いつも巻き込まれて困ってます!〜ショウとミイちゃんの日常

閑人

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 合流後、足早にタワーマンションから離れる俺たち。5分くらい歩いた所の寂れた公園で顔を洗い、あの液体を落とした。やっと一安心…だが…一体ショウは何をやったんだ?
 俺は悩んだ。なるべく早くさっき聞き出したい…気が早るが、内容が内容なので人目がなくて2人きりになれる場所でないと…などと考えていると、ショウが急に

 「ミイちゃん~あれ乗ろう~」

 緊張感のない声で言うのにつられて指差した方をみると、遠くに観覧車があった。知ってるぞあれ。この間『世界一大きな観覧車』って評判になってたよ。確かにここから見えるけど…

 「結構遠いぞ、あと男2人で乗るものなのかあれ?」

 カップルや家族連れに人気とか何とか言ってたぞ。そんな俺の戸惑いなど気にせず、ショウはタクシーを手慣れた様子で止め

 「あの観覧車までお願いしま~す」

 …俺の意見は聞いてもらえないのか?
 
 「平日の昼間だからそんなに混んでないよ大丈夫~」

 何がどう大丈夫なのか全くわからない。その隙にもタクシーはどんどん進む。30分くらい後俺たちは観覧車の前に着いた。

 ショウの言うとおり確かに観覧車の前に行列はなく、ガラガラ。引きずられる様に俺は観覧車に乗った。

 「いい景色~見て見てさっきのマンションが見えるよ~あ、海も見える~」

 「さっきのマンション…」

 せっかくの景色も落ち着いて見ていられない。

 「僕が何をやったか聞きたい?」

 そうか、ここなら2人きり。人目を気にせず話ができる!ショウはそこまで考えて…

 「うわ~高~い~一度乗りたかったんだ~」

 本当に考えてるのか?怪しくなってきたけどまあいい。早く喋れ!


 
 「どこから言えばいいのかな~。あぁ、あのマンションね、あそこにはコウ兄さんの会社にサイバー攻撃した奴がいるんだ。…僕を誰だと思ってるの~?そんな事会社のパソコンから辿っていけば、ねぇ。それでも結構手間がかかっちゃって大変だったんだよ~外国のサーバーをいくつも経由しててさ~。

 で、ちょっと仕返ししようかな~と。多少痛い目見ないと懲りずにまたやるでしょ?こっちの防御はガチガチに固めといたけどそれでもやる奴はやるからねぇ~。

 あの液体を使った変装をして、髪型も帽子で隠す。その上軍手で指紋もつかない様にして、エントランスでその部屋のインターフォンを鳴らす。勿論在宅なのは調査済み~。

 『…はい、どなた?』

無愛想極まりない声が聞こえてきたよ。犯人(仮)だ。

 『宅配便です。〇〇会社から書類のお届けにあがりました』って僕は言った。

 会社名はコウ兄さんのもの。インターフォンの向こうはその会社名を聞いて急に慌てた様な感じになって~

 『えっ…?知らん!俺は知らんぞ!人違いだ!とっとと帰れー!!』

と怒鳴られた挙げ句切られてね。怪しすぎるぅ~って思ったんで、僕は耳のイヤホンを一回軽くタップ、

 〝今ノ発言 嘘ノ確率73%〟

 とイヤホンからお知らせが…」
 
 
 「ちょっと待って。そのイヤホンって何?」

 「これ?嘘発見器のプロトタイプだよ。本当はメガネとセットで、相手の表情とかも込みで嘘の確率を弾き出してくれるんだ~。でもメガネの調子がイマイチなんで家に置いてきた~

 で、これで犯人と断定したんでアリさんロボを…」

 「…アリさんロボ?」

 不思議がる俺にショウはイヤホンケースみたいな入れ物を開けて見せてくれた…中身はアリだ。どう見てもアリ…

 「これはアリ型のロボ。作るの時間かかった~。土日潰れちゃったよ~。でこれを100体マンションにこっそり置いてきたんだ~。このアリさんロボはこのリモコンで指示を送れて~そろそろ犯人の部屋についているはずだから、仕事をしてもらおうかな~と思ってる」

 土日に作ってたのはこのアリか…あとこのリモコンもか…スマホにしか見えないがおかしいのは画面上にアプリが一つしか無いことくらいだが…よし押してみよ。
 すると細かく分かれた画面が現れた…これって…

 「そうそう、この1つ1つがアリさんロボから送られてきている映像なんだ~。細かすぎてちょっと見づらいな…改良の余地がありそう」

楽しそうな所悪いんだが、肝心なところを聞かないと

 「そのアリの仕事って?」
  
 俺の心臓の鼓動が速まる。

 「たいした事じゃ無いよ~電化製品をちょっと壊すだけ。3日間犯人の部屋の電化製品を色々壊して~あとはたまに10体単位で集まって手とか顔とか足とかに乗ってもらうの~。相手が気がついたらさっと散って隠れる様にしてあるよ~。ね?たいした事ないでしょう~。ちょっと脅かすだけ、それも3日間だけ~」

 脅かすだけかぁ…家中の電化製品が次々壊れるの結構嫌だな。その上アリがあちらこちらから現れてすぐ消える…心理的にはダメージありそうだが、思ったよりは優しい仕返しだな。

 「でもお前あのマンションのエントランスの防犯カメラに映ってるし、他にも防犯カメラがあるだろう?それに相手の部屋のインターフォンにもお前の姿や声が録画されてるだろう?顔は多少変えたし指紋もないとは言え、お前がやったってバレたらどうするんだ?」

 チッチッチと腰に手を当てて指を振るショウ。腹立たしいからそれはやめろって前も言ったぞ。

 「僕に抜かりはないのだ~。まずエントランスの防犯カメラはこれで塞いだのだ~」

 と言ってカバンから取り出したのは…蜘蛛?

 「蜘蛛型ロボ~。アリを作り続けてたら何か別のものも作りたくなって…。僕が映るちょっと前からマンションを出るまでこの蜘蛛にカメラレンズの前にいてもらったんだ~。動きをリアルにしたから本物にしか見えないよ~」

 手のひらサイズの蜘蛛ロボ…所謂軍曹と言われるやつだな。本物にしか見えない。が、そっと触ると…生き物でない感触だった。

 「声は~じゃ~ん。これを使いました~」

 !あの時ショウが吸ってたのって口臭予防スプレーじゃなかったのか?

 「これを吸入すると10分くらい声が変わるんだ~。あとは~インターフォンの録画映像は~アリさんがインターフォンごと壊す予定~。あ、他の防犯カメラの事考えてなかったなぁ~。追加で壊しとくかな~」

 …その勢いだと、犯人の部屋の電化製品3日後には全滅なんじゃないかな。

 「…でももし、そいつが『その書類受け取る』って言ったらどうするつもりだったんだ?ていうかその封筒の中身って何だったの?白紙?」

 「そしたら『本人に手渡ししろと言われてます』って言って当人に渡すよ。で中身はね~。ミイちゃん封筒をしまった僕のカバンの中見てごらん」

 渡されたカバンには違和感があった。紙物が入っている感触がないのだ。それよりもう少し重みのある何か…開けてみると

 「あ!これは!」

 砂だ。ひょっとして…

 「あの封筒と中身の書類は砂でできてたんだ~。僕の砂を固める液体で作ったんだ~書類は藁半紙みたいな触り心地になっちゃったのが残念だったけど…一応文字も書けたんで〝お前が犯人〟って書いておいたんだ~でも出番なかったな~」

 犯人が受け取った封筒から書類を出すと〝お前が犯人〟って書いてあって、驚いているとそれがサラサラ崩れて砂になるーーか。なかなかのホラーっぷり。

 色々言いたいことはあるが、犯人への仕返しの為にショウがかなり入念に…やれる事は全部やっているんじゃないかなと思うくらいまで念入りに準備していた事がわかった。安心はできないが、もしこれでショウが怪しまれたとしても証拠不十分になる可能性が高い。さすがとしか言いようがない。

 しかし今回、ショウがやろうと思えば入念な準備ができるやつだという事もわかった。いつもいつも適当な準備と行き当たりばったりな行動で俺は振り回されているけど…

 やればできる!できるじゃん!
 
 決めた!今度からはそれを念頭においてショウに準備をさせよう。次からはもう巻き込まれないぞ!
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