いつも巻き込まれて困ってます!〜ショウとミイちゃんの日常

閑人

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6 洞 ②

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 次の日の朝ショウが何とか仕上げた書類を大事そうに持ったマツナガさんは満足げだった。

 「それでは私はこの書類を持って会社に帰ります。ショウさんとケイタロウさんは明日マイクロバスでここから家まで送ってくれるそうなので、そちらでお帰り下さい。では」

 本当に仕事だけしに来たんだなマツナガさん、お疲れ様でした。

 「あぁ疲れた~。本当にコウ兄さんもマツナガさんも仕事の鬼だよね~。行きたいところあるのに~」

 「サボらなければいいんじゃないかな?忙しい訳じゃないでしょ。というか忙しくしているところなんてみた事ないぞ」

 と俺が言うと、偉そうに腰に手をあてて、チッチッチッと指をふった。古臭いジェスチャーだが癪に触るのは間違いない。

 「この僕を舐めてもらっては困るなあ~。どれだけ役に立つ物を作り、どれだけあの会社に利益をもたらしてるか!」

 「利益?あるの?」

 「…詳しくは知らないけど沢山!あるはず?」

 やっぱり知らないのか。マツナガさんの表情から察するに全く利益無しというか訳ではなさそうだが、その分やらかしてる事も多いからその尻拭いの労力を考えるといいとこトントン…いやマイナスの方が大きいかも。今度コウ兄さんに聞いてみよ。

 「でショウお前はどこへ行きたいんだ?危なくない所なら付き合ってやってもいい」

 モジモジすんな気持ち悪い。はっきり言え

 「ここ!」


 と連れてこられたのは

   ふぁみりぃどうぶつこうえん

…可愛らしい書体で書かれた看板に目を疑った。ここは
お子様も楽しめるほんわか動物園。勿論猛獣系の動物はおらず色々な動物とふれあえるのがここの売りらしい。周りにいる家族の子供たちが

 「パパー!こっちこっち!キリンさんにご飯あげるの!」

 「ママ。モルモットさんと写真撮りたーい」

などと大はしゃぎだ。確かにほのぼのとして良い場所なのだが、男2人で行く場所がここ?あいつのチョイスおかしくないか?…でもこの間の砂漠より幾分かましか…

 そんなちょっと前向きな気持ちも最初の動物の檻の前で消えた。俺が檻に近づくと中にいた鳥たち(多分孔雀)が

  ピギャー!ギャー!
 
などと叫び怯えて檻の中を逃げ惑い、最後には隅に集まって隠れてしまったのだ。そばにいた家族連れも

 「鳥さん隅っこで隠れちゃったよ?どうしたのかな?」

 「そうだね?何でだろう…機嫌が悪いのかも知れないから先に他の動物見に行こう」

 ごめん。それ多分俺のせい。動物たちにしてみたら

『人間の姿なのに人間じゃない生き物が来た!怖い!』

なんだろう。怖がらせちゃって申し訳ない、ってあいつこれが見たくてここを選んだとか?

 「おいショウ!まさかお前…」

 「ミイちゃん本物のいろんな動物見た事ないって言ってたから連れて来たかったんだ~」

さっきの子どもたちと同じ邪気のない笑顔がそこにはあった。疑ってごめん。

 その後も地獄だった。キリンに餌をあげようとしても、怖がって手の届く範囲には1頭も近づいてこないし、逆にネコ科の動物は異常なくらい俺をガン見&接近してくる。何ならちょっと話しかけてくるヤツもいるが、何か(言語体系?)が違うらしく良くはわからなかったがこれだけは聞き取れた。

 「お前新入りか?」
 …違います

 モルモットとのふれあい広場に至っては、ショウに押し切られて入ったはいいけど、あっという間にモルモットが1匹もいなくなった。正確には俺から1番離れた隅っこに皆固まって怯えてブルブル震えてる。本当にごめんなさい。君たちにストレスを与えるつもりなんてこれっぽっちもないんだ。飼育員さんがふれあい広場始まって以来の珍事にオロオロしているのがいたたまれない。

 「お客様申し訳ございません。こんな事はじめてでモルモットたちに何かあったのかもしれません…。そこで一応確認なんですがひょっとしてお客様猛獣なんて飼っていたりとか…そんな訳ないですよねー失礼しました」
 
  飼っていません。本人です。

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