怪談レポート

久世空気

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№26 贈物

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 こんな時間にすみません。私の話を信じてもらいたいのと、12月24日の夜は一人でいたくないので……。証明する必要はないんですか?

――灰田さんは上品なスーツを着た老婦人だった。

 去年までは夫も居たので平気だったんですが、今年の夏に他界しました。ええ、老衰ですよ。今年は初めてひとりきりのクリスマス・イブです。

 私がまだおかっぱの少女だったとき、25日の朝、私の枕元に可愛らしい一松人形が置いてありました。その時代はまだサンタクロースは今ほど有名ではなかったので私は首を傾げて父母に尋ねました。父母も首を傾げ、祖父母も知らないといいました。私の実家は当時、それなりに大きな工場だったので従業員の誰かが置いていったのだろうということになりました。私は不思議でしたが、大人たちがそう言うのだからと納得しました。

 しかしそれは毎年起こりました。ある時はサンタクロースというものを知り、なんだそうだったんだと安心し、それが伝説上の物だと知るとやはり両親の仕業ではと疑いました。戦時中もあったんですよ。物資がない時だったんですが、上等な反物がね。母は「今はありがたいと思わないとね」と無表情でいうとそれをすぐに売りに行きました。

 戦争が終わって結婚するときに改めて父母に尋ねました。ですがやはり答えは「違う」「私たちもあれがどうして送られてくるのか判らない」。何度も徹夜で正体を確認しようとしたそうです。それでもいつの間にか私の枕元にはいつも何か置いてある。そして結婚してからも続きました。夫は最初、不気味がりました。でも人間って習慣になるとそれに対する感情が失われてしまうんですよね。そもそも贈り物が置いてあるだけで手紙や要求等があるわけではない。何年かすると、今年もか、と流せるようになっていました。

 私たちの間に子供は出来ませんでした。ずっと二人でした。お互いの父母も逝ってしまい、先ほど申した通り夫とも死別しました。そこで急に怖くなったのです。私が無防備に寝ているときに見知らぬ誰かが現れる恐怖。……あれがいつ来るかわかりませんが、夜明けまで後3時間位でしょうか。このままおつきあいください。

――灰田さんが話し終えたと同時にドアの向こうで音がした。私が出てみるとブランドの紙袋が置いてある。灰田さんに許可を得て中身を確認すると宝石をあしらった大きめのブローチだった。

 差し上げますわ。

――老婦人が帰った後、ブローチについて調べると、私が彼女に支払った謝礼の数百倍の値段だった。
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