18 / 74
原始・古代
実々:センスってなんだ
しおりを挟むまったり過ごしていたら気付けば夕方になり、あーちが急に大きい声で、
「で、出来たっ!」
と、叫んだ。
『出来て良かったねぇ~』と、心の中で軽く拍手を送ってあげた。
しかし、呼ばれるまではこの小説を読み続けたい。今はめっちゃ続きが気になるところだから!
しかし無情にもあーちのコールは早かった。
「みーち!出来たから見てみて!んで、分からないとことか疑問があったら、うちに気を遣いながら聞いて!」
「ほぅ…どれどれ」
……仕方ない、行ってやるか。
ていうか注文多いな。
読んでいた文庫にしっかり栞を挟んでからあーちの所へ向かう。
「では、拝見します」
………………。【わたし日本史まとめるしの内容】
「…どうだった?」
私が読み終わり、キンちゃんから目線を外すと同時に前のめりに聞いてきた。
まず私が言いたいのは内容うんぬんよりも……
「まず、最初の【わたし日本史まとめるし】って何?なんかギャルっぽいし」
ということが気になる。
ギャルっぽいし馬鹿っぽい。
しかしあーちは私の指摘を予想だにしていなかったのか目を丸くしながら言い返してきた。
「えぇっ!この全体のタイトルに決まってるじゃん!これ考えるのに10分は使ったよ?『私の日本史』とかにすると自由研究みたいだし、それこそおかしくなっちゃうでしょ?このタイトルにはまとめるよって気概とまとめる紙って意味を込めてあるの。ちなみに、完成した暁には『わたし日本史まとめたし』になるから!」
……知らねぇよ。
しかもアレでしょ?
わた『し』日本『し』まとめる『し』って韻を踏んでる所気に入っちゃってる感じでしょ?……眼がキラッキラしちゃってるもんね。
あとタイトルからあーちの言う『気概』ってやつ微塵も滲み出てきてないから。
軽薄な感じしか出てないよ。
「タイトルはまだ始まったばかりだし、追々良いのが浮かんだら変えれば良いか」
「改良前提なの!?」
…改良するに決まってるでしょ。
『信じられないッ!』って顔しても駄目だよ。
あーちよ、私達の童顔な見た目はこの際置いておいて…私達はもうアラサーなのよ?
そしてかなちゃんが日本史やる時はもうアラフォーど真ん中なんだよ?
その時にこれをあーちが嬉々として見せてきて、私の愛しいかなちゃんがこの纏めのタイトルで困惑してるのがもう嫌でも想像出来ちゃうよ。
変な空気に耐えられるの?……子供を困らせないでおくれよ。
あと、かなちゃんの件を除いてもシンプルに私がこのタイトルが気に入らないっていうのも勿論ある。……ダサいでしょ。
そして冒頭の『※プ●ジェクトX風に読んでね♪』の注意書きって必要かなぁ?
かなちゃん観たことないし、先ず読み始める前にプ●ジェクトXの説明から入らないといけなくなるよ?
というかそもそもの話、……読み方は読者に任せなよ。
「内容はどうだったの?」
と、あーちはタイトル問題等々から逃げるように聞いてきた。
「うーん…なんでインドから中国にそのまま行かずにオーストラリア方面経由なの?って思った」
「ふおおっ!疑問に思って欲しい事を聞いてくれたね!その質問を待っていたぞ!」
『ふおおっ!』って急に興奮されてもコッチはついて行けないから!
そして微弱に震えてる……トイレか?
「なんで直接中国方面に行かなかったかの答えは、地形の変動だよ。海面低下もあってインドネシアは大陸と陸続き、パプア・ニューギニアとオーストラリアも一体だったの」
「なるほどね。でも何でずっと海岸線を行くんだろう?…内陸部は砂漠だったとか?」
私は顎に手を添えながらロダン宜しく考える人のポーズをする。
でも確かにシルクロードとかも内陸の砂漠やら山脈やらがあって遠回りしちゃったりしてたんだよね。
あと『ロプ・ノール』っていうのがあって、毎回その道を通る時に湖の場所が動いていて、そこを通る旅人とかを困らせるという摩訶不思議なことが……っといけない、今はあーちと話してたわ。
まぁ四大文明も川のそばで生まれたと考えれば水と人は切っても切れない仲って奴だよね。
その時の平均気温は知らないけど砂漠は昔の人は渡れないでしょ。……徒歩だし。
さて、あーちの答えは……
「優良生徒か!」
褒められた。
でも、何処となく悔しそうな顔してる。
私もまだまだ高校と大学で学んだ事は身体に染み付いてるってことかな。
「みーちの質問と疑問とそれに対する答えは別口で保存しておこう。全部載せたらただの読み物になっちゃうもんね」
「ふむ。ま、それも良いかもね」
あーちはちゃんと考えて欲しいんだね。
全部載せたらただの教科書の丸写しみたいになっちゃうもんね。
私も教科書より資料集や世界史のワード辞典とか読むのが好きだったから気持ちはわかる。全部書かれてるのを流し読みするより、立ち止まって考えた方が身につくもんね。
さて、じゃあ終わったようだし晩ご飯の支度でもするか。
昨日買い出し行ったから大抵のものは作れるでしょう。
「夕飯何が良い?」
「鮭!塩焼きでもムニエルでも!」
……即答だった。
今日は和食気分だから塩焼きにするか。決定!
先ずはご飯を炊いておこう。
今日は初回サービスとして私がお米をやってあげよう。
あーちはお米の声が聞こえるらしいが私にはそんな特殊能力は備わっていないので普通に水を張る。
私はお米は少しペチャッとしてるくらいが好きだが、あーちはシャッキリ派らしい。
私がこの家に居る限りはシャッキリは駄目だよ?……諦めて。
次にお味噌汁の準備をする。
あーちは自分でお味噌汁を作らないくせに一丁前に文句だけは言う。
『ちょっとしょっぱいよ?』『もっと味噌入れてよ!』『味噌汁は具沢山が良い!』等と言ってくる。……生意気だな。
今日は大根が安かったので大根のお味噌汁にしよう。
……えっ!?具沢山が良い?…贅沢は敵だよ。
副菜は小松菜と卵のソテーにしよう。
小松菜は今の時期から安くなるので一色家では2日に一度は何かしらソテーやら味噌汁やら煮浸しやらで登場する。
小松菜は洗ってそのまま手頃な長さにカットして保存袋に入れて冷凍保存が出来るからまさに主婦の味方の野菜なのです!しかも鉄分もほうれん草よりずっと多いんだよ?
と、心の中で独り言を言いつつ料理の手は動かしていく。
ご飯もお急ぎモードで炊いているから鮭を焼き始めますか。
鮭のドリップを軽くキッチンペーパーで取って魚焼きグリルに並べる。
……グリル洗うの面倒くさいな。
でも美味しいものを食べるなら我慢だ。あーちに頼もう。
暫くして……
「ピピーッ!」
おっ、ご飯が炊けたみたいだ。
そして鮭も良い感じに焼けたみたい!
味噌汁を温め直している間に炊飯器の蓋を開けてご飯を十字に切ってほぐしていく。
よしよし、艶々に炊けてる。
やっぱり一色家も新しい炊飯器欲しいなぁ…と、この家でご飯を食べる度に思う。美味しいご飯が食べたひ。
味噌汁もちょうど良く温まったのであーちに食器を用意させて盛り付けていく。……あぁ早く食べたい。
食卓の準備も終わったので向かい合って座り、
「「いただきまーす」」
2018年11月19日(月)
今日はあーちと二人で過ごす初めての一日だった。
あーちの歴史のまとめ方はツッコミどころが多過ぎて疲れた。絶対にタイトルを変えさせてやる!!
今日の夜は塩鮭で、美味しく焼けて良かった。
あーちがグリルを洗ってくれなかった。
くそったれ。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説


のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる