怪談レポート

久世空気

文字の大きさ
上 下
12 / 254

№12 早寝早起き

しおりを挟む
 僕、いつもは早寝遅起きなんです。はい、夜も朝も眠たくて。

――はにかむように笑った志田さんは近所の高校の制服を着ていた。

 だから学校から帰ったらすぐに宿題をするし、寝る前に次の日の支度をしてギリギリまで寝れるようにしてるんです。
 ただこの前の期末試験は内容がどの科目も難しくて。だから前日はもう完徹してでも勉強しておこうって初めて徹夜で勉強することにしました。
 数学の計算をやり直していた時、窓がトントンって鳴ったんです。風かと思って気にしていなかったけど、次に「おーい」って間近で呼ばれたんです。窓から誰か来たのかとカーテンを開けたら、そこには僕がいました。僕が今にもノックしようと軽く握った拳を振り上げたところだったんです。外にいた僕はぽかんと口を開けたまま徐々に空気に解けるように消えてしまいました。僕は窓を開けて外に顔を乗り出しましたが、やはり誰も居ません。寝ぼけて幻覚でも見たのかと思いました。
 だけど窓を閉めた瞬間、部屋のドアが開きました。そして「はーい」と言いながら僕が入ってきたのです。さすがに叫びました。すると向こうも肩をすくめて怯えるようなしぐさを見せ、また煙のように消えてしまったのです。ドアは自然に閉まりました。慌てて開けて部屋の外を見ましたが誰も居ません。

 もう訳が分からなくて勉強どころではなくなりました。あれがドッペルゲンガーというものなんだろうか。見てしまった僕は死ぬのか。寒気がしたところでまた窓がノックされました。そして「おーい」という呼び声。私はカーテンを開かず外の気配をうかがいました。「はーい」またドアが開きました。そして僕を見て消えてしまいます。もう耐えられなくなって、僕は布団にもぐりこみました。そしたらまた、トントン「おーい」ガチャ「はーい」。さらに窓が開く音、窓が閉まる音。息をひそめて待ちました。自分の心臓の音しか聞こえなくなったので、僕はそっと布団の隙間から顔を出しました。

 のぞき込まれてましたよ。二人の僕から。その瞬間失神してしまい、気が付いたら朝でした。部屋はいつもと変わらず。ドアも閉まってるし窓も開いてなかった。でも、それ以来その部屋は使ってません。

――志田さんはふーっと息を吐いて、私がいれた茶を飲んだ。

 もしかすると今までも僕が寝ている間にあの二人は僕の寝顔を見ていたのかもしれないんですよね。そう思うと不気味で気持ち悪くて。今の部屋は鍵もかかるし窓もない。……例の部屋? 姉が使ってますよ。姉もまた早寝遅起きなんです。

――志田さんは健康的な白い歯を見せてにかっと笑った。 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

コ・ワ・レ・ル

本多 真弥子
ホラー
平穏な日常。 ある日の放課後、『時友晃』は幼馴染の『琴村香織』と談笑していた。 その時、屋上から人が落ちて来て…。 それは平和な日常が壊れる序章だった。 全7話 表紙イラスト irise様 PIXIV:https://www.pixiv.net/users/22685757  Twitter:https://twitter.com/irise310 挿絵イラスト チガサキ ユウ様 X(Twitter) https://twitter.com/cgsk_3 pixiv: https://www.pixiv.net/users/17981561

【死に文字】42文字の怖い話 【ゆる怖】

灰色猫
ホラー
https://www.alphapolis.co.jp/novel/952325966/414749892 【意味怖】意味が解ると怖い話 ↑本編はこちらになります↑ 今回は短い怖い話をさらに短くまとめ42文字の怖い話を作ってみました。 本編で続けている意味が解ると怖い話のネタとして いつも言葉遊びを考えておりますが、せっかく思いついたものを 何もせずに捨ててしまうのももったいないので、備忘録として 形を整えて残していきたいと思います。 カクヨム様 ノベルアップ+様 アルファポリス様 に掲載させていただいております。 小説家になろう様は文字が少なすぎて投稿できませんでした(涙)

すぐ読める短篇怪談集

能井しずえ
ホラー
日常に潜むこの世ならざる物事との出会いをサクッと綴ります。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

怖い話短編集

お粥定食
ホラー
怖い話をまとめたお話集です。

意味が分かると怖い話 考察

井村つた
ホラー
意味が分かると怖い話 の考察をしたいと思います。 解釈間違いがあれば教えてください。 ところで、「ウミガメのスープ」ってなんですか?

風見星治
ホラー
心が、喉が、渇く

処理中です...