いつも巻き込まれて困ってます!〜ショウとミイちゃんの日常

閑人

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 「飽きた~飽きたよ~ミイちゃ~ん。かまってよ~」

 …またか…いい大人が床に転がってただこねている姿はみっともないとそろそろわかってもらいたいが…まだ謹慎中の俺たちは今日も家にいた。床の上のショウを除けばとても平和である。

 すると玄関のチャイムが鳴り、ヤマモトさんが応対している声が…そしてじわじわと足音がこちらに近づいて、部屋のドアをパーンと開けた。

 「ショウさん!謹慎解除です!一緒に私と来てください!」

 マツナガさんだ。何やらいつもと様子が違うような?慌ててる?焦ってる?なんだろう。そんな彼を見てショウは起き上がり

 「謹慎解除は嬉しいけど~絶対何かあったでしょ?一緒に行くのは断りま~…」

 と言いかけた瞬間、ショウの背後に影が!
…ヤマモトさんだ。無表情でどんどんショウの背中を押して玄関へと追い詰めて行く。

 「ちょっ…何?えっ?えっ?」

 遂にショウは玄関を開けて待ち構えたマツナガさんへパスされ、そのまま靴も履かせてもらえずにどんどん外へ。最後はドアを大きく開けて待っていた車へ押し込まれて、バタン…ドアが閉められた。

 すごい連携プレーだ!多分ヤマモトさんと打ち合わせてあったんだろうな…完全にショウの行動を読んでいるのがちょっと笑える。

 間髪入れずにヤマモトさんが何やら荷物をマツナガさんに渡して、それを受け取った彼は急いで車に乗り込んだ。即座に出発する車。お見送りする俺たち。

 「行ってらっしゃーい!気をつけてねー!」



 ーーー

 何だか知らないけど強引に車に乗せられた。あれ?いつもマツナガさんが運転するのに今日は会社の運転手さんだ。珍しい…運転はマツナガさんの趣味でもあるからうちに来る時は大体彼が運転するのに。
 
 あぁマツナガさん今運転に不向きな心理状態とコウ兄さんが判断したのかな?あの人安全運転には気をつけすぎるくらい気をつけてるから。やっぱり交通事故で両親を亡くしているとどうしてもそうなるよね。

 そして窓から見える景色から察するにコウ兄さんの会社に向かっている事は多分間違いない。何が起きたんだ?靴すら履かせてもらえないなんて普通じゃないな。
 
 …隣のマツナガさんとの間に荷物が置かれているのに気づいた。ん?これヤマモトさんがさっき渡していた荷物だ。

  「これ開けていいかな~?」

 返事がない…本当に上の空だな今日のマツナガさん。ネクタイはよれてるし目の下のクマも酷い。
 
 まぁいいか、開けてしまおう。

中身は僕の服上下一式(オフィスカジュアルって感じの)、下着類数枚、お泊まりセット(歯磨き、タオル等)そして靴…数日お泊まりな感じの荷物だな、嫌な予感しかしない…とりあえず靴は取り出して今履いておこう。あーあ靴下が汚れちゃったよお気に入りのなのに。

 靴を履き終わったあたりで、会社に着いた。今度は運転手さんと2人がかりで社内に押し込まれる僕。

 「ここまできて逃げたりしないよう~」

…泣きついたが全く手を緩めてはもらえない。そんな信用ないか僕?

 社内はいつも通り忙しく働く社員たちが…おや?何か違和感が…あぁ、なるほどね。それで僕が呼ばれたってわけね。

 「コウさん!ショウさん連れてきたよ!」

…マツナガさん、敬語も社長室に入るのにドアのノックも忘れてるよ。確かにこんな状態じゃ車の運転なんか危なくて任せられないや。コウ兄さんは正しい。

社長室にはマツナガさんと同じくらいクマの酷いコウ兄さんがいた。大変な状況なのは間違いない。

 「おう!ショウ来たな!実は今…」

 「何?会社のシステム乗っ取られた?それとも社内機密データを盗まれたかな?」

 僕がこう言った途端コウ兄さんとマツナガさんの顔は強張った。…ひょっとして疑われてる?

 「お前まさか…謹慎の腹いせに?」

 うわ~まずい!

 「違う違う。仕事中なのに社内のパソコンが動いてな
かったんでそうかなと…。あと社員じゃない人が何人かウロウロしてたし、あれは私服警察官かな?とどめは、知り合いの研究員がここ本社ビルにいるのが見えたから…彼はコンピュータ系が得意分野だったはず。ね?それでそうかな~って。やだな~僕がやるわけないじゃないか~」

 2人の顔つきが戻った。信じてもらえたらしい。

 「…お前の読み通り会社の業務システムが何者かに乗っ取られている。昨日の終業時間きっかりにメールが入って…これだ」

 コウ兄さんはパソコンの画面をこちらに向けた。

 『会社のシステムはいただいた。返して欲しくば、今週金曜17時(日本時間)までにこの口座に1億ドル振り込むように』

 そして最後に口座番号が書かれているだけのシンプルなメールだった。

 「なんか面白味のないメールだねぇ~。僕ならもうちょい楽しめる…ってごめん」

 クマの酷い四つの目に睨みつけられ、続く言葉を引っ込めた。

 「冗談はほどほどにしとけ。今警察も来てるし、うちのシステム担当も頑張ってくれてはいるが…まぁ復旧は無理だろう。『円』なら払ってしまおうかと一瞬思ったけど『ドル』なんだよ。うちの会社の規模では一括で払うのは無理だな…という事は」

 「手の込んだ嫌がらせの可能性が高いね~この会社を潰して僕を手に入れたいのかな?やめといた方がいいのに~」

 「だろうな…やめといた方がいいと私も思うよ」

 それを聞いたマツナガさんもうんうんと頷いてる。あれ?僕ってそういう存在?

 「…まぁいいや~。今日は木曜日…朝9時半くらいか~。期限まであと2日切ってるのか~。僕を呼んだって事は全部任せてくれるって事でいいのかな?」

 「…会社を潰したら従業員が路頭に迷う…お前に任せる。好きにやれ。システム部のパソコンを自由に使っていい」

 「コウ兄さんもマツナガさんも何か不本意~って表情なんだけど…でもやっていいんだね?できれば社員も警察も近づけて欲しくないんだけどできそう?」

 「警察はそろそろ帰るはずだが…まぁ善処しよう。他にやって欲しい事はあるか?」

 「他にはないかな~じゃあ行ってきま~す」

 僕は足取り軽くシステム部に向かった。いい頭の運動になりそう。楽しみで仕方ない。
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