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4.シンデレラ ver.3−2
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光が消えるとそこは街の中だった。大きな道には人通りが多く馬車も行き交う賑やかな街のようだ。
「ここは?」
いつのまにか夜も明けていて明るい日差しが眩しい。確かに森の中よりも安全な場所に来ている…あの魔法使い、願い事を本当に叶えてくれたのね…ということは!
キョロキョロ辺りを見渡すと大きなそして『薄っすら見覚えのある屋敷』があった、かなり大きなお屋敷だ。幼い頃何度か来たことがある母の実家に違いない。
懐かしく思い屋敷を眺めていたがふと困った事に気がついた。今私は『ボロボロの庭師の服をきた短髪の男とも女ともつかない格好をした怪しい人間』だ。そんな私が『ここの血縁者です』と言っても信じてはもらえないだろう。どのように話せばいいのか…せめてもう少し小綺麗な格好ならば…いやそれでは逃げ出して来られなかったし…と形見のネックレスを握りしめて、うろうろしながら今更躊躇していると門が開いて馬車が出てきた。
「そこの君、危ないよ」
と御者の声がした。そちらを見上げると乗っている紳士と目が合った。私は邪魔にならないよう馬車を避けようとすると
「エリーゼ?まさかそんな…」
乗っていた紳士が私を見て信じられないような顔をした。
「彼女はもう…でも…そのネックレス、私がプレゼントした物だ!ひょっとして君はクレアなのか?」
そう私の本当の名前はクレア。そして母はエリーゼ。
「そうです!私はクレアです!」
紳士は伯父様だった。伯父様は私に駆け寄り抱きしめた。目には涙が馴染んでいる。
「クレア!確かにクレアだ!しかしこの格好はどうした…何があったんだ?とにかく家に入って話はそれからだ」
伯父様は私の肩に手を置き、屋敷へと私を招き入れた。置かれた手からじんわり温かさを感じた。
屋敷の中へ招かれた私は女中頭に連れられて風呂に入り、衣服を新しい物にした。その後伯父様と伯母様に呼ばれ今まで何があったのか?どうしてそんな格好でここに来たのか?と聞かれた。私は包み隠さず言った。
母が亡くなった後父が子連れの女性と再婚した事
そのすぐ後父が亡くなった事
父がいなくなった途端私は女中扱いされた事
酷い扱いに耐えかねて家出をし、ここに来た事
伯父様は怒りに身体を震わせ、母の幼馴染だった伯母様は途中からショックのあまり顔面が蒼白になり、ソファの肘掛けに寄りかかって何とか話を聞く有様だった。話が終わった後伯父様も伯母様も私をぎゅっと抱きしめて泣いた。どうやら私も泣いていたらしく頬が濡れている。
「手紙を書いても返事がないのでおかしいとは思っていたが…こんな事になっていたとは」
ショックを隠しきれない2人に、私は
「向こうには知らせずにこのままここで当分匿って下さい。ご迷惑にならないよう身の振り方はなるべく早く考えます」
とお願いした。平民として市井で暮らすにしても私にはその知識も経験もないので準備期間が欲しい。
2人は快諾し何ならずっとここにいて欲しいと、一緒に住んでいる長男夫婦を呼んで紹介してくれたが、
『急に来た怪しい親戚と名乗る人物を見てやろう』
2人はそんな眼差しだった。それはそうだろう。私が相手の立場なら同じような感情を持つに決まっている。私はその眼差しに負けないよう気を引き締めて
「クレアと申します。伯父様の妹エリーゼの娘です。訳あってこちらにお世話になる事になりました。よろしくお願いいたします」
と丁寧なお辞儀をした。しかし返事が返ってこない…不安になりふと顔をあげると、そこには私の顔を見つめ、驚いたように目を大きく見開いている長男夫婦の姿があった。声も出ないらしい。
「…あの…私の顔に何か?」
と私が問いかけると、2人はハッとして自己紹介を始めた。その表情や口振りに先程までの警戒感はなく、むしろ親しみさえ感じられた。何故だろう?と思っていると、部屋の扉がバーンと勢いよく開けられ、小さい男の子が入ってきた。
「お父様、お母様、お祖父様たちとお話終わった?あ…お客様だったんだ…こんにちは!」
可愛らしい無邪気な子だ。そしてその顔は…私の小さい頃にそっくりだった。私と並んだら少し歳の離れた兄弟にしか見えないだろう。私が髪を切ってしまっている為、似ているのがよりはっきり分かる。
そうか…腑に落ちた。長男夫婦は息子と良く似ている私の顔に驚き、親戚と確信したのだろう。切った髪を売る機会を無くしてしまい、切り損だったかなと後悔していたがこれは怪我の功名だ。
「こんにちは。私はクレアと言います。このお家にお世話になるので仲良くして下さいね」
と話しかけると男の子は遊び相手が出来たと喜び
「髪短いけど、お姉さんなの?お兄さんなの?僕のお家にどのくらいいるの?」
と矢継ぎ早に質問をしたが、とりあえず一旦長男夫婦によって子供部屋に戻された。
その後大人たち皆で話し合った。
「…その手を見ればあなたが嘘はついていないのが分かる。1日や2日水仕事をしたくらいではここまで荒れないものね。日常的にこき使われていたのね…大変だったでしょう、こんなに痩せ細って…とりあえず、外向きにはあなたは『遠縁の娘さん』として紹介しましょう。はっきり身元を言ってしまうと、あのお家に知られ連れ戻されてしまうかも…あなたを絶対守るから、まず身体を休める事だけ考えて暮らしてね」
という伯母様の言葉で締めくくられた。
「ここは?」
いつのまにか夜も明けていて明るい日差しが眩しい。確かに森の中よりも安全な場所に来ている…あの魔法使い、願い事を本当に叶えてくれたのね…ということは!
キョロキョロ辺りを見渡すと大きなそして『薄っすら見覚えのある屋敷』があった、かなり大きなお屋敷だ。幼い頃何度か来たことがある母の実家に違いない。
懐かしく思い屋敷を眺めていたがふと困った事に気がついた。今私は『ボロボロの庭師の服をきた短髪の男とも女ともつかない格好をした怪しい人間』だ。そんな私が『ここの血縁者です』と言っても信じてはもらえないだろう。どのように話せばいいのか…せめてもう少し小綺麗な格好ならば…いやそれでは逃げ出して来られなかったし…と形見のネックレスを握りしめて、うろうろしながら今更躊躇していると門が開いて馬車が出てきた。
「そこの君、危ないよ」
と御者の声がした。そちらを見上げると乗っている紳士と目が合った。私は邪魔にならないよう馬車を避けようとすると
「エリーゼ?まさかそんな…」
乗っていた紳士が私を見て信じられないような顔をした。
「彼女はもう…でも…そのネックレス、私がプレゼントした物だ!ひょっとして君はクレアなのか?」
そう私の本当の名前はクレア。そして母はエリーゼ。
「そうです!私はクレアです!」
紳士は伯父様だった。伯父様は私に駆け寄り抱きしめた。目には涙が馴染んでいる。
「クレア!確かにクレアだ!しかしこの格好はどうした…何があったんだ?とにかく家に入って話はそれからだ」
伯父様は私の肩に手を置き、屋敷へと私を招き入れた。置かれた手からじんわり温かさを感じた。
屋敷の中へ招かれた私は女中頭に連れられて風呂に入り、衣服を新しい物にした。その後伯父様と伯母様に呼ばれ今まで何があったのか?どうしてそんな格好でここに来たのか?と聞かれた。私は包み隠さず言った。
母が亡くなった後父が子連れの女性と再婚した事
そのすぐ後父が亡くなった事
父がいなくなった途端私は女中扱いされた事
酷い扱いに耐えかねて家出をし、ここに来た事
伯父様は怒りに身体を震わせ、母の幼馴染だった伯母様は途中からショックのあまり顔面が蒼白になり、ソファの肘掛けに寄りかかって何とか話を聞く有様だった。話が終わった後伯父様も伯母様も私をぎゅっと抱きしめて泣いた。どうやら私も泣いていたらしく頬が濡れている。
「手紙を書いても返事がないのでおかしいとは思っていたが…こんな事になっていたとは」
ショックを隠しきれない2人に、私は
「向こうには知らせずにこのままここで当分匿って下さい。ご迷惑にならないよう身の振り方はなるべく早く考えます」
とお願いした。平民として市井で暮らすにしても私にはその知識も経験もないので準備期間が欲しい。
2人は快諾し何ならずっとここにいて欲しいと、一緒に住んでいる長男夫婦を呼んで紹介してくれたが、
『急に来た怪しい親戚と名乗る人物を見てやろう』
2人はそんな眼差しだった。それはそうだろう。私が相手の立場なら同じような感情を持つに決まっている。私はその眼差しに負けないよう気を引き締めて
「クレアと申します。伯父様の妹エリーゼの娘です。訳あってこちらにお世話になる事になりました。よろしくお願いいたします」
と丁寧なお辞儀をした。しかし返事が返ってこない…不安になりふと顔をあげると、そこには私の顔を見つめ、驚いたように目を大きく見開いている長男夫婦の姿があった。声も出ないらしい。
「…あの…私の顔に何か?」
と私が問いかけると、2人はハッとして自己紹介を始めた。その表情や口振りに先程までの警戒感はなく、むしろ親しみさえ感じられた。何故だろう?と思っていると、部屋の扉がバーンと勢いよく開けられ、小さい男の子が入ってきた。
「お父様、お母様、お祖父様たちとお話終わった?あ…お客様だったんだ…こんにちは!」
可愛らしい無邪気な子だ。そしてその顔は…私の小さい頃にそっくりだった。私と並んだら少し歳の離れた兄弟にしか見えないだろう。私が髪を切ってしまっている為、似ているのがよりはっきり分かる。
そうか…腑に落ちた。長男夫婦は息子と良く似ている私の顔に驚き、親戚と確信したのだろう。切った髪を売る機会を無くしてしまい、切り損だったかなと後悔していたがこれは怪我の功名だ。
「こんにちは。私はクレアと言います。このお家にお世話になるので仲良くして下さいね」
と話しかけると男の子は遊び相手が出来たと喜び
「髪短いけど、お姉さんなの?お兄さんなの?僕のお家にどのくらいいるの?」
と矢継ぎ早に質問をしたが、とりあえず一旦長男夫婦によって子供部屋に戻された。
その後大人たち皆で話し合った。
「…その手を見ればあなたが嘘はついていないのが分かる。1日や2日水仕事をしたくらいではここまで荒れないものね。日常的にこき使われていたのね…大変だったでしょう、こんなに痩せ細って…とりあえず、外向きにはあなたは『遠縁の娘さん』として紹介しましょう。はっきり身元を言ってしまうと、あのお家に知られ連れ戻されてしまうかも…あなたを絶対守るから、まず身体を休める事だけ考えて暮らしてね」
という伯母様の言葉で締めくくられた。
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