いつも巻き込まれて困ってます!〜ショウとミイちゃんの日常

閑人

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1 砂 ①

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 前を歩くショウから能天気な鼻歌が聞こえてくる。何故こんなにも気楽なのか全く分からないし、分かりたくも無い。そしてこうやって面倒ごとに巻き込まれている自分が腹立たしい。

 
 目的地はどこなんだ?

 「さあ~多分そろそろだと思う…痛っ!叩くなよ。GPSにも『すぐそこだと思いま~す』ってでてるから~大丈夫」

 『すぐそこだと思いま~す』なんてGPSにでるか!

 「ホントホント~ほら」

 と言って手に持っていたディスプレイを見せてくれた。そこにはこの辺りの地図が載っていて、一点にピンが刺さっており

 『すぐそこだと思いま~す』とあった。
 
(絶対自分でプログラム作ってそう表示されるようにしたなこいつ)

 とりあえずこのGPSを信じるなら、あと数分も歩けば目的地に着くようだ。ただ辺りを見回しても何もない。

  ここは砂漠
  何も無い(砂以外)
 
 朝っぱらから叩き起こされて連れてこられたのがここ。あいつ頭良すぎておかしくなったのか。でも自分1人で帰るのは難しいのでぐだぐだ後をついていく。

 数分後
 
 「着いた~。いや~思ったより遠かった~、よしここでコレの出番っと」

 何もない所でショウは立ち止まり、背負っていたリュックから何かを取り出した。両手で持てるくらいの小さなブルドーザーに見えるが…何だアレ?
 俺の疑問はそっちのけで、そのブルドーザーを動かして始めた。
 
 ブルドーザーは砂を掘り始め…えっ?どういう事?
目を疑った。ブルドーザーの掘った跡はドンドン固まっていき、あっと言う間にすり鉢状の穴が出来た。そしてそれは深くなって、とうとう俺の位置からは車体が見えなくなった。
 嬉しそうにその穴を覗き混んでるショウにそろそろこの状況の説明をしてもらおうと近づいたその時

 「きゃっほぅぇ~!」
 
 変な声をあげて穴にショウが飛び込んだ!

 待て!

 次の瞬間俺も飛び込んでいた。

 暗い穴の中を落ちていると思ったのは束の間で、すぐに明るい場所に放り出された。それは砂漠の地下には無いはずの空中!慌てて地面に叩きつけられる前にくるんと回って着地した。ちょっと足が痺れたが痛めたりはしなかったようだ。持ち前の運動能力に感謝。
 でショウはどこ行った?すると情け無い声が頭上から聞こえた。

 「ミイちゃん~助けて~」

 その名前で呼ぶな、今はケイタロウだと言ってるだろう!


ーーー数年前俺の親父が亡くなった。享年20歳。寄る年並みには勝てなかったようで静かな最期だった。俺や他の家族は親父の思い出を心にこれから過ごしていくーはずだった。ショウの暴走が無ければ。
 俺と親父の飼い主だったショウは諦められなかった。あいつは天才だった。自分の持てる脳みそをフルに使い、俺の寿命を人間と同じくらいに伸ばそうとした…結果
 
 猫だった俺は人間になった。

 遺伝子組み替えがどうたらと言ってはいるが、良くは知らない。猫の身体能力を少し残しつつ、重くなった身体と人として生きていくのに必要な知識を手に入れて今ここにいる。
…ただ声帯だけは上手くいかなかったようで「にゃあ」としか出ないのが難点だ。首につけてる装置(アクセサリーにしか見えない)のおかげでショウのイヤフォンには人の声に翻訳されて聞こえてるのだが、いちいちショウを通さないと会話が出来ないので早く何とかしろと言っているが『ミイちゃん独り占め』とか訳分からん事を言って先延ばしにされている。
 
 「早く助けて~」

 声の方を見上げると、ブルドーザーが掘った穴の真下あたりにある塔の先端にショウは引っかかっていた。

 刺さらなくてよかったな。あと久しぶりに困った声聞けてちょい嬉しいのは内緒。
 
 そこから(主に俺が)四苦八苦しながらショウを下に降ろした時には2人ともへとへとだった。

 「あぁ~『固める君3号』壊れちゃった~。結構作るの大変だったのに~」

 そのミニブルドーザーの事か、ネーミングセンス0の名前だな。

 でその『固める君3号』の残骸を抱えているお前に聞きたい。

 一体全体ここはどこなんだ?
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