双子は神隠しから逃れたい!~変人な姉と腹黒な妹の非日常2人暮らしwith時々神~

大柳 律

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原始・古代

実々:センスってなんだ

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 まったり過ごしていたら気付けば夕方になり、あーちが急に大きい声で、
 
 「で、出来たっ!」 
 
 と、叫んだ。
 『出来て良かったねぇ~』と、心の中で軽く拍手を送ってあげた。
 しかし、呼ばれるまではこの小説を読み続けたい。今はめっちゃ続きが気になるところだから!
 しかし無情にもあーちのコールは早かった。

 「みーち!出来たから見てみて!んで、分からないとことか疑問があったら、うちに気を遣いながら聞いて!」
 「ほぅ…どれどれ」

 ……仕方ない、行ってやるか。
 ていうか注文多いな。
 読んでいた文庫にしっかり栞を挟んでからあーちの所へ向かう。

 「では、拝見します」


 ………………。【わたし日本史まとめるしの内容】


 「…どうだった?」

 私が読み終わり、キンちゃんから目線を外すと同時に前のめりに聞いてきた。
 まず私が言いたいのは内容うんぬんよりも……

「まず、最初の【わたし日本史まとめるし】って何?なんかギャルっぽいし」
 
 ということが気になる。
 ギャルっぽいし馬鹿っぽい。
 しかしあーちは私の指摘を予想だにしていなかったのか目を丸くしながら言い返してきた。

 「えぇっ!この全体のタイトルに決まってるじゃん!これ考えるのに10分は使ったよ?『私の日本史』とかにすると自由研究みたいだし、それこそおかしくなっちゃうでしょ?このタイトルにはまとめるよって気概とまとめる紙って意味を込めてあるの。ちなみに、完成した暁には『わたし日本史まとめたし』になるから!」

 ……知らねぇよ。
 しかもアレでしょ?
 わた『し』日本『し』まとめる『し』って韻を踏んでる所気に入っちゃってる感じでしょ?……眼がキラッキラしちゃってるもんね。
 あとタイトルからあーちの言う『気概』ってやつ微塵も滲み出てきてないから。
 軽薄な感じしか出てないよ。

 「タイトルはまだ始まったばかりだし、追々良いのが浮かんだら変えれば良いか」
 「改良前提なの!?」

 …改良するに決まってるでしょ。
 『信じられないッ!』って顔しても駄目だよ。
 あーちよ、私達の童顔な見た目はこの際置いておいて…私達はもうアラサーなのよ?
 そしてかなちゃんが日本史やる時はもうアラフォーど真ん中なんだよ?
 その時にこれをあーちが嬉々として見せてきて、私の愛しいかなちゃんがこの纏めのタイトルで困惑してるのがもう嫌でも想像出来ちゃうよ。
 変な空気に耐えられるの?……子供を困らせないでおくれよ。

 あと、かなちゃんの件を除いてもシンプルに私がこのタイトルが気に入らないっていうのも勿論ある。……ダサいでしょ。
 そして冒頭の『※プ●ジェクトX風に読んでね♪』の注意書きって必要かなぁ?
 かなちゃん観たことないし、先ず読み始める前にプ●ジェクトXの説明から入らないといけなくなるよ?
 というかそもそもの話、……読み方は読者に任せなよ。
 
 「内容はどうだったの?」

 と、あーちはタイトル問題等々から逃げるように聞いてきた。

 「うーん…なんでインドから中国にそのまま行かずにオーストラリア方面経由なの?って思った」
 「ふおおっ!疑問に思って欲しい事を聞いてくれたね!その質問を待っていたぞ!」 
 
 『ふおおっ!』って急に興奮されてもコッチはついて行けないから!
 そして微弱に震えてる……トイレか?

 「なんで直接中国方面に行かなかったかの答えは、地形の変動だよ。海面低下もあってインドネシアは大陸と陸続き、パプア・ニューギニアとオーストラリアも一体だったの」 
 「なるほどね。でも何でずっと海岸線を行くんだろう?…内陸部は砂漠だったとか?」

 私は顎に手を添えながらロダン宜しく考える人のポーズをする。
 でも確かにシルクロードとかも内陸の砂漠やら山脈やらがあって遠回りしちゃったりしてたんだよね。
 あと『ロプ・ノール彷徨える湖』っていうのがあって、毎回その道を通る時に湖の場所が動いていて、そこを通る旅人とかを困らせるという摩訶不思議なことが……っといけない、今はあーちと話してたわ。

 まぁ四大文明も川のそばで生まれたと考えれば水と人は切っても切れない仲って奴だよね。
 その時の平均気温は知らないけど砂漠は昔の人は渡れないでしょ。……徒歩だし。
 さて、あーちの答えは……

 「優良生徒か!」

 褒められた。
 でも、何処となく悔しそうな顔してる。
 私もまだまだ高校と大学で学んだ事は身体に染み付いてるってことかな。

 「みーちの質問と疑問とそれに対する答えは別口で保存しておこう。全部載せたらただの読み物になっちゃうもんね」
 「ふむ。ま、それも良いかもね」

 あーちはちゃんと考えて欲しいんだね。
 全部載せたらただの教科書の丸写しみたいになっちゃうもんね。
 私も教科書より資料集や世界史のワード辞典とか読むのが好きだったから気持ちはわかる。全部書かれてるのを流し読みするより、立ち止まって考えた方が身につくもんね。


 さて、じゃあ終わったようだし晩ご飯の支度でもするか。
 昨日買い出し行ったから大抵のものは作れるでしょう。

 「夕飯何が良い?」
 「鮭!塩焼きでもムニエルでも!」

 ……即答だった。
 今日は和食気分だから塩焼きにするか。決定! 
 
 先ずはご飯を炊いておこう。
 今日は初回サービスとして私がお米をやってあげよう。
 あーちはお米の声が聞こえるらしいが私にはそんな特殊能力は備わっていないので普通に水を張る。
 私はお米は少しペチャッとしてるくらいが好きだが、あーちはシャッキリ派らしい。
 私がこの家に居る限りはシャッキリは駄目だよ?……諦めて。

 次にお味噌汁の準備をする。
 あーちは自分でお味噌汁を作らないくせに一丁前に文句だけは言う。
 『ちょっとしょっぱいよ?』『もっと味噌入れてよ!』『味噌汁は具沢山が良い!』等と言ってくる。……生意気だな。
 今日は大根が安かったので大根のお味噌汁にしよう。
 ……えっ!?具沢山が良い?…贅沢は敵だよ。

 副菜は小松菜と卵のソテーにしよう。
 小松菜は今の時期から安くなるので一色家では2日に一度は何かしらソテーやら味噌汁やら煮浸しやらで登場する。   
 小松菜は洗ってそのまま手頃な長さにカットして保存袋に入れて冷凍保存が出来るからまさに主婦の味方の野菜なのです!しかも鉄分もほうれん草よりずっと多いんだよ?

 と、心の中で独り言を言いつつ料理の手は動かしていく。
 ご飯もお急ぎモードで炊いているから鮭を焼き始めますか。
 鮭のドリップを軽くキッチンペーパーで取って魚焼きグリルに並べる。
 ……グリル洗うの面倒くさいな。
 でも美味しいものを食べるなら我慢だ。あーちに頼もう。

 暫くして……

 「ピピーッ!」

 おっ、ご飯が炊けたみたいだ。
 そして鮭も良い感じに焼けたみたい!
 味噌汁を温め直している間に炊飯器の蓋を開けてご飯を十字に切ってほぐしていく。
 よしよし、艶々に炊けてる。
 やっぱり一色家も新しい炊飯器欲しいなぁ…と、この家でご飯を食べる度に思う。美味しいご飯が食べたひ。

 味噌汁もちょうど良く温まったのであーちに食器を用意させて盛り付けていく。……あぁ早く食べたい。

 食卓の準備も終わったので向かい合って座り、

 「「いただきまーす」」



2018年11月19日(月)

 今日はあーちと二人で過ごす初めての一日だった。
 あーちの歴史のまとめ方はツッコミどころが多過ぎて疲れた。絶対にタイトルを変えさせてやる!!

 今日の夜は塩鮭で、美味しく焼けて良かった。
 あーちがグリルを洗ってくれなかった。

 くそったれ。
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