怪談レポート

久世空気

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№29 実家

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――平郡さんは脂汗をかき、青い顔をしていた。

 私の家は子供のころ「お化け屋敷」と言われていました。
 本当にお化けが出るんじゃなくて、ただ古かっただけなんですが。ちょうど近所に新しいマンションが建ったり、鉄道が通って開発が目まぐるしかった時期で、古いものと新しいものが混在していました。私の実家は特に年季が入っていて目立ってました。
 そうはいっても、一般的な二階建てだったし、改装改修は豆にしていたのでボロ屋ではなかったです。子供には古かったら「お化け屋敷」に見えたんでしょうね。まあ、それで虐められることはなかったですよ。私もそれで家を覚えてもらって嬉しかったので。

 大学を進学すると同時に地元を出て一人暮らしを始めました。そのまま就職して、盆と正月以外は実家には帰らない生活をしていました。1か月くらい前にインターネットをしていた時、実家らしき建物が紹介されていました。「悲劇の一家が地縛霊として取り憑いている心霊スポット」として。ただ私が盆に帰省した時より掲載されていた写真の家が古く見えたので最初は気づきませんでした。
 地元の友人に連絡し、確認してもらいました。すると「確かに地元のお化け屋敷だよ。お前の実家じゃない」とよくわからないことを言われました。よく聞いてみるとお化け屋敷は私たちが子供のころから誰も住んでおらず、私の実家は別だというのです。そこで軽く言い合いになり、それじゃあと、年末にあって確認することにしました。私はそもそも帰省するつもりだったので。

 友人と実家に行き私は愕然としました。インターネットにあったボロ屋だったのです。父も母もいません。ほらな、と友人は得意げに言いましたがそんなことより私の実家はどこだと聞くと友人は黙ります。友人も電話してからずっと考えていたそうですが私の実家を思い出せないのです。子供のころ何度も家で遊んだはずなんですが。実家の電話も父母の携帯電話も掛けましたが、どちらも使われていませんでした。警察にも相談しましたがそもそもあの家は50年くらい所有者と連絡が取れなくなってずっとそのままだと言われました。

 先日一緒に両親を探してくれていた友人と連絡が取れなくなりました。そして昨日、役所に確認しましたが私の戸籍が消えていました。何か言われましたが私は逃げてきました。

 実家や家族の記憶はあるんです。でも全部消えていくんです。あのインターネットに載っていた悲劇の一家の家系図、詳細は不明ですが、私の家族とよく似てるんですよね。でも悲劇的なことなんて何もないです。ただ、普通の家族だったんです。

――話は終わったようだったので、私は平郡さんに渡す謝礼をデスクの引出しから出し顔を上げた。ソファには誰も座っていなかった。
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