怪談レポート

№20 スタンプ

こんなのでも怪談になるんですかね。いえ、なんか、よくわからなくて、とにかく誰かに聞いてほしくて。

　SNSで使うスタンプって知ってますか？　イラストで簡単に気持ちを表せるツールですよね。なんか、当たり前に使ってるから、改めてスタンプって何って考えるの変ですよね。でもそんな感じだから、ちょっと違う解釈したくなるっていうか、メッセージとか挨拶とか、そういう意味に取らないスタンプが出来たんです。
　「呪いのスタンプ」って皆呼んでいました。もちろんそういう意味で売り出してるものじゃないですよ。ある大手企業が販売促進のために無料で配っているキャラクターのスタンプです。見た目は本当に普通のスタンプなんですけど、誰かに送るとその人が心臓発作で死んじゃうという噂がありました。死にたくなかったら、他の人２人に同じスタンプを送らないといけないんです。
　昔の「不幸の手紙」に似ていますよね。ただスタンプは誰が送ったかわかるし、見た目も可愛かったからほとんど冗談みたいなものでした。友達同士だし。実際に送られても「ひどーい！」「ごめーん！」で済みましたし、他の人にスタンプを回す人も少なかったんじゃないかな。

　ある時、高校の友達と喧嘩しました。本当にくだらない喧嘩です。確か試験前でちょっとピリピリしてて、そんな時に勉強のやり方でお互い意見し合った感じでした。だからどっちが悪いとかそんなのもなかったんです。ただ私も友達もむきになってたんです。
　家に帰ってからSNSから「呪いのスタンプ」を送りました。すぐに既読がついて返事がありません。私はいらついてさらにスタンプを連続で送りました。既読はつくんですが返信は全く来ないんです。私は徐々に怖くなっていきました。くだらない喧嘩が本当の本気の喧嘩になってしまうんじゃないかって……。
　だからSNSはやめて電話しました。謝ろうと思ったんです。直接話せば最悪の事態は免れるんじゃないかって。友達だったから……。でもスマホの電源が入ってないようで繋がりませんでした。
　結局その日は電話が繋がらなくて、次の日の朝一番に謝ろうと思ったんですが……友達は喧嘩した日の下校中に駅のホームから足を踏み外して通過電車にひかれて死んでいました。私がスタンプを送った時にはすでに……。

　不思議なんですが、友達がひかれたときスマホを持っていたのでスマホも衝撃でばらばらになったそうなんです。あの既読はどうして付いたんでしょう。それだけがわからないんです。

――私は、話してくれた藤谷さんに「呪いのスタンプ」がどんなものか聞いてみた。しかし無料配信のスタンプだったため、すでにサービスが終了していて見ることはかなわなかった。