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32.怪しさ満載

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 「一緒にいいかな?」

 食堂で昼ごはんを食べようと着席したら声をかけられた。『またノラ先生か?』と思って軽く「どうぞ」言って顔を上げたら違った。

 学生だった。銀色に近い髪色で目はグリーン、背はルドルフより低く、全体的に華奢な感じの学生だ。しかし学年を見分ける為の制服の袖のラインの色がわからない。色落ちしてしまったのかラインの色が白っぽくなっており、緑(5年)なのか黄色(4年)なのか、はたまた別の色なのか…ただ見た事ない奴なので自分たちの学年ではない事だけは確かだ。
 
 そこそこ席が空いてるのにわざわざ俺たちのテーブルに来るなんて…とちょっと警戒していると

 「ひょっとして警戒されてる?ボクは5年のラディ、よろしくね。」

 「ルドルフです。よろしくお願いします」

 「リュです」

 何だろう…悪い人ではなさそうなんだけど違和感がすごい。それはルドルフも感じとっているらしく仮面越しでも伝わってきた。

 「君たちは覚えていないだろうけど、入学たての頃ボクたちの教室で暴れたろう?インパクト抜群だったんで卒業までに一度話してみたかったんだ」

 『暴れた』そんな事あったか?ときょとんとしているとルドルフが小声で「ハインリヒ君の時だよ」と囁いた。…アレか忘れてた。確かに1番上の階の教室(最高学年の教室)にあいつを連れて行ったから見られていてもおかしくないな。そんな俺たちの様子を彼はニコニコと見ながら

 「リュ君って身体強化の魔法を使えるんだってね。ノラ先生に聞いたんだけど、魔力の量も多いから教えがいのある学生だって言ってたよ」

 ノラ先生が褒めてくれてた…普段の実習が厳しいのでちょっと嬉しいけど何か変だな。

 「ノラ先生とお話しするんですか?」

ルドルフが突っ込んだ。そうだよな、あの先生は身体強化の『専門家』。あくまでもその専門分野の事だけ教えている先生なので俺以外の学生とあまり接触がないはずなんだ。

 「うん。ボク昔の魔法とかエルフの事柄とかを専門にしようとしてるんで、ノラ先生とは良く話すよ」

 「「エルフ」」

 「…食いつきいいね。君も専門にしたいの?」

とルドルフに向かって言った。俺には言わないのか?

 「ええまあ…でも文献が少なくって」

 「ふーん」と何やら自分の鞄をあさりはじめた。

 「ちょっと待ってね。…これこれ」と

鞄から取り出したのは1冊の本。

 「これエルフの事を色々な視点でまとめてあるからいいと思う。貸してあげるから読んでみたら?」

 「えっお借りしてもいいんですか?この本図書館の蔵書目録には載ってるんですが、本自体が見当たらなくて困っていたんです」

 「あぁ、これ下げ渡しされた本なんだ。蔵書目録から消し忘れてるのかな?ボクの本だから安心して好きなだけ借りていいよ。ボクは写本してあるから困らないし」

 写本…何という苦行。そんな事する奴が世の中にいる事に驚きだ。

 「ではお借りします。返す時は教室に伺えばいいですか?それとも寮の部屋がいいですか?」

 「うーん。どうしようかな」

 どうしようかな?って何だ。どっちかだろう?

 「それノラ先生に返してくれないかな。ボク今学園外での作業が多いから捕まらないと思うんだよね」

 彼はそう言って食事を終え、去って行った。

 
 「怪しすぎるぅー!何だアレ。ルドルフ!その本図書館で本当に下げ渡しされた本か聞いてみた方がいいよ。俺ノラ先生にアイツ知ってるか聞いてみるよ」

 「そうだね。この本が読めるのは嬉しいけど盗んだ物でしたーなんてなったら困ってしまうよ」

 このあと2人で話し合ったがやはり怪しい。
 まず制服の袖のライン。制服は傷んだらいつでも交換可能なのであんなに色がわからなくなるまで着ている学生はいない。何なら先生に捕まって「きちんと綺麗な制服に交換してもらいなさい!」って叱られる。だとすると俺たちに本当の学年がわからないようにわざわざあの制服を着てきた可能性がある。

 「…君の制服もそろそろ交換してもらった方がいいのでは?オットー先生に注意されたろう?」

  ーちょっとよれてる方が着心地良いんだよ

 次にノラ先生との関係性。彼が俺たちに話したノラ先生との会話が『先生と学生の会話らしくない』んだよね。『先生同士の会話』なら違和感ないんだけど。色々型破りな感じのノラ先生だけどその辺はきちんと線引きできると思う。

 「そうだね。あの先生君の事『出来のいい学生』と言うより『良い研究対象』として見ていると思うよ」

  ー否定はしないが良い気持ちもしないな

 そして本。出所も怪しいが返却がノラ先生なのがとっても怪しい。普通「自分がいなかったらクラスの奴に返しといて」か「寮の部屋〇〇号室だから返しに来て」のどっちかだろう。よりにもよって『ノラ先生』。何故先生を指定した?クラスや寮に来られたらマズイという事か?

 「怪しさ満点だね。確かに5年生は学園外の活動が増えるけど…」

  ーえ?そうなの?何で?

 「就職活動とか進学準備とか…あ、お見合いとかも多いよ。優秀な学生をうちの娘にという感じだね」

  ーそんな事が…全く考えてなかった世界だな

 あと1番おかしかったのは、他の5年生の様子だ。食堂には他にも5年生がいたのだが、彼はその誰ともお互い目を合わせるわけでも、挨拶するわけでもなかった。謂わば『知らない人同士』に見えたのだ。1学年の人数は20人程度。5年間も一緒にやってきてそれは絶対ない。もし万が一挨拶もしたくないくらいいがみ合ってるとしても『うわっ!アイツいる』って感じの表情がどっちかには出るはずなのにどちらもスルー…怖いくらい怪しい。

 
 
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