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37.繰り返し
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昨日は良く寝られなかった…怪談話を生で見てみたいと思ったばっかりに大変な事に巻き込まれてしまった。ま、ぜーんぶ俺のせいなんだけどね。隣の席のルドルフも良く寝られなかったのか今朝はヨレヨレな感じだ。
「昨日のは夢じゃないよね?」
「夢だとよかったのにね」
溜め息混じりにお互いそう言い合った。
「おはよう皆さん…」
教室に現れたオットー先生もちょっと今日は元気がない。何か言いたげに俺たちをちらっと見たが諦めた様に授業を開始した。そんな先生の様子を見てやはり昨日の夜の事は現実だと認識した。あの後学園長はこう言ったのだ。
「で、ですね、オットー先生には副学園長不在時の私関係の仕事をお願いできませんか?手が足りなくて困っていたんで引き受けて下さると助かります。…え?OKですか!ありがとう。明日にでも副学園長とじっくり打ち合わせをして下さい。ルドルフ君、リュ君は月1回くらい私の蔵書整理を手伝ってもらえないかな?…本が多すぎて困っているんだ…」
あー確かに。ぐるりと学園長室を見渡すと上から下まですでに本で埋め尽くされているし、よく聞くと下の階にある自室も本が山積みになっているとの事。地震でもあったら埋まるんじゃないかな?
「読みたい本があれば何冊でも貸し出しOKだよ」
ルドルフの目が光った。本と聞くとこうなんだよな。でも俺は蔵書整理なんてしたくない。何とか断る又は別の作業にしてもらえる様にどうもっていこうかと思い悩んでいると、学園長はその様子を見て
「思ってる以上に力のいる作業なんでリュ君にもお願いしたいんですがね…」
どんどん断りにくくなってる気がするぞ。
「…あと作業後、毎回お茶とお菓子をつけますよ。どうですか?」
その話のった!学園にいるとお菓子をあまり食べられないんだよね。…なんだか俺たちの好みを知り尽くしてるような申し出の様な…。どっちにしても断れない相手なんだから楽しくやった方がいいよね。
今日の魔法実習中、マンツーマンなのをいい事にノラ先生に俺はこっそりと昨夜の事をかいつまんで話し、そして気になった事を聞いてみた。
「ノラ先生は彼といつから知り合いなんですか?」
「は~い!動きを止めない~。小さい頃からだよ~」
ノラ先生のひい爺ちゃんだかひいひい爺ちゃんだかが学園長の研究仲間だったらしく、それからずっと家族ぐるみの付き合いをしているのだそう。ノラ先生にとって彼は子どもの頃から知っている『親戚のお兄さん』(本当はお爺さん)感覚らしい。
「でも何であんなに人目を避けてるんだろ?決まりとは言ってたけど…学園内ですらあんなにこそこそしているなんて」
「は~い、小休止入りま~す。私の個人的な意見を言わせてもらうなら、多分長生きだからだよ~。あんなに長生きだと仲良くなった人が寿命でどんどんいなくなるでしょ~?結構辛いと思うんだよね~。だからあまり親しい人を作らないようにしているんじゃないかな~接触しなければ親しくならないでしょ~。学園長は『理由はわからない』って言ってたみたいだけど、本当はわかっていると思うよ~」
そうか。何代もの『先祖返り』の人たちが何度も繰り返した結果出した答えなのか。それはちょっと寂しい結果だな。
「それはそうと先生。この訓練は何ですか?」
「持久力をつける訓練だよ~。力をフルに出す!止めて!またフルに!これを何秒かごとに繰り返しているとフルに出せる時間が長くなるんだよ~。長年の研究成果で確かな結果がでているんだから頑張って~」
長年の?先生はそんな歳なのかな?いくつくらいなんだろう?
「あ~今私の年齢を探ろうとしたな~」
ばれたか。勘が良すぎないか?
「私の家は代々身体強化の魔法の研究をしているんだよ~。自分たちの家系に良く出る魔法なんで実験もしやすかったんだろうね~。だ、か、ら、『長年』なの!」
腰に手を当てて怒っているように見せてはいるけどおふざけ感が否めないのがノラ先生だ。確かに稀少な魔法らしいから自分自身で試せるのはいいかもね。でも『自分で試したらそうでした』なんて論文に書けないだろうからどうしているんだろうか?
「今の私みたいに勉強とか魔法とかを誰かに教える事でお金を稼いで、そのお金で発表もできない研究をする~って感じかな。本当に論文にもお金にも何にもならない研究だよ~私の父も研究結果をまとめて自費で本にしたけど笑っちゃうくらい全く売れなくって…自分に子どもがいたら絶対お勧めしない道だよ~」
そこまで言うか?でもその割には先生って研究熱心だよな。口では文句の嵐だけど、代々続いているこの身体強化の研究ってとっても大事なんだろうな…
「そんな私を可哀想に思うなら早く君のお父様を紹介してくれないかな~?何なら直に村にお邪魔してもいいんだけど…ご機嫌を損ねたくないし、悩むわ~」
俺も一応聞いたんだけど
『俺を面倒に巻き込むな』で終了だったんだよね。
おばばからも
『バレた分はしかないけどそれ以上は漏らすな』と言われちゃったし。先生には悪いけどもう少しのらくらと逃げようかなと思ってる。
「昨日のは夢じゃないよね?」
「夢だとよかったのにね」
溜め息混じりにお互いそう言い合った。
「おはよう皆さん…」
教室に現れたオットー先生もちょっと今日は元気がない。何か言いたげに俺たちをちらっと見たが諦めた様に授業を開始した。そんな先生の様子を見てやはり昨日の夜の事は現実だと認識した。あの後学園長はこう言ったのだ。
「で、ですね、オットー先生には副学園長不在時の私関係の仕事をお願いできませんか?手が足りなくて困っていたんで引き受けて下さると助かります。…え?OKですか!ありがとう。明日にでも副学園長とじっくり打ち合わせをして下さい。ルドルフ君、リュ君は月1回くらい私の蔵書整理を手伝ってもらえないかな?…本が多すぎて困っているんだ…」
あー確かに。ぐるりと学園長室を見渡すと上から下まですでに本で埋め尽くされているし、よく聞くと下の階にある自室も本が山積みになっているとの事。地震でもあったら埋まるんじゃないかな?
「読みたい本があれば何冊でも貸し出しOKだよ」
ルドルフの目が光った。本と聞くとこうなんだよな。でも俺は蔵書整理なんてしたくない。何とか断る又は別の作業にしてもらえる様にどうもっていこうかと思い悩んでいると、学園長はその様子を見て
「思ってる以上に力のいる作業なんでリュ君にもお願いしたいんですがね…」
どんどん断りにくくなってる気がするぞ。
「…あと作業後、毎回お茶とお菓子をつけますよ。どうですか?」
その話のった!学園にいるとお菓子をあまり食べられないんだよね。…なんだか俺たちの好みを知り尽くしてるような申し出の様な…。どっちにしても断れない相手なんだから楽しくやった方がいいよね。
今日の魔法実習中、マンツーマンなのをいい事にノラ先生に俺はこっそりと昨夜の事をかいつまんで話し、そして気になった事を聞いてみた。
「ノラ先生は彼といつから知り合いなんですか?」
「は~い!動きを止めない~。小さい頃からだよ~」
ノラ先生のひい爺ちゃんだかひいひい爺ちゃんだかが学園長の研究仲間だったらしく、それからずっと家族ぐるみの付き合いをしているのだそう。ノラ先生にとって彼は子どもの頃から知っている『親戚のお兄さん』(本当はお爺さん)感覚らしい。
「でも何であんなに人目を避けてるんだろ?決まりとは言ってたけど…学園内ですらあんなにこそこそしているなんて」
「は~い、小休止入りま~す。私の個人的な意見を言わせてもらうなら、多分長生きだからだよ~。あんなに長生きだと仲良くなった人が寿命でどんどんいなくなるでしょ~?結構辛いと思うんだよね~。だからあまり親しい人を作らないようにしているんじゃないかな~接触しなければ親しくならないでしょ~。学園長は『理由はわからない』って言ってたみたいだけど、本当はわかっていると思うよ~」
そうか。何代もの『先祖返り』の人たちが何度も繰り返した結果出した答えなのか。それはちょっと寂しい結果だな。
「それはそうと先生。この訓練は何ですか?」
「持久力をつける訓練だよ~。力をフルに出す!止めて!またフルに!これを何秒かごとに繰り返しているとフルに出せる時間が長くなるんだよ~。長年の研究成果で確かな結果がでているんだから頑張って~」
長年の?先生はそんな歳なのかな?いくつくらいなんだろう?
「あ~今私の年齢を探ろうとしたな~」
ばれたか。勘が良すぎないか?
「私の家は代々身体強化の魔法の研究をしているんだよ~。自分たちの家系に良く出る魔法なんで実験もしやすかったんだろうね~。だ、か、ら、『長年』なの!」
腰に手を当てて怒っているように見せてはいるけどおふざけ感が否めないのがノラ先生だ。確かに稀少な魔法らしいから自分自身で試せるのはいいかもね。でも『自分で試したらそうでした』なんて論文に書けないだろうからどうしているんだろうか?
「今の私みたいに勉強とか魔法とかを誰かに教える事でお金を稼いで、そのお金で発表もできない研究をする~って感じかな。本当に論文にもお金にも何にもならない研究だよ~私の父も研究結果をまとめて自費で本にしたけど笑っちゃうくらい全く売れなくって…自分に子どもがいたら絶対お勧めしない道だよ~」
そこまで言うか?でもその割には先生って研究熱心だよな。口では文句の嵐だけど、代々続いているこの身体強化の研究ってとっても大事なんだろうな…
「そんな私を可哀想に思うなら早く君のお父様を紹介してくれないかな~?何なら直に村にお邪魔してもいいんだけど…ご機嫌を損ねたくないし、悩むわ~」
俺も一応聞いたんだけど
『俺を面倒に巻き込むな』で終了だったんだよね。
おばばからも
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