうか? それならあの3人の本当の魂はどこへ行ったんしでしょう? それとも彼らは元々とりつかれていたんでしょうか? 結婚は当然できませんでした。彼には別れるとき、見たものを素直に話しましたが、逆に何かごまかしてるんだろうと疑われ、最後はとことん嫌われてました。でも、それでよかったのかもしれません。あの家族と一切の縁が切れたのですから。
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