いつも巻き込まれて困ってます!〜ショウとミイちゃんの日常

閑人

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2 砂 ②

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 砂漠の地下のはずなのに町があるのだ。住民の姿は見あたらない。天井はドーム型で照明もないのに薄ら明るく、建物は砂を原料としているらしく全て薄茶色。民家のような家屋もあれば教会っぽい塔もある。(ショウが引っかかったヤツだ)
 キョロキョロ見回している俺に向かって、ショウは何かを突き出した。

 「ここは『砂漠の町』だよ~ほらここに載ってるでしょ?」

 突き出した物は本だった。それも都市伝説とか由来不明な記事ばかり載っていて、読者はその荒唐無稽っぷりを楽しむ類の本だ。その中に『砂に埋もれた町!とうとう記者はその場所を見つけた!』とあった。こんなのを信じてここまで来たのか…すっごい頭痛い。
 
 「この記事にはキチンと場所が書いてなくて~探すの苦労したよ~。ちょっと人工衛星にお願いして、あちこちの砂漠の場所を調べてもらったり~地下を探るセンサーを照射してもらったり~大変だったんだから~」

 鼻の穴広げて威張ってるけど、それって合法?許可とか必要だよな?…やぶ蛇になりかねないので聞くのはやめて、町の様子を見て回ることにした。
 
 どのくらいの時代の物かは全くわからないが、道はまっすぐで車1台は軽々通れるほど広い。そして道沿いの民家はほぼ同じ形で整然と並んでいる。キチンと計画されて作られた感じがする綺麗な町だ。でも俺ならあちこちに裏路地作るけどね。これ設計した人には遊び心が足りないな。

 見ちゃいけないもの(人骨とか)がありそうで怖かったが、興味に負けて民家の中も覗いて見た。がそう言ったものは無くどの家も砂埃を被った家具や日用品が散乱しているばかりだった。

 「急に何かの事情で逃げ出したって感じじゃないね~人骨とか無いし。しかしあのドーム型の天井ってどうやって作ってるんだろう、砂だよね~アレ。素材に秘密でもあるのかな?ミイちゃん後でサンプル取って来て」

 今さらっと面倒な事頼まなかったか?やらないよ。

 「あと出入り口ってどこなんだろう~。僕たちは天井に穴開けて入ったけど、町中にそれらしき門とかが無いんだよね~不思議。隠し門みたいなのがどっかにあるのかな~」

 などどブツクサ言いながら手はひょいひょいサンプルを集めてる。念推しするけど俺は手伝わないからな、他の所見てこよう。


 へーこの家は食器や椅子が4個づつあるから4人家族が住んでいたのかなぁ。あっこの家には砂のロッキングチェアーまである!ウチにも欲しい!

 「ここで問題~!」

 うわっ急に大声出すなよ。びっくりした。で何?
 
「僕は今大変な事に気がついてしまいました!それは何でしょう~」

 えっとお前の行動がおかしすぎる事とか?後先考えなさすぎる事とか?あとは…色々ありすぎてどれだか分からないや。

 「違う違う。そんな些細な事じゃなくて、この町の事だよ~。人が住むのにコレ無いと困るって物がないんだよ~さぁ何?」

 些細…そのせいで俺振り回されて迷惑被ってるんだけどな…あぁ口の中ジャリジャリして気持ち悪い。ん?

 わかった!水だ!どこにも水を貯めておく場所ー池みたいなのがこの町には無い!

 「半分正解~溜池がないのは砂漠だから仕方ないにしても、家の中を見てもらうとわかるけど水を貯めておける水瓶すら無いんだ。トイレも台所もあるのに変だよね~」

 えぇーホントだ。人が住んでいる感アリアリな家なのに実際は住めないって事か。じゃあ何の為にこんな町が…背中の毛が逆立つ。ここはヤバイ場所なんじゃないか?

 「でね。何でこの町を作ったかの仮説をたてたの~

 ①新技術のお披露目。あのドーム型天井とか砂で出来てるんだよね多分。とするととんでもない新技術だったはずで~皆に口で説明するより作って見せた方が早いって思ったんだろうねぇ。で作ったけど何らかの障害(金銭なのか政治的な物なのか不明)が起きて放置」

 あー昔にもお前みたいな頭の持ち主がいたのかー。

   ズ

 「②箱庭。偉い人が『庶民の擬似生活体験がしたい』とか言い出して警備とかを考えて地下に作った物。日本にも昔の大名が屋敷の庭園に擬似体験用の建物とかを作ってたらしいし、可能性は①より低いけどありそう。でも何らかの理由で放置(飽きたとかもありそう)」

 お前みたいなワガママな奴がいると周りの人間は大変だよな。わかるわかる。

   ズズッ

 「さっきから僕の悪口になってない?まあいいや、
 ③これ僕のイチオシの仮説。宇宙人が地球に住めるかを試す為に作った!あのドーム型天井とか砂のロッキングチェアーとかどう作ったのか分からないくらい凄い技術なんだよね~。だ、か、ら、地球人じゃなくて宇宙人が作ったと考えほうがいいんじゃないかな~と。水瓶とかないのは彼らが余り水を必要としない身体だったから!どうだ!」

   ズズゥ ズズ

 「あと~④…」

 あのショウさん

 「なあに?ミイちゃんも何か意見あるの?」

 いや、町が縮んでます。

 「え?何て?」

 町が縮んでるんだよ!じわじわ確実に!

   ズズズ ズズズゥ

 あいつはやっと周りを見渡した。そして歪みながらジワリこちらに近づいてくる建物群に気がつき、顔を強張らせて言った。

 「ほんとだ。どうしよう開けちゃった天井の穴から空気抜けて縮んでるのかな…とりあえず早急に地上に戻ろう!」

 青ざめているあいつに向かって俺は追い討ちをかけた。

 いや、縮んでるんじゃない!こちらを捕まえようとしているんだ!俺の本能がそう言ってる!
 
   ズズズズズ ズズズ ズズゥ

 俺とショウは走り出した。何処へ逃げたらいいのかはわからないが、ここにじっとしててはいけないのは明白だ。くそっ2本足は走りにくいと心の中で毒づいていると、隣のやつはもうヘロヘロだ。普段運動しないからだよ、地上に帰れたら健康的な生活しようぜ。

 「ミイ!穴だ!最初に開けた穴の下までダッシュだ!」

 足がもつれて転がるように穴の真下まだやってきた。
町はだいぶ縮んで、端っこが俺たちまであと数m。囲い込んで捕まえる?気満々だ。穴の位置もだいぶ降りてはきているが手は届かない。どうしようか…

 「そろそろなんだけどなぁ…」

 ドオーンと激しい音がして、頭上から砂が降り注いだ。そして驚いている俺らの前に縄梯子が降りてきた。
その縄梯子を当たり前のように掴んで手を差し出すショウ。

 「ミイちゃん!つかまって!」

 その手を掴むと凄い勢いで上に引っ張られて、上へ上へ。あっという間に砂漠の上へ、そして空中へ。

 「助かった~。ミイちゃん大丈夫?」

 縄梯子の先はヘリコプターに繋がっていた。おそるおそる下を覗くと、脱出してきた穴は塞がっており、静かな砂漠が広がっているばかりだった。

 アレって何だったんだろう?

 「あの町は『疑似餌』かな~」

 疑似餌?釣られたのは俺らか?

 「あぁやって捕獲してるのかねぇ~」
 
 …もういいや。早く家に帰って寝たい。そういやこのヘリコプターはどうしたの?いいタイミングで助けてくれたけど?

 「あ、これ?コウ兄さんの会社のだよ~。固める君3号が壊れたら緊急信号が出て、それを受信したら救出してもらう手筈になってたんだ~。危機管理って大事だね~」

 危ない事しなきゃいいだけだろ?

 「えぇ~いいじゃん。素直に褒めてよ~」

 素直に褒めろねぇーちょっと無理かな。そうそう1つ聞きたいんだけど

 「なあに、何でも聞いて~」

 このヘリコプター借りるのコウ兄さんの許可取った?

 「……ミイちゃん、一緒に謝って」
 
 静かな砂漠の上には美しい月夜が広がっている。
 
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