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原始・古代

最初はダイナミックに

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2018年11月19日(月)曇り  朝 


 「本っっっっっ当に1回も起きてないの!?」


 ピザソースとチーズとパセリを挟んだホットサンドを食べつつ、目の前の餡バターホットサンドを美味しそうに食べている成人女性に問う。

 「だから言ったじゃん。あーちがいつ布団に入ったかも知らないし、一度も目を覚まさなかったって。しつこいなー」
 「大事な事だから聞いてるの。みーちの精神面的に!」

 まぁ、起きてないなら良かった。
 『しつこい』は人生で避けたいワード上位だから、もう再確認は止めよう。うちは相手を思いやれる人間です。
 
 「じゃあうちの質問に対する多神さんの答えを言ってくねー」
 「ん」

 取り敢えずホット牛乳を一口飲んで落ち着いてから話し出そう。
 んん?
 そう言えばいつも温かい飲み物飲むとお臍の辺りまで一気に温かくなるのにそれが無くなってる。内臓まで元気になってるみたい!
 小さい幸せ、でも身体にとっては大きな変化をありがとう、多神さん!

 「まず、まとめ方はうちに一任してるから初心者でも分かりやすい感じにするのはOKだって。で、USBにデータ保存すれば元の時間に持って帰って良いって!凄くない!?」
 「え?良いの?多神さんサービス良過ぎだね」

 思わず嬉しさで後半につれて声が大きくなっちゃったけど、みーちも目をパチクリしながら喜んでくれてるみたいだし、夢の続きをしよう。
  
 「ねっ!まさか多神さんがUSBメモリを知ってるとは思わなかったけど!『フロッピーディスクならば良い』って言われなくて良かったよねー」

 多神さんに引かれて出来なかったガッツポーズをシャカシャカ思う存分やりながらみーちに言う。あ、嫌な顔した。

 「でね、そのまとめに対してチェックしてくれる神様って誰かって聞いたら、万引きGメンみたいにうちの妥協とかサボりを分かる神様が居るんだってよ」
 「…その万引きGメンって単語は絶対多神さん言ってないでしょ」
 「むむっ…みーちに分かりやすく言ってあげただけなのに。多神さんは『その道』って言ったんだよ?分かんないでしょ」

 報告に優しさと気遣いは不要なの?
 かと言ってやり取りを全部そのまま再現したら怒らない?まとめて説明しろって。

 「まぁ何となくは分かるよ」
 「もーっ何となくが命取りになるんだよ。……そうだ!多神さんに命取られるとこだったの!」
 「あーち何やらかしたの…」

 おいおい、待ってくれよ。
 何でうちが原因って前提なのよ。やっぱり証拠のVTRが必要なの?
 そんな据わった目で見てこないでよ。

 「何にもやってないって。ただ『神隠しってどうなるんですか?消滅するんですか?』って聞いただけ
 「本当にそれ聞いただけー?」

 うちは狼少年か。
 みーちに長年に渡ってうちは信頼ではなく不信感をコツコツ積み重ねさせて来たの?

 「んー…その後に『メジャーな神隠し知らないから、ちゃんと教えて』って言ったら突然血走った目でガッと来られたの!」

 あの時抱いた恐怖の再現は完璧には無理だけど、向かいに座るみーちに向かって目を全力でをかっぴらいて肩を掴む真似をしてみた。

 「そこから強制的にお世話になった人達の走馬灯を見せられながら思いっきり高速で肩を揺すられまくったの。……あれは全身震えたよねー。でね、その時の揺れが万が一寝ている身体とリンクしてて、みーちが地震と思って起きたら隣のうちが人間離れした動きをしてたとするよ?絶対トラウマになるでしょ?だからさっきから起きてないか聞いてたの」

 「寝てて良かった…」

 みーちにあの恐怖が伝わったのか、食べかけのホットサンドを置いて下を向いた。

 「流石に揺れ死ぬのは嫌だから、ストップって多神さんの腕をぺしって触ったら正当防衛みたいになっちゃったんだよねー」
 「何やったの!?」
 「肩から手を離されたタイミングが丁度体重が前に乗ってる時で、制御出来ずに最高スピードのまま頭突き……てへ☆」
 「ジダンかっ!」 

 流石だね、みーち。
 うちも頭突き=ジダンって思考回路だったよ。
 でもうちは故意じゃないからね、不慮の事故だから。

 「頭突きジダンは多神さんの胸部に綺麗に入っちゃって、そのまま後ろに倒れちゃったんだよね」
 「あーちがヤってんじゃん!」
 「結果的にヤっちゃってるけど、うちは殺ってないから!はっ……やばいっ!神を倒した人間ってブラックリストに載らないかな!?」

 うちが仮に多神さんの立場だったら神に対する人間の下剋上って受け取ってるな…。
 でも小学校高学年の子よりも小さい人間に倒されたって、自分から恥を晒すような事は絶対に他人には言わない。そもそもの発端が自分の行動だったのなら尚更。
 よって、闇に葬って泣き寝入りコースだ。

 「まぁ大丈夫か。一悶着あって打ち解けれたし。ほら、大喧嘩した相手と後に唯一無二の親友になるアレ的な」
 「今度多神さんに会ったら謝ろう…」

 何でよ。
 終わった話に保護者が出てくるのは粋じゃないでしょ。あの時ちゃんと謝ったし。ん?謝ったっけ?謝ってくれたの多神さんか?
 でもみーちがそんな拳を口元に当てて、絶望に打ちひしがれるような顔をする必要は無いんだよ。
 てか、うちの頭部の心配してよ保護者なら。
 
 「ジダンはこの際もう忘れよう。次に名前聞いたのね、そしたら『全部終わった暁に教えてやる』って言ってきたの!だから『分かるまで多神さんで』って言ったらめちゃめちゃ嫌な顔して来て、なら『匿名さんで』って提案したわけ。なのに結局『多神で良い』って言ってきたんだよ?しかもウジウジしながら。どう思う?」

 あの時の喝を入れてやりたい気持ちが蘇ってきたけど、思ったより落ち着いて話せた自信がある。
 さ、みーちも軽いバッシングをして。「名前くらい教えてくれたって良いじゃんねー」って。

 「匿名さんは絶対嫌でしょ…」
 「みーちはラジオ聞かないから」

 匿名を希望したのは多神さんなのに、何故こうもみーちは多神さんの肩を持つのか。
 まさかこっそり袖の下貰ってる?
 ん?袖の下……袖………をふりふり。
 そうだ、言おうとしてた事を『袖』で思い出した。

 「そうそう。巫女さんっぽい格好に向こう行ったら勝手になったの。でね、多神さんの『山陰亭』って名前の書斎で会ったんだけど、その表札が立派な一枚板でね、道場破りして貰いたくなるやつだったって言い忘れてた」

 「ねぇ、何しに行ったの?まじで」

 目を閉じてるんじゃないかってくらい細目で睨んで来なくても。
 ユーモア忘れちゃったの?
 慣れない広島での核家族ライフで心の余裕が無くなっちゃってるんだね、可哀想に。
 そもそも、うち武の道を極めてないから看板貰えないよ。更なる高みも目指してないから。
 
 「色々あったけど、ちゃんと聞きたいこと聞いて来れたよ。みーちも今度行ってみなよ。竹と梅も綺麗だったし」
 「親戚の家か!」

 神の家だね。
 あれ?教会って神の家って呼ぶんだっけ?
 神道である神社は何て表現するのかしら?神の別邸とか?拠点?神の棲み家とかお洒落だな。

 「そう、最後に怖い話をしたげる。お暇しようとした時に、何か聞き忘れてるなって思ったのね。で、みーちの顔が浮かんで、『さ』って言ったところで『参考文献は字数に入らないからな』って言われたの!めっちゃ怖くない!?一文字しか言ってないのに!」

 「うん…そうだね」

 えー…なんで無表情のまんまで驚かないの?
 怖すぎて思考を止めてるの?
 それとも参考文献の質問をしたのを怒ってるの?
 
 いや、ちょっと待てよ…

 「…はっ!もしかしてこの貰った指輪に盗聴器的な機能が付いてるのかな!?それか心の中を読む機能!とんでもないの貰ってるよ!」

 気付いてしまった。
 お守りはうちらのためではなく、多神さんのためのものであったと。
 今度また会った時にちゃんと笑えるかな…。無意識に口元がヒクついちゃいそう。

 「多神さんそんな暇な神様じゃないでしょ。あーちが言いそうな事を察知しただけだって。それに、そんなヤバい機能付けられないから」
 「むーん…そうかなー」

 みーち、多神さんを庇い立ててるようで実は軽くけなしているの気付いているかい?
 多神さんの力量ではそんな芸当は無理って言ってるよ?

 「そんな事より最初から気になってたんだけど、何でお椀で牛乳飲んでるの?」
 「え?コップに膜が付くの嫌だし、牛乳飲み終わった後に別の飲み物入れると油分が浮くから」

 うちが編み出した技に目を止めるとは、みーちやるな。
 お洒落なカフェでもたまにミルクティーやカフェオレがお椀で出てくるから、『お洒落な事してる!』って思ったのかな。
 いや、でも表情的には侮蔑だったな。真似しても良いのに、同時進行でコップのお茶も飲めるよ。
 

 楽しい朝ごはんを終え、みーちは洗濯と洗い物を、うちは掃除機を担当すると決めて解散した。

 鼻歌を歌いながら使い慣れた掃除機をかけつつ、ふと思う。
 多神さんを倒したからあの立派な表札貰えるんじゃないかと。
 あの一枚板に脚を付けてテーブルにしたら一財産になるなと。和室に合うね。


*****

夕方  雨

 「で、出来たっ!」

 お昼に炒飯を食べて、うとうとしながらパソコンキンちゃんと向かい合い、一瞬エンターを押しながら寝落ちをして、ページ数が36とかなっちゃったりしたけど完成した。

 これがうちの処女作だわ!

 「みーち!出来たから見てみて!んで、分からないとことか疑問があったら、うちに気を遣いながら聞いて!」
 「ほぅ…どれどれ」
  
 読んでいた文庫にしっかり栞を挟んでから、みーちがとてとて来てくれた。
 うちはあくまでみーちに依頼した身だけど、初回なんだからもうちょっとチャキチャキ来てよ。初回限定サービス求ム。

 「では、拝見します」


【わたし日本史まとめるし】

《はじまりのはじまり》※プ●ジェクトX風に読んでね♪

① この星は地球

 今からおよそ46億年前、宇宙に地球が誕生した。
 約38億年前には大陸や海が出来、大気が覆うようになった。
 そして約32億年前、ついに地球に生命が誕生した。

 そこから時は巡り、今から2億年ほど前に原始の日本はアジア大陸の縁で産声を上げた。
 地形の変動を繰り返してゆく中で、1億年前に日本列島の骨組みが出来上がり、今日のような列島になったのは1万年前頃。
 ほぼ現在の形になったのは2000年ほど前。西暦の始まりとほぼ同じである。

 もちろん、現在も日本だけでなく地球規模で地形の変動は絶えず行われている。


②人になる

 700万年前あたりまで、ヒトの先祖とチンパンジーやゴリラの先祖は同じであった。
 だが、そこから少しずつ枝が分かれて行き、約500万年前に最初の人類である『猿人』が誕生した。
 そして原人、旧人と少しずつ進化を重ね、約15~20万年前に私たちと同じ人類進化の最終段階である『新人』になった。
 ホモ・サピエンスである。


③そうだ、極東に行こう

 では、現生人類である新人はどこで生まれ、いつ、どうやって日本に来たのだろうか?

 アフリカで生まれたとされる新人は、氷河期で海面が凍結して出来た《バーブ・エル・マンデブ涙の門》と呼ばれる海峡を通り、海岸線に沿ってインド→東南アジア→パプア・ニューギニア→オーストラリア→中国→日本へと移動して行ったと考えられている。※1

 そして、日本列島には約4万年前に朝鮮半島経由又はシベリア経由で渡ってきたものと思われる。※2
 確かなことは、最終氷期で海面が凍り、今よりも海面が100m程低いときに、陸伝いもしくは狭い海伝いに来たと言うこと。

 こうして長い年月をかけ日本列島に人が辿り着き、日本の旧石器時代の幕開けとなるのであった。


※1:【バーブ・エル・マンデブ】紅海南部に位置し、アラビア半島南部のイエメンと東アフリカのエリトリア、ジブチの間の海峡。幅25キロ、深さ137メートル。

※2:当時の日本は瀬戸内海の陸化により、本州・四国・九州などの各島が繋がり、1つの長い島を形成していた。北海道島もサハリンを介して大陸と繋がっており、日本海は内海化していた。よって、日本に来ることは容易であった。
食料資源であるナウマンゾウやオオツノジカを求めてやって来たと考えられる。  (945字)

☆諸説あり!
☆あくまで個人の意見です!

             To be continued...


 「…どうだった?」

 キンちゃんの画面から目線を外したみーちに尋ねた。
 正直、やり直しはキツい。今度こそデリートを押しながら熟睡する自信しかない。

 「まず、最初の【わたし日本史まとめるし】って何?なんかギャルっぽいし」

 「えぇっ!この全体のタイトルに決まってるじゃん!これ考えるのに10分は使ったよ?『私の日本史』とかにすると自由研究みたいだし、それこそおかしくなっちゃうでしょ?このタイトルにはまとめるよって気概とまとめる紙って意味を込めてあるの。ちなみに、完成した暁には『わたし日本史まとめたし』になるから!」

 …まさかタイトルを冷たい視線でいちゃもん付けられるとは思わなかった。
 ギャルっぽいって一体どの顔見て言ってるの?
 明らかにギャルとは一切関わらない文系ですって顔をお互いにしてるから。

 「タイトルはまだ始まったばかりだし、追々良いのが浮かんだら変えれば良いか」
 「改良前提なの!?」

 ま、これ以上良いものなんて浮かばないと思いますけどね。
 単語の語尾を全部『し』にして韻を踏んでるのも計算してあるもん。

 「内容はどうだったの?」

 聞きたいのは内容についてなんだよう。

 「うーん…なんでインドから中国にそのまま行かずにオーストラリア方面経由なの?って思った」
 「ふおおっ!疑問に思って欲しい事を聞いてくれたね!その質問を待っていたぞ!」

 まとめながら思ったんだよね。
 得た知識を全部そのまま伝えるのは違うのでは無いかと。
 自分で考える大事な機会を潰したい訳では決してないって。悩み、考え、人間は前に進んでいくって。
 みーち、うちは今感動で震えているよ。
 勇者の登場に喜ぶ、魔物に襲われた村の長老くらいの嬉しさだよ。

 「なんで直接中国方面に行かなかったかの答えは、地形の変動だよ。海面低下もあってインドネシアは大陸と陸続き、パプア・ニューギニアとオーストラリアも一体だったの」

 「なるほどね。でも何でずっと海岸線を行くんだろう?……内陸部は砂漠だったとか?」
 「優良生徒か!」

 顎に指を当てて、推理クイズみたいに言ってきたけど、見事に正解だった。
 北アフリカから中東、ユーラシア内部は氷河期で乾燥していたのもあって全て砂漠だったらしい。
 流石、東洋史専攻。

 「みーちの質問と疑問とそれに対する答えは別口で保存しておこう。全部載せたらただの読み物になっちゃうもんね」
 「ふむ。ま、それも良いかもね」

 私たちは成長の芽を摘みません。
 少しの水と光を与えるだけですっ!…ってね☆


 「夕飯何が良い?」
 「鮭!塩焼きでもムニエルでも!」

 しっかりUSBに保存をして電源を落とした。キンちゃんさんきゅー。
 ちなみに鮭は塩焼きだった。好き。



11/19 (Mon)

 なんとか初日が無事に終わりました。
 キーボードで打ち込むのは良いけど、文章をまとめるのは結局手書きだから紙を使います。これからも沢山たくさん紙を使います。

 会社員のように、求められているもの以上のプラスαを狙って人類の誕生では無く、地球の誕生からにしたけど、どうだったんだろう?人間の歴史の浅さが浮き彫りになっちゃった感が否めません。
 あと、プロジェ●トXのナレーションを頭に想像するのに夢中になって、いまいち内容が入って来ない気がしないでもないです。 
 色々なパターンでやれたら読み手が楽しくなるのかしら?要研究ですね。
                  おわり























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