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島崎朔太郎②
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試衛館にいた頃、男装することは身分を偽ることで、バレたら最悪首が飛ぶのでは、と勇やさくらが心配していた折、歳三がこのような論調に持って行けば浪士組の上役を言い負かすことができるだろう、と言ったのであった。
「いいか。男だとも女だとも言わずにおくんだ。お前はただ男みたいな髪型と男みたいな名前の女というだけだ。そういう体でいくんだ。これなら、女だとバレてもそれまで嘘をついたことにはならない」
「な、なるほど…」さくらはごくりと唾を飲んだ。
「だが、山岡さんが『尽忠報国の士は男子にのみその資格がある』といったようなことを言っていたぞ」勇が続けた。
「そんなもん言わせときゃいいんだ。じゃあその男と女の違いはなんだ」
歳三に言われ、二人とも黙ってしまった。
「ナニの有る無しだけだ。違うか?」
「な……!それはそうだが……!」さくらは顔をわずかに赤らめ狼狽した。
「別に公方様の前で裸になるわけじゃねえんだ。それなら、俺らとさくらに何の違いがある?ないだろ。もし、ある、と言われればこの勝負は負けだが、俺はこういう話の持っていき方をすれば勝てると踏んでいる」
さくらはなんだか可笑しくなって、ぷっと吹き出した。
「まったく、歳三の屁理屈は天下一品だな」
そういうわけで、作戦は見事成功。様子を見物していた浪士らは、「肝の座った女だ…」と舌を巻く者と「女が混ざっていたなど屈辱だ…!」と憤る者に二分されたが、そんなことには構わずにさくら達は宿へ戻った。もちろん、芹沢には新しい部屋をあてがって。
翌日夕刻、次の宿場町でさくらは宿屋の一室に呼ばれた。そこには山岡と、取締役の筆頭を務める鵜殿鳩翁がいた。
「うむ。そなたが島崎朔太郎であるか」
白髪の混じった好々爺然とした男・鵜殿がさくらに笑いかけた。
「はい。此度はお騒がせしまして申し訳ありません」さくらは頭を下げた。
「山岡から聞いたぞ。佐々木相手に威勢良く啖呵を切ったそうではないか」
「お恥ずかしい。ですが、嘘偽りない思いをお話したのは真です」
鵜殿はうんうん、と頷いた。
「佐々木は反対していたがな。儂はそなたの気力胆力はなかなかのものと見受けた。このまま一行に加わって行くことを許可する」
さくらは驚きと嬉しさが入り混じったように目を見開いて鵜殿を見た。
「それは真ですか」
「うむ。二言はない」
さくらは土下座せんばかりに頭を下げた。
「ありがとうございます!精一杯務めを果たして参ります!」
昨日の夜からずっと生きた心地のしなかった試衛館の者たちはこの知らせに驚き、喜び、その日の夜は自然、居酒屋で「祝賀会」の運びとなった。
「いやあ、本当によかったよ。このまま本気でサクだけとんぼ返りだったらどうしようかと思った」勇はほっとしたのか、少し目を潤ませている。
あくまでさくらは偽名ではなく「改名して男っぽい名前にした」という体であったので、引き続き名前は島崎朔太郎のままであった。
「山岡さんって、案外いい人じゃないですか。姉……島崎先生のこと認めてくださったなんて」総司はカラカラと笑った。
「お前ら、今回のことはたまたま運がよかったんだ。ったく、芹沢のヤロウ、とんだことしでかしてくれたぜ」
「そんなこと言って、こんなこともあろうかと策を練っていたのは歳三さんなんでしょう?隅におけないなぁ」
「沖田くん、隅におけないとはそういう使い方をするものでは…」
「なんにせよ、よかったですよ!それじゃ、旅の無事と、公方様警護の成功を祈って!」
平助の音頭につられ、一同は「弥栄ー!」と杯を掲げた。
「いいか。男だとも女だとも言わずにおくんだ。お前はただ男みたいな髪型と男みたいな名前の女というだけだ。そういう体でいくんだ。これなら、女だとバレてもそれまで嘘をついたことにはならない」
「な、なるほど…」さくらはごくりと唾を飲んだ。
「だが、山岡さんが『尽忠報国の士は男子にのみその資格がある』といったようなことを言っていたぞ」勇が続けた。
「そんなもん言わせときゃいいんだ。じゃあその男と女の違いはなんだ」
歳三に言われ、二人とも黙ってしまった。
「ナニの有る無しだけだ。違うか?」
「な……!それはそうだが……!」さくらは顔をわずかに赤らめ狼狽した。
「別に公方様の前で裸になるわけじゃねえんだ。それなら、俺らとさくらに何の違いがある?ないだろ。もし、ある、と言われればこの勝負は負けだが、俺はこういう話の持っていき方をすれば勝てると踏んでいる」
さくらはなんだか可笑しくなって、ぷっと吹き出した。
「まったく、歳三の屁理屈は天下一品だな」
そういうわけで、作戦は見事成功。様子を見物していた浪士らは、「肝の座った女だ…」と舌を巻く者と「女が混ざっていたなど屈辱だ…!」と憤る者に二分されたが、そんなことには構わずにさくら達は宿へ戻った。もちろん、芹沢には新しい部屋をあてがって。
翌日夕刻、次の宿場町でさくらは宿屋の一室に呼ばれた。そこには山岡と、取締役の筆頭を務める鵜殿鳩翁がいた。
「うむ。そなたが島崎朔太郎であるか」
白髪の混じった好々爺然とした男・鵜殿がさくらに笑いかけた。
「はい。此度はお騒がせしまして申し訳ありません」さくらは頭を下げた。
「山岡から聞いたぞ。佐々木相手に威勢良く啖呵を切ったそうではないか」
「お恥ずかしい。ですが、嘘偽りない思いをお話したのは真です」
鵜殿はうんうん、と頷いた。
「佐々木は反対していたがな。儂はそなたの気力胆力はなかなかのものと見受けた。このまま一行に加わって行くことを許可する」
さくらは驚きと嬉しさが入り混じったように目を見開いて鵜殿を見た。
「それは真ですか」
「うむ。二言はない」
さくらは土下座せんばかりに頭を下げた。
「ありがとうございます!精一杯務めを果たして参ります!」
昨日の夜からずっと生きた心地のしなかった試衛館の者たちはこの知らせに驚き、喜び、その日の夜は自然、居酒屋で「祝賀会」の運びとなった。
「いやあ、本当によかったよ。このまま本気でサクだけとんぼ返りだったらどうしようかと思った」勇はほっとしたのか、少し目を潤ませている。
あくまでさくらは偽名ではなく「改名して男っぽい名前にした」という体であったので、引き続き名前は島崎朔太郎のままであった。
「山岡さんって、案外いい人じゃないですか。姉……島崎先生のこと認めてくださったなんて」総司はカラカラと笑った。
「お前ら、今回のことはたまたま運がよかったんだ。ったく、芹沢のヤロウ、とんだことしでかしてくれたぜ」
「そんなこと言って、こんなこともあろうかと策を練っていたのは歳三さんなんでしょう?隅におけないなぁ」
「沖田くん、隅におけないとはそういう使い方をするものでは…」
「なんにせよ、よかったですよ!それじゃ、旅の無事と、公方様警護の成功を祈って!」
平助の音頭につられ、一同は「弥栄ー!」と杯を掲げた。
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