おちんちんはやすお薬

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おちんちんをはやすお薬

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 「ない! ない!」
 お日様が地平線から40度くらいの朝。僕はだぶだぶのパジャマのまま、布団をめくり、枕を裏返し、ベッドの下に潜り、命の次に大切なものを探していた。
 
 結論から言うと、僕の大切なものは見つからなかった。
 枕に涙でぐしゃぐしゃの顔を押し付ける。
 「のおおおおおお」
 

 僕は雪島ゆきち。どこにでもいる平々凡々な大学生で、この春から一人暮らしを始めている。
 大学の前学期を何とか乗り越えて、これから夏休みだというときにこの事件。どうしよう。
 『一人暮らしなんて危ないから絶対ダメ!!』
 『できるし! 危ない奴がいてもいざとなれば拳で……』
 『絶対ダメ!!!!』
 ああ思い返される一人暮らしを巡っての言い合い。結局ママが折れて、一人暮らしを許してもらえることになった。ありがとう。
 ただしたくさん条件をつけられた。
 トゥラリラリラリルゥン♪
 きた。
 「……ゆきちです」
 震える手でスマホを持った。
 「ゆきち? ちょっと電話取るの遅かったけど何かあったの?」
 「な、何も無いよ。全然無い。だから安心してよ」
 「……」
 「え、ホントだよ? 何も無いっていうか無くなったというか、とりあえず心配しないでね、それじゃ!」
 「あ、待ちなさっピロリン♪
 条件の1つ、毎朝のモーニングコールにワンコール以内に出て安全を確認させる。
 ふぅ、ひとまずこれで大丈夫かな。
 そのとき。
 何かが作動する機械音の後、カチャッという音がした。
 僕の全身から血の気が引いた。
 急いで玄関に向かう。
 「開いてよ! ちょ、大丈夫って言ったのに!」
 この扉は鍵が内蔵されているタイプでいつもはスマホから開錠する。だけど今は全く反応しない。
 条件2、完全セキュリティ完備の物件に住むこと。
 なんでだよぉ。外からだけでいいじゃんか! 中の人を閉じ込めるなんて!!
 まずいまずいまずい!
 このままじゃママとパパがお仕事全部ポイして自家用ジェットでこの家にツッこみかねない。どうにか脱出を……
 そうだ窓!

 ……壁の中に埋め込む形で取り付けられている鉄格子を前に僕はうなだれた。
 いや知ってたけど、まさかこんな取り外しのしようのない奴だとは思わなかった。
 てかここ監獄じゃん。いくらなんでも酷いよ。
 半ばあきらめモードでベッドにダイブ。虚な視線を天井に這わせ、ある一点を見て止まった。
 「あ」

 『火事です! 火事です
! 全員速やかに避難して下さい! 五階504号室で火事です! 火事です! 全員…』
 サイレンが建物中に響き渡る。そして扉のロックが全室解除された。
 僕は脱獄を果たした。
 


 僕はリニアの窓際座席でボーッと流れる景色を眺めていた。
 「お嬢ちゃん、お隣失礼しますね」
 「あ、はい。どうぞ」
 優しそうなおばあちゃんが僕の隣に座った。
 お嬢ちゃんではない……とは今は言えないことに気付き、さらに気分が沈んだ。
 「元気が無いけど、何かあったのかい?」
 「あ、大切なものを無くしてしまったというか……」
 僕のおちんちん……。
 「あんまり思い詰めることの無いようにね。どれだけ大事に思っていても、いつかは他の大切なものに出会って忘れてしまうものさ」
 「そうなのかなぁ……」
 「そういうものさ。私もね……」
 1時間くらい、僕はおばあちゃんの話に相槌を打ち続けた。
 そこでおばあちゃんは降りていく。
 「……次降りよ」
 空にはどんよりとした雲がかかっていた。


 『福井県』
 なんの目的もなく飛び出して、九州からここまで来てしまった。
 福井県。
 僕は思い立ったことがあって、海へと向かった。

 断崖絶壁に打ち付ける波飛沫。ここは東尋坊。
 ちょっとした気晴らしで訪れたけど、ここに立って広大な海原を見渡すと僕なんか初めからいなかったような気がしてくる。
 だんだんと現実が見えてくると、それに比例して気分が沈んでいった。
 僕はおちんちんを失った。男から、男じゃないものへと変わった。親は、友達は、そしてあの子は。僕を見て何と言うだろうか。
 悲しむだろうか、怒るだろうか、気持ち悪がるだろうか。いずれにしても、僕は彼らの前に再び姿を表すことができそうにない。
 もういっそのこと。
 
 大きな海。
 僕のちっぽけな体なんてあっという間にどこかへ流してしまうだろう。
 それだけが救いに見えて、僕は。
 「おい君」
 「にゃっ!!」
 突然肩を掴まれ、僕は正気に戻った。
 「……ついてきなさい」
 

 「……魅せられたんだ」
 「魅せられ?」
 「ああ。あそこにはそういう魔力がある」
 僕を正気に戻したおじさんが、カップに入れたココアを差し出してくれる。
 「ありがとうございます」
 「……俺は田中芳兵衛《よしべえ》だ」
 「あ、雪島ゆきちです。助けてくれてありがとうございます」
 「雪島は何か悩みがあるのか?」
 「あの。大切なものを失くしてしまって」
 「親か?」
 「え、親は関係ないですけど」
 「何を失くしたんだ?」
 「えっと……」
 言えない。
 「言えないなら良い。落ち着くまでここにいなさい」
 「あ、はい。ありがとうございます。ただもう大丈夫です。お世話に……」
 そのとき、
 「ゆきくん!!」
 若干、涙ぐんだような少女の声が響き、僕はその声の聞き覚えに背筋が震えた。今、一番会いたくない相手だったから。
 「な、なんで?」
 少女は椅子に座る僕を見るなり突撃してきて、僕の頭を胸の中に抱え込んだ。
 甘い香りと、激しい心音。頭が潰れそうになる痛み。
 「ゆきち」
 「え。ママとパパ……」
 今会いたくない人達が勢揃いだった。
 「……とりあえず、帰りましょう。施設の皆さん、ゆきちがお世話になりました。またお礼に伺います」
 呆然としたまま外に出ると、ヘリが止まっていた。ここ止めても良いのかななんて、思考が現実逃避する。
 

 「ゆきち。何があったの?」
 「っ」
 「賀茂さんにもたくさん迷惑をかけたのよ?」
 「……ごめんなさい」
 「何があったのか。話してくれるわね?」

 僕はポツポツと、今朝からのことを話し始めた。
 全て話終わるまで、僕はずっと下を向いていた。みんなが僕をどういう目で見ているのか見るのが怖くて仕方なかった。
 「ゆきち」
 「っ!!」
 「ゆきち!!」
 「はいっ!」
 「目を上げなさいこのアホ息子!!」
 ア、アホ!?
 思わず顔を上げると、厳しい顔だけど、愛情のこもった眼差しが僕を迎えた。
 「ぁ」
 「ゆきち。私達がそんなに信用できない?」
 「ぇ」
 「そんなことでゆきちを嫌いになるほど薄情者だと思われてることが、ママは我慢できない」
 「そんなこと思ってない!」
 「思ってないんだったら相談しなさい」
 「ぁ」
 僕は、何をしてたんだろう。感情が先走って、たくさんの人に迷惑をかけた。
 それがやっと、分かった。
 「分かったら若菜ちゃんにしばかれてきなさい」
 「ぇ」
 「彼氏なら彼女を泣かせないの」
 

 「……」
 「ごめんなさい」
 部屋に入るや否や、僕は長身の彼女に捕獲された。賀茂若菜。とても美人な、僕の彼女。いつもは強気な彼女が、ぬいぐるみを抱くように僕を抱えた。
 若菜の方が僕より20cm近く背が高い。そのままベッドへ。
 「……」
 「ごめんなさい」
 若菜はベッドの背もたれに背を預け、僕を前に抱えた。絶対放すかというほど締め付けられ、息苦しい。
 しかし謝罪を止めることはできない。無言の彼女に僕は謝り続ける。
 「……」
 「たくさん心配かけて、ごめんなさい」
 若菜が僕の頭に顎を置いた。密着度が増して、全身が熱くなる。2人の汗が空気中で混じり合う。
 「それと」
 僕は覚悟を決めた。
 「別れよう」
 若菜の全身がビクッと震えた。
 「このままじゃ、若菜は結婚できなくなっちゃう。だから僕を忘れて……カチャ
 カチャ?
 「あえ、ぇ、わ、若菜? これなに?」
 いつのまにか背面に回されていた手が分離不可能にさせられていた。
 焦って若菜の顔を振り返ると、若菜の顔は静謐な怒りをたたえたTHE無表情だった。
 「え、わかに゛ゃっ!?」
 凄い力で引っ張り上げられ、手錠をベッドの出っ張りに引っ掛けられると、腹を上にした体制で身動きが取れなくなる。
 僕を下敷きにした若菜の冷たい視線に、恐怖する。
 「おおおおおおちつこ? 話せば分かる」
 「……ゆきくんみたいなアホは話しても分からないよ」
 「ぇあっ! なんだと! あ、やめっ」
 シャツを乱暴に破かれると、胸があらわになる。
 よく見たらそこは、かすかに膨らんでいた。
 「ほ、ほんとにやめ!」
 何とか足をジタバタさせると、若菜の手を蹴飛ばしてしまう。
 「ぁ、ごめ」
 その瞬間、若菜が空間を凍らせるほどの冷気を迸らせた。
 もちろん、僕の全身も凍りつく。
 若菜は新しい手錠を用意して、僕の足を開いてベッドに固定した。人という漢字の体勢で完全に固定される。
 「……」
 「あ、そこはダメ!」
 黒いタチバサミで僕のズボンが丁寧にズタズタにされていく。
 そして、パンツをずり下ろされる。
 長年の相棒が失われ、なだらかな丘に1つの洞窟。洞窟からは止めどなく透明な液体が溢れていた。
 「ねぇ、ゆきくん」
 「……」
 「ゆきくんてさ、ホントはマゾでしょ?」
 ……は?
 「はああああああああ!?」
 「いつもエッチの時に言ってたよね。『こここんなに濡れてる。期待したのか? 若菜はマゾだなぁ』って」
 若菜が僕の穴を手で覆った。ぱちゅっと淫らな音がして、全身に身悶えしそうなピリッとした電気が走った。
 「拘束されて乱暴に服まで剥がれて濡らしてるゆきくんの方がよっぽどマゾだよ」
 「そんなことにぃあっ!?」
 「んー?」
 「なぁっぃ、ちょぉ、それやめっ!」
 「『そんなこと言って、ホントは期待してるんだろ?』」
 「!!!」
 言葉責め。それをやり返されている状況に、腹が立たないといけないはずなのに、とても気持ち良い。
 「そういえばエッチの時だけ『俺』って使ってたよね。今まで理由を聞いたことなかったけど、このマゾの本性を隠すためだったのかな」
 「ちがっ!!」
 「もう、良いんだよ」
 一際強くぎゅっと秘部を抑えつけられて僕は。
 「ぃっ~~~っ!!!」
 白の世界に旅立った。意識が朦朧として、息が荒くなる。だんだんと元の世界に戻ってくると、さっきまでより視界が鮮明に、鮮やかになる。妖艶に笑う若菜の美貌が僕の心をキュンと締め付ける。
 「もう、隠さないで。私の前では全部さらけ出して」
 「ゃぁ」
 「ふふ、ゆきくん可愛い」
 「もうやめっ、んぐぅっ!」
 空回りを続ける思考の中で何とか芽生えた反抗心を征服するように、唇を塞がれる。
 (知らない。知らないよぉ。いつもより、ずっと激しい)
 舌が口周りがベトベトになる程に激しく行われるキス。僕の舌は彼女の侵略に逆らえず、僕の口腔内は彼女の舌の領土になった。
 激しい快感の中で若菜の綺麗な顔が獰猛に迫ってくるのを見た。そっちに意識を奪われていた僕は、とつぜん胸から登ってきたじんわりとした快感に戸惑った。
 優しく、胸を揉まれていた。甘く優しい快感に緊張がほぐれ、隙だらけになったところに暴力的な快感が叩き込まれる。
 くちゅりと、今日開通したばかりの穴に侵入者がやってきた。
 「~~~ぅ!?」
 「いきの良い魚みたいだよユキくん」
 また、また全身がビリビリとするような快感に襲われ、快感を逃そうと身を捩るが手錠と足枷がそれを許さない。
 「こゎれ、壊れちゃうからぁ」
 「ゆきくんみたいなあほの子はね、一回壊してから直さないとまともにならないの」
 「そんなことぉムグぅっ!」
 暴力的な快感にサンドバッグのように打ち据えられ、しばらくして僕は意識を失った。
 
 
 一年後ーー。

 僕たちの前には一本の小瓶があった。
 
 僕の病気は性転換病という。治療法のない難病だが、様々な分野で活躍する雪島家と日本の財閥、賀茂家の主導により、女性から男性にTSする因子を込めた薬の製薬に成功した。
 まだおちんちんを生やすだけしかできないが、それでも相棒が戻ってくるんだ。僕は涙ぐみそうになる。
 同棲を始めた(一人暮らしを禁止された)僕たちはおめでとうパーティを開き、食後のケーキを堪能した後、運命の時に固唾を飲んだ。
 
 ……いろいろ心配をかけた。精神的に不安定になった時にはいつも若菜が寄り添ってくれた。おかげで僕は、変な性癖を植え付けられたけども、立ち直ることができた。
 みんな、ありがとう。
 瓶に手を伸ばした僕の前で瓶が消えた。
 「へ?」
 「んくんく」
 「へ?」
 僕の前から瓶を掠め取った若菜は瓶の中身を飲み干した。
 「……へぇぇぇ!!?? ちょ、若菜ぁ!? 何してるの!?」
 「へ? 何っておちんちん生やすんだけど」
 「あれぇぇぇえ!?」
 いや普通、えええええ!?
 「だって、ゆきくんが旦那さんてなんか癪だし」
 「え」
 ……嫌われた?
 「ああ違う違う、そういうことじゃなくってね。ゆきくんは旦那さんよりお嫁さんの方が似合ってると思って」
 「僕男なんだけどぉ!?」
 「今は女じゃん」
 そうだけど!!
 「あ、ん。こんな感じなんだ」
 「え、若菜、大丈夫?」
 「ぅん、大、んっ」
 「若菜!?」
 顔が真っ赤だ。それにどこかポーッとしたアホヅラに。
 「ゆきくん」
 「ん?」
 「ごめん、我慢できない」
 「あ、ちょ、若菜!? そんな軽々と抱えないで! プライドが、プライドがぁっ!!」
 
 べしっ!
 「あう」
 毎日のように交わっていた寝室のベッドに、いつものように投げつけられる。
 いつもと違うのは、
 「フーッ、フーッ」
 「わ、若菜?」
 いつもは余裕綽綽と僕をいじめる若菜が血走った目で僕を見ていること。若菜に余裕がないから僕が有利かというとそうではなく、何かいつもよりも危険な香りがヒシヒシと……
 「僕は逃げさせて頂きます!!」
 このままじゃ飢えた猛獣に美味しくペロリされてしまう!
 と逃げ出した僕だが、難なく捕獲される。
 「ちょ、手錠はまずい、ほんと頭ぱぁになるから!!」
 快感を逃す場所が無いことの怖さを僕は知っていた。僕はまた選択肢を間違えたのかもしれない。逃げ出して煽ってしまった。
 「ゆきくん、大好き」
 「ぼ、僕も大好き。だからさ、優しく、優しくエッチしよう? これ、解こう? ね?」
 ビリィっ!!!
 デジャヴ!!!
 スカート(若菜の趣味であって断じて自分で望んで着たわけではない)をずり下ろされると、僕の間欠泉は元気いっぱいだった。
 「私も、脱ぐね」
 「ちょ、若菜、ひぃっ!!」
 若菜がズボンを脱ぐと、下から天を衝くほどの怒張が現れた。
 「あは、ゆきくんのやつよりおっきい」
 「やめて!!」
 僕の相棒(失踪)の悪口は精神にくるから!!
 「これだけ濡れてるし、散々開発したし、良いよね?」
 くちゅりと攻城兵器が僕の城門に口付けをする。
 「いれるね?」
 「絶許っ、、あうぅっ!!」
 無血開城を良いことにどこまでも横暴に叩きつけられる凶器に、体内の空気が全て吐き出される。
 「あは、大きすぎて全部入らないや」
 「~~~~っ!!!」
 「挿れただけで連続イキしてるところ悪いんだけど、ちょっと気持ち良すぎて、我慢できない」
 「ゃぁっ」
 やめて、声にならない叫びをあげる。
 ずるるるるるっ、
 「ゆきくんのおちんちんと違って大人なおちんぽ。今からゆきくんの大切なお部屋に突入しまーす」
 「ぃゃ」
 「えい」
 ずどんっ!!
 体の芯を揺らす、アブナイ刺激にダムが決壊、行き場をなくした快感の波が全身に破壊をもたらす。
 意識の粒がプチプチと潰されて……
 「気絶すんなっ」
 ずどんっ!!
 「あびぃっ!」
 ダムの水を押し返すかのように強制的に意識を戻される。
 ずどんっ!!ずどんっ!!ずどんっ!!ずどんっ!!
 突かれるたびに、気絶と覚醒を繰り返す。言葉を忘れてしまうほどの快感が理性を尽く破壊していく。
 「あ、出るっ! 孕んで! ゆきくん、私の子供、孕んで!!」
 「~~~~~っ!!!」
 津波がダムの波ごと押し流した。子宮に叩きつけられる精子の勢いに、僕は幸せを感じていた。
 「あ、ゆきくん、ご、ごめん! 激しくしす……んっ」
 頑張って上半身を起こして、焦る若菜に口付けをした。
 「若菜、すきぃ」
 「……」
 若菜の目から理性が消えた。
 あは、また僕は選択肢を間違えたかもしれない。
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