いつも巻き込まれて困ってます!〜ショウとミイちゃんの日常

閑人

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3 砂 後日①

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 いつ見ても威圧感アリアリだな。

 おしゃれな都会にありながら、『今時こんなビルある?』というようなゴリゴリにゴツくて古いビルが目の前にある。

 『数日前会社のヘリコプターを無断で使用した件について説明にこい』というお達しを受け、この威圧感満載ビルにやってきた俺らだが、俺って関係ある?勝手に使ったのってショウだよな?

 俺帰るわー、ここまでは付き合ってやったんだからあとは1人で頑張れ!じゃあ!

 「待って~。コウ兄さんミイちゃんに弱いから一緒についてきてよ~」

 と強い力で引っ張られて、俺もビルの中に入ることになってしまった。

 ーーーコウ兄さんはこのビルを所有している会社の社長をしていて、ショウが好奇心に任せて作ったシロモノの特許やら費用やらを会社の一部門として一括管理しているデキル男なのだ。(そして尻拭いもする)ちなみにコウ兄さんの本名は『コウタロウ』、ショウは『ショウタロウ』。古くから続く彼らの家系は『本家の男子は〇〇タロウか〇〇エモンにすべし』と決まっており、人間として戸籍に入る時俺もその家系の末席に連なった為、名前が『ミイ』→『ケイタロウ』になった。
 
  〇〇エモンもいいなあーと俺が言ったら

 「「絶対ダメ!!」」と言われてしまった。何故だ?
 
   ーーー

 「で、町に喰われそうになったと…ミイちゃんダメだよーついていっちゃぁ。何かあったら大変だよー。ショウお前は何でもうちょっと物を考えないんだ!ミイちゃんを巻き添えにするんじゃない!」

 コウ兄さんの尋問(主にショウへの)はそろそろ終盤に突入している。しかしこんな荒唐無稽な話良く最後まで聞いてくれたなぁ。超現実主義なのに、意外にも真剣な表情だ。ちなみに俺に向ける顔は素晴らしく優しい。

 「そうなんだ。それでヘリコプターを使って命からがら逃げてきたと言うわけなんだ。勝手に使ったのは反省してます。本当にすみませんでした。でもよかった~コウ兄さんに信じてもらえて~。信じてもらえなかったらどうしようと思ってた~」

 「嘘はついて無いみたいだからな」

 えっ?どうしてわかるの?兄弟で通じる何か?

 コウ兄さんはニヤリと笑い、こちらを見た。悪い顔だけどいい顔だ。

 「嘘をつく時の癖があるんだショウには。それが出てないから本当と判断した。ある意味話の内容はどうでもいい」

 俺も知りたいその癖!教えて!

 「うーん教えてあげたいところだけど秘密にしておきたいのでダメだ。あっ、ヤマモトさんなら知ってるかも知れないぞ。あの人はショウが小さい時から家の中の事をやってくれているから」

 家政婦のヤマモトさんかー確かに知っていそう。でも教えてくれなさそう…

 「兄弟だから信じてくれたと思ったのに~」

 そんなにがっかりすんな。その癖のお陰で疑われずに済んだんだから良しとしようよ。

 「あとお前たちが救出された辺りを調べたけど何も出なかったぞ」

 「ええっ!地下も調べた?」

 「当たり前だ。地下から救出されたんだから。人手もセンサーも使って詳細に調べたさ。その結果何も無しだ」

 俺とショウは顔を見合わせた。そんなバカな!俺たちは白昼夢でもみたのか?俺たちのアホ面を眺めつつ、コウ兄さんは結論づけた。

 「その町?の正体は何だか分からないが、お前たちに天井に穴開けられた挙げ句逃げられているのだから、それを直す間は見つからない場所に隠れるだろうよ。なので一旦捜索は中止して、ショウが持ち帰ったサンプルの分析を待とう。分析出来たらすぐ私のところに持って来る事。いいな、余計な事はしないですぐだぞ」

 「…は~い」不承不承頷きかけて

 「あれ?サンプル持ち帰ったのってミイちゃんしか知らないはずなのに?まさかミイちゃん?」

 そんな面倒な事しないよ。

 「…サンプルの置いてある部屋の掃除をしているのは誰だ?」

 ヤマモトさんか…盲点だね。
 
 頭を抱えてるショウにコウ兄さんが追い討ちをかけた。

 「そうそう、ミイちゃんの言葉を皆に聞こえる様にできる変換装置が出来上がってるらしいな。見せてみろ、どうせ待ち歩いてるだろう?」

 聞いてない!!それもヤマモトさん情報か?

 俺が睨みつけると『マズイ』という表情でショウはこそこそと鞄を探り、コウ兄さんにそっと装置を渡した。
柔らかそうな素材で出来ており、首に巻いて使うようだ。一通り説明を受けた後、コウ兄さんが首に優しく巻いてくれた。

 「人語に聞こえる?」

 おそるおそる聞いてみた。

 「ちゃんと聞こえるよ」

 「やったー!これで1人で行動できるぅ!」

 大喜びで走り回る俺とそれを嬉しそうに見つめるコウ兄さん。そして『ミイちゃんを独り占め出来なくなった』と嘆いているショウ。三者三様の姿が社長室にあった。
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